山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼256号 「西丹沢・神ノ川のバアソブ」

【序文】
何年か前、神ノ川支流で野宿をしたときのこと。橋の横から風巻ノ
頭へ向かう急坂で、同行の山仲間が教えてくれたバアソブの花。バ
アは婆。ソブとはソバカスのことだそうです。婆があれば爺がある
はずです。やはり同じ属に大型のジイソブというのがあってこれは
ツルニンジンのことなのだそうです。
・神奈川県相模原市

▼256号 「西丹沢・神ノ川のバアソブ」(詳細)

山中を歩いているとバアソブの花も見かけることがあります。2セ
ンチ位の紫色をした丸っこく釣り鐘のような花が垂れ下がって咲
き、内側に濃い紫色の斑点があります。

バアソブとは変わった名前ですが、漢字で書くと婆蕎。バアは婆の
意味。ソブはソバカスの意味で長野県木曽地方の方言なのだそうで
す。

花冠の斑点をソバカスに見立てたとのこと。茎はつる性でほかのも
のに巻きついています。その茎を切ると白い乳液が出てきます。葉
は4枚がくっついて付き輪生しているように見えます。地下には短
く大きな球形の根茎があり臭気を出すという。

婆があれば爺があるはずです。やはり同じ属に大型のジイソブとい
うのがあってこれはツルニンジンのことなのだそうです。「薬用の
チョウセンニンジンの代用とするが、その効能はない」と植物図鑑
にありました。

もうかなり前の夏、神奈川県津久井町西丹沢の神ノ川支流で野宿を
したときのこと。橋の横から風巻ノ頭へ向かう急坂で見つけた見た
こともない花。

しばらく見つめていると、同行の山仲間遊佐好子さんがバアソブと
教えてくれました。その時がこの花とのはじめての出会いです。
・キキョウ科ツルニンジン属の多年草

▼【データ】
【所在地】
・神奈川県津久井町。JR中央線藤野駅から町営バスを乗り継ぎ東
野下車歩いて5時間あまりで神ノ川(東海道自然歩道交差ピーク
731地点)。写真測量による標高点(731m)がある。そのほかは何
もなし。地形図に標高点の標高のみ記載。標高点より西方向約○m
に長者舎(ごや)がある。

【位置】
・【標高点】緯度経度:北緯35度30分19.67秒、東経139度06分
3.35秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「大室山(東京)」or「中川(東京)」(2図
葉名と重なる)

【山行】西丹沢野宿訓練
・某年9月8日(土・快晴)探訪

【参考】
・「植物の世界・1」(朝日新聞社)1996年(平成8)
・「日本大百科全書・18」(小学館)1988年(昭和63)
・「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)
・「世界の植物・1」(朝日新聞社)1975年(昭和50)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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山旅イラスト【ひとり画展通信】
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