とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼312号 「丹沢三ツ峰御殿森ノ頭のヤマオダマキ」

【概略】
丹沢三ツ峰・御殿森ノ頭は南北朝時代、南朝方の新田義興の家臣矢
口長者の妻(娘ともいう)の祠があるとところ。突然うしろでキャ
ーッという悲鳴。ヤマヒルにとりつかれた女性たちが地団駄踏んで
払いのけている。そばでオダマキのつぼみが風にゆれていた。
・神奈川県相模原市と清川村との境。

▼312号 「丹沢三ツ峰御殿森ノ頭のヤマオダマキ」

東丹沢・神奈川県清川村宮ヶ瀬の中津川のほとりに「長者屋敷」と
いうところがあります。いまはキャンプ場になっています。ころは
南北朝時代、南朝方の新田義興の家臣・矢口信吉は主君を失い、わ
ずかな家来を連れてここに逃れきて隠れ里としたと伝えられていま
す。

しかし、ある日宮ヶ瀬の村人に見つけられ館に火を放たれましす。
安穏な暮らしになれた人々の隙につき込まれた出来事でした。落人
たちは次々に殺害され、財宝は運び出され分配されたという。

やっと逃げだした矢口長者の妻(ひとり娘ともいう)も北西にある
御殿森まで逃げましたが、村人の足は速く、とうとう追いつめられ
てしまいました。

「もはやこれまで」と覚悟した妻は、頭にさしていた金のかんざし
を引き抜き、のどを突いて自害したという。あとになって哀れに思
った村人はそのかんざしご神体とした小祠を建てて祭ったといいま
す。

御殿森にはいまも祠があります。付近に、その時信吉と村人が戦っ
た(勝負した)所といわれる「勝負沢」、六百両の財宝を分配した
「六百沢」などの地名が残っています。

6月、散ったシロヤシオツツジの花の絨毯のような登山道を下りま
す。御殿森の頭を過ぎたころ、突然うしろでキャーッという悲鳴。
ヤマヒルにとりつかれた女性たちが地団駄踏んで払いのけていま
す。そばでヤマオダマキのつぼみがゆれていました。

▼【データ】
【所在地】
・神奈川県愛甲郡清川村。小田急線本厚木駅からバス宮ヶ瀬三叉路
下車、歩いて1時間で御殿森ノ頭。石祠がある。地形図に地名、標
高ともに記載なし。付近に何も記載なし。

【位置】
・【御殿ノ森】緯度経度:北緯35度30分32.04秒、東経139度13
分17.75秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検
索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「青野原(東京)」

【山行】札掛から丹沢三ツ峰(野宿)
・第2日目:1990年(平成2)12月16日(日・曇・円山木の頭探訪)
:1990年(平成2)12月15日(土)〜16日(日)「新宿駅・秦野駅・蓑毛
バス停・ヤビツ峠・札掛・堂平沢・丹沢山・エンザンギの頭・御殿
ノ森・宮ヶ瀬・煤ヶ谷・別所温泉入口バス停・本厚木駅・新宿駅」

【参考文献】
・「落人・長者伝説の研究」(丹沢山麓の矢口長者伝説)落合清治(岩
田書院)1997年(平成9)
・「尊仏2号」栗原祥ほか(さがみの会)1989年(平成1)
・「新編相模国風土記稿」巻之一図説〜巻之二十三巻之二十三足柄
上郡巻之二早川庄:「大日本地誌大系第36巻・新編相模風土記稿第
1冊」雄山閣編輯局(雄山閣)1932年(昭和7)
・「日本の伝説20・神奈川の伝説」(角川書店)1977年(昭和52)
・「日本の民話・8」(乱世に生きる)宮本常一監修(角川書店)
1973年(昭和48)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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山旅イラスト【ひとり画通信】
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