山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼229号 「北ア・鹿島槍ヶ岳のホシガラス伝説」

【概略】
北アルプス・鹿島槍ヶ岳にすむホシガラスから霊水の入ったびんを
もらったむらのきこりの娘。そのびんを父親に割られてしまいまし
た。しかしホシガラスはこんどはヨモギの草と使い方を教えてくれ
ました。それがお灸のはじまりになりました。いまでもその村では
ホシガラスを大切にするという。

▼229号 「北ア・鹿島槍ヶ岳のホシガラス伝説」

昔、信州北アルプスのふもとの山村に木こりの一家が住んでいまし
た。そこには少しぼんやりとした娘がいて、いつも鹿島槍ヶ岳(288
9m)をボーっと見つめていいました。

そこへ山にすむホシガラスがやってきて、一本のびんを出して「こ
の霊水を飲むと足が丈夫になる。足の弱い人に飲ませて助けてあげ
なさい」と娘に渡しました。

そんなところへ父親の木こり仲間が「最近、年のせいか山歩きがき
つくなった」と、父親に愚痴をこぼしながら通りかかりました。娘
はホシガラスに貰ったびんを思い出し、木こりの家に行って霊水を
少し飲ませました。

すると「あれ、足が軽くなったぞ」。木こりは喜びました。それか
らというもの、足の骨を折った人やケガした者がいると、娘は霊水
を飲ませに出かけました。

村人たちは大喜び。みんなが娘にお礼をいいました。何も知らない
父親は不審に思いました。娘のるすに調べてみるとびんが一本あり
ました。のぞき込むと自分の顔が写りました。

「内緒で男とこっそり逢っていたのか」。怒った父親はびんを投げ
つけ割ってしまいました。戻ってきた娘は割れたびんを見つけ、が
っかりしました。娘はまた鹿島槍ヶ岳をぼんやりながめはじめまし
た。

するとまたホシガラスが飛んできてこんどはヨモギを渡しました。
そして娘にその使い方を教えました。それがお灸のはじまりだとい
うことです。そのためこの村ではホシガラスを大切にするそうです。

▼【データ】
【山名】
・異名:古くは背比べ山・隠里岳。大冷沢源流に現れる雪形から「シ
シ岳」「ツル岳」(「富山県山名録」)。鹿島明神

【所在地】南峰と北峰がある。
・長野県大町市と富山県中新川郡立山町と富山県黒部市宇奈月町
(旧下新川郡宇奈月町)との境。大糸線信濃大町駅の北西15キロ。
JR大糸線信濃大町(タクシー20分)大谷原から歩いて8時間45分
で鹿島槍ヶ岳南峰(標高2889.1m)、さらに歩いて30分で北峰(標
高2842m)。南峰には二等三角点、北峰には写真測量による標高点
(標石はない)がある。地形図に鹿島槍ヶ岳の文字記載。その他そ
れぞれに南峰の文字と三角点の標高、北峰の文字と標高点の標高の
記載あり。付近に何も記載なし。

【名山】
・深田久弥選定「日本百名山」(第47番):日本二百名山、日本三百
名山にも含まれる。
・岩崎元郎選定「新日本百名山」(含まれず)
・清水栄一選定「信州百名山」(第53番)

【位置】
・北峰標高点:北緯36度37分37.38秒、東経137度45分7.05秒
・南峰(三角点):北緯36度37分28.3941秒、東経137度44分49.39秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「十字峡(高山)」or「神城(高山)」(2図
葉名と重なる)

【山行】後立山連峰(千国白馬大池から爺ヶ岳・扇沢)縦走
某年8月2日(日・快晴)探訪

【参考】
・「アルプスの伝説」山田野裡天(ナカザワ)発行年不明
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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