山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼314号 「奥武蔵・黒山三滝大平山の役ノ行者」

【概略】
黒山三滝には男滝・女滝と修験道の道場らしく天狗滝がある。天狗
滝裏山の太平山には栄円の墓と、役ノ行者の像が鎮座。前鬼、後鬼
を従えて、普通はこわい顔した行者もここの像はほほえんでいる。
この像が2006年12月25日に前鬼後鬼とともに壊されるという事件も
おきている。
・埼玉県越生町

▼314号「奥武蔵・黒山三滝大平山の役ノ行者」

【本文】
埼玉県奥武蔵の黒山三滝はその名の通り3つの滝があり、2段に流
れ落ちる滝は男滝・女滝。その優美さから男女和合の象徴として神
格化されました。

もう一つは修験道の道場らしく天狗滝。黒山は鎌倉時代、平将門の
血縁者がこの滝の上流南斜面の宗ヶ入(そうがいり)に隠遁したこ
とがきっかけで、のち後裔の山本坊栄円という人が修験道場として
開山したといわれています。

明治初めの廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)の嵐で修験道が廃止され
てしまいましたが、鉱泉が発見され、東京近郊の絶好の観光地とし
て一躍脚光を浴びました。

さらに昭和25年(1950)に「日本観光地百選・瀑布の部」で第9位
に選ばれています。こんなことからますます新緑と紅葉見物に多く
の人が訪れるようになったということです。

天狗滝裏山の太平山には栄円の墓と、「役行者の像」が鎮座してい
ます。

この像は江戸末期1865(元治2)年ごろに建てられたと伝えられ、
高さ約160センチ。行者さまはいつも前鬼、後鬼の2匹の鬼を従え
ています。

普通はこわい顔した役ノ行者もここの像はほほえんでいます。この
像が2006年12月25日に前鬼後鬼とともに壊されていることが分かり
入間署が器物損壊容疑で捜査しているという。

山岳愛好者に切っても切れない役ノ行者。われわれ行者ファンにと
ってはなんともショックです。事件は未解決のまま石像の修復工事
が終わって、2007年9月12日に石像修復の護摩供養が行われたとい
う。まずはよかった。

★太平山【データ】
【所在地】
・埼玉県入間郡越生町。東武越生線・JR八高線越生駅からバス黒山・歩
いて1時間10分で大平山。役ノ行者と前鬼後鬼の石像がある。地形図上
には何も記載なし。

【位置】
・【大平山】緯度経度:北緯35度56分6.57秒、東経139度14分
30.7秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「正丸峠(東京)」or「越生(東京)」(2図葉名と
重なる)

【山行】奥武蔵高山不動・黒山三滝
・某年11月13日(日・くもり)探訪

【参考】
・「郷土資料事典11・埼玉県」ふるさとの文化遺産(人文社)1997
年(平成9)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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