山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼244号 「東北・秋田駒千沼ヶ原のサンショウウオ」

【概略】
その存在は古くから土地の人たちの間で伝承されていたというこの
湿原。正式に報告されたのは昭和29年になってから。海抜1340〜80
m。面積46ヘクタ−ル。ヨツバシオガマ、ワタスゲなどが咲く沼に
はサンショウウオがのんびり昼寝していた。
・岩手県雫石町

▼244号 「東北・秋田駒千沼ヶ原のサンショウウオ」

秋田県と岩手県の境にあるのになぜか秋田駒ヶ岳。その北東へ2時
間半のところに千沼ヶ原という湿原があります。標高1340〜1380m、
湿原面積46ヘクタール。

周囲をオオシラビソ(アオトドマツ)に囲まれ大小さまざまな地塘
が見られる高層湿原。湿地性の高山植物や昆虫たちが生息し、自然
な状態を保った貴重な湿原で、山上の別天地と書く参考書まであり
ます。地塘が多く1000個もあるのではというのでつけた名前が千沼
ヶ原湿原。

その存在は土地の人たちの間で古くから言い伝えられてはいました
が、正式に報告され世間に知られるようになったのは昭和29年にな
ってからというから比較的新しい。

ある年の8月はじめ、秋田駒ヶ岳に登り千沼ヶ原、烏帽子岳、田代
岱経由乳頭温泉のルートで行ってみました。

秋田駒から湯森山間は肩くらいまでクマザサが生い茂り、中を歩く
と朝露で全身ビショぬれになりました。

湯森山との鞍部で着替えるのに一苦労。やがて訪れた千沼ヶ原では
ヨツバシオガマ、ワタスゲなどが咲き乱れて私たちを迎えてくれま
した。

アオトドマツが茂る下に小さな沢が流れ格好の水場になっていま
す。水筒を満タンにします。この先は葛根田川にある池ノ上温泉、
岩手山方面へつづく道。私たちはここから引き返さなければなりま
せん。沼にはサンショウウオがのんびり昼寝していました。

▼【データ】
★【所在地】
・岩手県岩手郡雫石町。JR田沢湖線田沢湖駅からバス、乳頭温泉、
さらに歩いて3時間で千沼ヶ原。地形図に地名と湿原記号のみ記載。
付近に何も記載なし。

★【位置】
・千沼ヶ原:北緯39度47分40.61秒、東経140度51分29.4秒

★【地図】
・2万5千分の1地形図「秋田駒ヶ岳(秋田)」

★【山行】東北の山縦走
・某年7月31日(月・快晴)探訪

★【参考】
・「角川日本地名大辞典3・岩手県」高橋富雄ほか編(角川書店)1
985年(昭和60)
・「日本歴史地名大系3・岩手県の地名」(平凡社)1990年(平成2)
・「山の自然学」小泉武栄(岩波書店)1998年(平成10)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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