山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼254号「中ア・越百山のガンコウラン」

【序文】
木曽駒ヶ岳から縦走。仙涯嶺付近の岩場、鎖場や岩場が終わり、広
い尾根を下って登り返すと越百山。いままでかぶっていたガスがサ
ーッとあがった。足下に高山植物のガンコウランの実が熟している。
手でしごいて口いっぱいにほおばりながらバンザイをした。
・長野県大桑村と同県飯島町との境

▼254号「中ア・越百山のガンコウラン」

中央アルプスの越百山(こすもやま・2613m)は越百岳ともいうそ
うです。

越百と書いて「こすも」。変わった山名ですが、百は大きい数の意
味で「たくさん」。つまり、中アの南端にあって、たくさんの山を
越えたところにある山の意味だとの説もあります。

ここは北方にそびえる木曽駒ヶ岳(2956m)からつづくアルペン的
縦走路の終着点になっています。

こんもりした、まんじゅうのような形、標高は2000mを越している
のに山頂は土が露出しています。

これより南はやぶ山になるため、多くの登山者は、越百山で縦走を
やめて伊那谷や木曽谷に下山しています。

山頂の南側の標高2450m〜2500m付近はハイマツ群落の南限になっ
ているそうです。

秋の彼岸に入ったある日、北端の将棊頭山(しょうぎがしらやま)
から南端の摺古木山(すりこぎやま)まで縦走したことがありまし
た。

空木岳(うつぎだけ)、南駒ヶ岳を過ぎ、そろそろくたびれが出て
きます。仙涯嶺(せんがいれい)前後の岩場、鎖場や岩場がやっと
終わり、広い尾根を下ってまた登り返すと越百山につきました。

いままでかぶっていたガスがサーッとあがりました。足下にガンコ
ウランの実が熟しています。手でしごいて口いっぱいにほおばりな
がらバンザイをしました。

ところでガンコウランは漢字で「岩高蘭」と書き、ランの一種かと
思います。しかしランではなく常緑の低木。高さ10〜20センチで、
針金のよな細い茎に細かい葉をビッシリとつけ、群落をつくるさま
は寝ころびたくなるようです。

6月ころ、暗紫色の小さな花を葉のつけねに咲かせます。雄花は雄
しべが3本、雌花には雌しべが1本あります。

果実は9月ごろ熟し、独特の香りと味があって生食のほか果実酒、
ジャム、ケーキなどに利用するそうです。
・ガンコウラン科ガンコウラン属の常緑小低木

▼【データ】
【所在地】
・長野県木曽郡大桑村と長野県上伊那郡飯島町との境。JR飯田線七
久保駅から8時間30分で越百山。三等三角点(2613.2m)がある。その
ほかは何もなし。地形図に山名と三角点の標高のみ記載。三角点よ
り西方向890mに越百避難小屋がある。

★【名山】
・日本山岳会選定「日本三百名山」(第260番):日本百名山以外に2
00山を加える。
・岩崎元郎選定「新日本百名山」(含まれず)
・清水栄一選定「信州百名山」(第79番)

★【位置】
・【三等三角点】北緯35度40分45.87秒、東経137度48分11.7秒(電
子国土ポータルWebシステムから検索)

★【地図】
・2万5千分の1地形図「空木岳(飯田)」(国土地理院「地図閲覧サー
ビス」から検索)。

★【参考】
・「信州山岳百科・2」(信濃毎日新聞社編)1983年(昭和58)
・「日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・「角川日本地名大辞典20・長野県の地名」市川健夫ほか編(角川
書店)1990年(平成2)
・「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)
・「世界の植物・3」(朝日新聞社)1975年(昭和50)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅イラスト【ひとり画展通信】
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