山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼302号「大峰山山上ヶ岳の役ノ行者像」

【概略】
いまでも女人禁制の大峰山系の山上岳。さすが役ノ行者ゆかりのお
山、行者の像があちこちに建っている。4月、石像が雪で肩近くま
で埋もれている。その夜は洞川辻の無人茶屋の屋根を借りてテント。
崖に張り出したトイレは冷風に吹きさらされ一段と冷えた。
・奈良県天川村

▼302号「大峰山山上ヶ岳の役ノ行者像」

大峰山系の山上岳はいまでも女人禁制で、行者が修行のため山中を
飛ぶように回峰しています。その山上ヶ岳の登山基地・洞川集落は
修験道の聖地。

そこにある竜泉寺は山号大峰山。飛鳥時代、役行者が八大竜王を祀
り開いたといわれます。

大峰山寺のある山上ケ岳への入峰者は必ず洞川に一泊。竜泉寺で水
行ののち、八大竜王に道中安全を祈ったという。

境内の「竜の口」という所からは清水が湧き出し、噴水が上がる池
の中央の岩には役ノ行者の像が建てられています。

ここにはきまじめな若者と、そこ子を産んだ美しい女性(白蛇)と
の悲しい物語が伝えられています。

さすが役ノ行者ゆかりのお山・大峰山系山上ヶ岳は山岳修行の山ピ
リリとした厳粛な雰囲気がただよいます。役ノ行者の像があそこに
もこちらにも建っています。

ここ陀羅尼助茶屋近くの像もそのなかのひとつです。シーズン中は
あんなににぎやかだったのにいまは静まり返っています。

入山口吉野はサクラの花盛りでした。金峰山寺を通り五番関を過ぎ
るあたりから雪が目立ちはじめ、今宿跡ではひざを越す積雪。蛇腹
の急斜面を注意しながら通過し、洞辻に出れば打って変わって春の
日差しがまぶしい。

無人の茶屋がならぶ中、油こぼしから鐘懸岩へ。このあたりの雪は
まだ深い。一昨年見た役ノ行者の石像が肩近くまで埋もれています。

それでももう4月、山上ヶ岳大峰山寺へのなだらかな坂道は照りつ
ける春の日差しに雪解け水が靴が潜るほど流れていました。その夜
は洞川辻の無人の茶屋の屋根を借り、テントを張りました。

夜中、目がさめ、崖に張り出したトイレを借りました。崖下から雪
の中を冷たい風が吹き上げてきます。体が一段と冷えてきました。
慌ててテントに入り込み、暖かいシュラフに潜り込みました。

▼【データ】
【所在地】
・奈良県吉野郡天川村。近鉄吉野線吉野駅の南東14キロ。近鉄吉野
線下市口からバス洞川下車、歩いて3時間30分で山上ヶ岳。一等三
角点(1719.2m)と蔵王権現を祭る大峰山寺がある。地形図に山名
と三角点の標高、大峰山寺と山上宿坊、西ノ覗岩大峰山寺境内、東
ノ覗岩の文字の記載あり。

【位置】
・三角点:(標高1719.2m、一等三角点)。【緯度経度】北緯34度15
分8.58秒、東経135度56分27.8秒(電子国土ポータルWebシステムか
ら検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「弥山(和歌山)」or「洞川(和歌山)」(2
図葉名と重なる)(国土地理院「地図閲覧サービス」から検索)

【山行】奈良県金剛山・吉野金峰山・山上ヶ岳縦走
・某年4月7日(金):1995年(平成7)探訪

【参考】
・「古代山岳信仰遺跡の研究」大和久震平著(名著出版)1990年(平
成2)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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山旅イラスト【ひとり画展通信】
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