とよだ 時・山の伝承民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼258号 「北ア・剣沢テント場の冷しそうめん」

【概略】
テント場には冷たいビール、わき上がる雑念をうち消しながら剱沢
のテント場目指して下りはじめた。きょうの夕食は雪渓の水を使っ
た冷やしそうめんとしゃれた。突然体がふるえ出す。売店で買った
缶ビールも飲む気がしない。雪渓の水が冷たすぎ体が冷えてきた。
・富山県立山町

▼258号 「北ア・剣沢テント場の冷しそうめん」

「山の姿峨々として険阻画のごとくなるは越中立山の剱峯に勝れる
ものなし…最も高く聳え、たがひに相争ふ程なる峯五ツあり、剱峯
も其一也」。

江戸後記の医者で文人の橘南谿の「名山論」(『東遊記』巻末)にあ
る一文です。

暑い太陽と戦うのは夏山の常とはいえ、剱岳というこの高山でさえ
この暑さ。空中に突き上げられたような山頂からの展望。何ひとつ
邪魔をするものはありません。

山頂に建つ祠のまわりはいつもながら、食事をとったり、お茶を飲
んだり、思い思いに憩っています。見ればはるか彼方にこれから下
る剱沢のテント場に色とりどりのテントがならんでいます。今夜は
あそこに泊まる予定です。

充分すぎるほど展望を楽しんだのち、テント場目指して下りはじめ
ました。途中の名物岩場「カニの横ばい」もナントカ通過。テント
場についたら冷たいビールが待っているゾと頭のなかで誰かがささ
やきます。

わき上がる雑念をうち消しながらジリジリした岩道の上をただひた
すら足を動かしました。やっと着いたキャンプ場。とたんに賑やか
になります。

野営管理所の前の水飲み場で冷たい水を飲み、待望の缶ビールを買
いました。テント場のそばを雪渓の水が流れています。そこそこに
テントを張り一息ついて歩いてきた雄大な剱岳を見上げます。

きょうの夕食はこの冷たい水を使った冷やしそうめんとしゃれまし
た。それにしても暑かった、一日をふり返ります。やれやれとそう
めんを一口に入れます。

突然体がふるえ出しました。売店で買った缶ビールもなんだか飲む
気がしません。そうか、雪渓の水か。雪渓から流れている水が冷た
すぎて体が冷えてきたのだと理解するまで間がかかりました。

あすは室堂からザラ峠を越え五色ヶ原でテントを張る予定です。道
順を確認し一日を終わりにしました。

▼【データ】
【所在地】
・富山県中新川郡立山町。富山地方鉄道立山駅からケーブル美女平
からバス、室堂から歩いて3時間50分で剱沢キャンプ場(野営管
理所)。付近に剱沢小屋がある。地形図に管理所名と小屋名、交番
の記載あり

【位置】
・【剱沢キャンプ場】緯度経度:北緯36度36分08.89秒、東経137
度37分01.19秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」か
ら検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「剱岳(高山)」or「十字峡(高山)」(2図
葉名と重なる)

【山行】早月尾根・剱岳・五色ヶ原・薬師岳縦走
・第3日目:1986年(昭和61)7月28日(日・快晴):1986年(昭
和61)7月26日(金)〜8月1日(土)「魚津駅・富山地方鉄道上市駅
・馬場島バス停・早月尾根・伝蔵小屋(早月小屋)・剣岳・剱沢・
立山室堂・ザラ峠・五色ヶ原・スゴ乗越・薬師岳・太郎兵衛平・折
立バス停・有峰口駅・富山駅」:家内と同行

【参考】
・「名山論」橘南谿:東洋文庫248「東西遊記1」宗政五十緒校注
(平凡社)1986年(昭和61)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅イラスト【ひとり画通信】
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