山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼235号 「静岡・大日峠登山口口坂本の七夕祭り」

【概略】
七夕が雨だと牽牛と織女が会えないという考え方(中国流)と雨が
3つぶでもふらないと七夕さまが天の川を渡ってしまい疫病神を生
むので降ったほうがよいとする農村の考え方(日本古来のもの)が
ある。静岡・井川湖へ続く山村口坂本ではいまでも7月7日、田畑
に七夕飾りを立て豊作を願う。
・静岡県静岡市

▼235号 「静岡・大日峠登山口口坂本の七夕祭り」

南アルプスの展望台・勧業峰直下の静岡県大日峠を越える道は、か
つては秘境といわれた静岡市井川集落への唯一の連絡路だったそう
です。

静岡市街から上落合、口坂本集落を経由し物資を運ぶ重要な輸送路
だったという。しかし1958年(昭和33)、中部電力が井川ダム建設
にあたり、補償として口坂本を通らないで井川集落へ達する「井川
林道」が通じてからは、口坂本集落は急激に過疎化しました。

しかしその後、温泉が試掘され、公衆浴場の開設・民宿などもでき、
いまでは保養地として定着しているそうです。

集落は、ほとんどが山林で拓けた畑地に茶畑が広がっています。霜
よけの扇風機が立ちならんでいるのが印象的です。

ある夏、井川集落から大井川鉄道を利用せず、大日峠を越えてわざ
わざ口坂本集落に降りたことがありました。

途中、遠くに霜よけの大きな送風機がある茶畑の手前、畑の中にな
らぶササの葉の七夕飾りを見つけました。

七夕に雨が降れば牽牛と織女が会えないという中国流の考え方はい
ま普通になっている都会の七夕。それに比べ、雨が3つぶでもふら
ないと七夕さまが天の川を渡ってしまい疫病神を生んでしまうとい
う日本古来の農村の考え方があります。

静岡・井川湖へつづく山村口坂本ではいまでも旧暦7月7日、田畑
に七夕飾りを立て豊作を願っているようです。なにか新しい発見で
もしたような気になりました。

▼【データ】
★【所在地】
・静岡県静岡市。新幹線静岡駅からバス1時間20分上落合から歩
いて1時間半で口坂本。地形図に口坂本集落名のみ記載。付近に何
も記載なし。

★【位置】
・口坂本:北緯35度10分58.2秒、東経138度16分26.8秒

★【地図】
・2万5千分の1地形図「湯の森(静岡)」

★【山行】南ア南部縦走
・某年8月9日(火)探訪

★【参考】
・「イラストふるさと祭事記」とよた 時(富民協会)1994年(平成
6)
・「アルパインガイド30・南アルプス」(山と渓谷社)1979年(昭和
54)版
・「日本年中行事辞典」鈴木棠三(角川書店)1977年(昭和52)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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山旅イラスト【ひとり画展通信】
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