山の伝承伝説に遊ぶ
山旅通信
【ひとり画ってん】とよだ 時

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▼301号 「北ア・裏銀座野口五郎岳の芸名」

【略文】
大町市野口集落から望めるゴーロゴロの岩山・野口五郎岳。あの山
のように大きくなれと芸名にあやかった歌手もいる。谷をへだてて
赤牛岳の尾根が黒部湖に続く。カールの底の美しい五郎池。以前は
池のほとりでキャンプができたというからうらやましい。
・長野県大町市と富山県大山町との境

▼301号 「北ア・裏銀座野口五郎岳の芸名」

野口五郎…どこかで聞いた名前ですが、これは北アルプス裏銀座と
呼ばれるコースにある野口五郎岳(2924m)という山のこと。長野
県大町市の野口集落の近くにあって、山頂が岩石でゴーロゴロして
いるところからついた名前といいます。「あの山のように大きくな
れヨ」と芸名をつけた歌手もいます。

岩がゴロゴロしているところを「ごーろ」といい、五郎の字を当て
たものだという。明治時代の初めまで信州側では五六岳、四五六岳、
越中側では火打ヶ岳と呼んでいたそうです。

西南にそびえる黒部五郎岳(2840m)も同じです。似たものに五郎
ヶ越、五郎沢山、五郎岳、五六峠などが各地に分布しておりますが、
なかでもこの野口五郎岳が標高が一番高いのです。

ここは裏銀座縦走コースの途中で、山頂は360度の展望。特に南
方に望む槍・穂高岳は圧巻です。ここで休む登山者はたいがい南を
向いて座っています。

そんな中に、ひとり反対側を熱心に見ている人がいます。覗けば眼
下に小さな五郎池。水晶岳、赤牛岳から黒部湖に落ちる尾根の向こ
うに浮かぶ立山、剣岳。この眺めが好きで毎年来ているとのことで
した。

きょうはもう4,5時間座ったきりというからすごい。カールの底
の美しい五郎池まで標高差2300m。1952(昭和27)年ころは池のほ
とりでキャンプが自由にできたというからうらやましい話。

そんなことを思いながらの「銀ブラ」でありました。ちなみに五郎
池の命名は、1907年(明治40)このコースを歩いた植物学者の志村
寛(烏嶺)だといわれています。

▼【データ】
【山名】
・異名:越中側では火打ヶ岳
・由来:大町市野口集落から見える野口村のゴーロ(五郎)岳。

【所在地】
・長野県大町市と富山県富山市旧大山町各地区名(旧上新川郡大山
町)との境。JR大糸線信濃大町からタクシー高瀬ダム、さらに歩
いて、のべ10時間で野口五郎岳。二等三角点(2924.3m)がある。

・山頂直下に野口五郎小屋とキャンプ場がある。地形図に山名と三
角点の標高の記載あり。三角点より北方向405mに黒部五郎小屋が、
三角点より西方向1020mに五郎池がある。

【名山】
・日本山岳会選定「日本三百名山」(第255番):日本百名山以外に2
00山を加える。
・岩崎元郎選定「新日本百名山」(含まれず)

【位置】
・三角点:北緯36度25分57.66秒、東経137度38分16.45秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「烏帽子岳(高山)」(国土地理院「地図閲
覧サービス」から検索)。5万分の1地形図「高山−槍ヶ岳 」(「電
子国土ポータルWebシステム」から検索)

【山行】北ア裏銀座から表銀座・常念岳・徳本峠・島々谷縦走
・某年8月19日(土・晴れ)探訪

【参考】
・「角川日本地名大辞典16・富山」(角川書店)1991年(平成3)
・「角川日本地名大辞典20・長野県」(角川書店)1991年(平成3)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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