とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼322号 「新潟県・苗場山登山道のネマガリダケ」

地震のことを昔の人は「ない」といっていたという。人々は、得体の知れ名
恐ろしい地震は得体の知れないほど大きなこの山からおこるのだと考え、
山の名を「なえ(い)場山」といったという。この山も信仰の山です。

6月、祓川コースわきの笹薮は、シノダケのタケノコ取りの地元の人でに
ぎやかです。竹やぶにもぐり込みます。あったあった。おかげで夕食には
タケノコ入りのスープのごちそうにあずかりました。
・新潟県中魚沼郡津南町(つなんまち)同県南魚沼郡湯沢町と
長野県下水内郡(しもみのちぐん)栄村との境

▼322号 「新潟県・苗場山登山道のネマガリダケ」

【本文】
地震のことを昔は「ない」と呼ぶ地方があったという(「大日本地
名辞書」)。突然の大地の揺れ。得体の知れないほど恐ろしい地震は、
得体の知れないほど大きなここにそびえる山からおこるのだと考え
ました。

そこで人々はこの山の名を「なえ(い)場山」といったというので
す。この苗場山(なえばさん)も古くから信仰の山でした。山頂に
伊米神社(いめじんじゃ)が祭られ修験道場として信仰を集め、毎
年夏には修験講の団体登山が行われたといいます。

かつて水垢離をとりお祓いをしたところが多く、祓川(はらいがわ)
や雷清水、神楽ヶ峰など修験の行場の名のついた地名がいまでも残
っています。

山頂には道祖神や賽ノ河原という名や浅間大神、役ノ行者などの石
碑もあります。一方、西麓の秋山郷・小赤沢(いまの栄村)には苗
場山神社があります。そこの書残状(明治19年)には山頂の伊米神
社は「苗場山作神守護神」とあり農業の神としているそうです。

ある年の6月、苗場山の祓川コースを山頂を目指しました。登山道
わきの笹薮は、シノダケのタケノコ取りのシーズン真っ最中で地元
の人がにぎやかです。

楽しそうな様子に、ついつられて竹やぶにもぐり込みます。あった
あった。ここにもあそこにも。こんなあんなで、時間ばかり経って
なかなか先に進めません。

あたりはまだ雪が多く山小屋近くのわずかに地面が顔を出したとこ
ろにテントを張らせてもらいました。

張り終えたころはすっかり遅くなってしまいました。早速夕食の支
度です。さっきの採りたてのタケノコの皮をむいてスープに入れま
した。冷えた体に温かいスープが入っていくのが分かります。これ
だからテント山行はやめられません。何を食べてもごちそうでした。

▼【データ】
【山名】
・【異名、由来】:なえばさん。稲田のような小さな池。なえ(い)
場山。別称:幕山(元禄御国絵図)。

【名山】
・深田久弥選定「日本百名山」(第32番選定):日本二百名山、日本
三百名山にも含まれる。
・田中澄江選定(1981年)「花の百名山」(第63番○選定・ツルコ
ケモモ)

【所在地】
・新潟県中魚沼郡津南町同県南魚沼郡湯沢町(合併なし)と長野県下水
内郡栄村との境。上越線越後湯沢駅の西15キロ。上越新幹線越後湯沢
駅からタクシー第2リフト町営駐車場下車、歩いて3時間40分で苗場山。
山頂に一等三角点(2145.3m)と伊米神社、苗場山頂ヒュッテ、遊仙閣が
ある。地形図に山名と三角点の標高、自然体験交流センターと遊仙
閣の文字の記載あり。

【ご利益】
・【伊米神社奥の院】:国家安全・五穀成就

【位置】
・【三角点】緯度経度:北緯36度50分45.32秒、東経138度41分25.15
秒(電子国土ポータルWebシステムから検索)

【三角点の位置】
・基準点(三角点):(基準点コード:TR15538251501)(点名:点名
:苗場山)(冠字選点番号:真 8)(種別等級:一等三角点)(成果
状態:正常)(測地系:世界測地系)(緯度経度:緯度 36°50′45.
3713、経度 138°41′25.1326)(標高:2145.26m)(現況状態:正
常 20030507)(所在地:新潟県南魚沼郡湯沢町大字三国字苗場山国
有林43林班)(点の記図:閲覧可)。(国土地理院「基準点成果等閲
覧サービス」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「苗場山(高田)」。5万分の1地形図「高田−苗
場山」

【山行】苗場山山行
・第1日:1995年(平成7)6月24日(土・くもり)探訪:1995年
(平成7)6月24日(土)、25日(日)「越後湯沢駅・祓川・苗場山・
赤湯・元橋バス停・越後湯沢駅」:家内と同行

【参考】
・「角川日本地名大辞典15・新潟県」田中圭一ほか篇(角川書店)1
989年(平成1)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・「日本歴史地名大系15・新潟県の地名」(平凡社)1986年(昭和61)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成4)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

………………………………………………………………………………………………
山旅イラスト【ひとり画通信】
題名一覧へ戻る