とよた 時・山岳ゆ-もぁ画
山旅漫歩゚【ひとり画通信】

▼227号 「東北岩手山・コマクサと田村麻呂」

【概略】
昔、岩手山は鬼神大猛丸の奥の館だったという。岩手山はコマクサ
の大群落。東斜面ではこれらの高山植物が点在する火山性砂礫地が
標高1300mにまで降りてきているという。ここのコマクサは北ア白
馬岳をしのぎ1,2を争うのかも知れないという。
・岩手県八幡平市と滝沢村と雫石町との境

▼227号 「東北岩手山・コマクサと田村麻呂」

岩手県の岩手山(2038m)はもともとは山全体が神体と考えられ、社
殿はなかったという。岩手山はもとの名を厳鷲山(がんじゅさん)
といい、厳鷲山大権現が祭られていたといいます。

この大権現の号はあの坂上田村麻呂が奉ったものという。この神の
もとになっている仏(本地仏・ほんじぶつ)は、阿弥陀、薬師、観
音の三尊だそうです。その昔、岩手山は鬼神大猛丸(おおだけまる)
の奥の館だったという。

突然ですが、桓武(かんむ)天皇延暦年間(782〜806・平安時代初
頭)、伊勢の国・鈴鹿山の鬼退治の勅を受けた坂上田村麻呂は、清
水観音のお告げで得た栗毛の馬に乗り鈴鹿の山に乗り込みました。

しかし鬼はおらず、いたのは神女がひとり。神女は、我はこの山に
住む立烏帽子(たてえぼし)というものなり。日ごろ国中が騒がし
いのは、奥州厳鷲山にすむ鬼・大武(大猛丸)がわらわを犯そうと
やってくるが従わぬため暴れまわり里人を害している。

我、汝の嫁になり援助するので大武と戦い勝利を得よ。と神女より
宝剣を贈られ、岩手山に向かったと「厳鷲山縁起」(文化3年別当
自光坊)に出てきます。

延暦16年(797)森ヶ岡(盛岡)に陣をしいた坂上田村麻呂はこの
鬼大猛丸を攻め立て、八幡平に追いつめ退治したという。

岩手山はコマクサの大群落がとくに有名です。東斜面ではこれら高
山植物が点在する火山性砂礫地が標高1300mにまで降りてきている
のが特色だという。

ここのコマクサは秋田駒ヶ岳の群落のならんで北アルプス白馬岳を
しのいで1,2を争うのかも知れないといわれています。

ある夏、八幡平からもっこ岳、嶮岨森経由で岩手山にやってきまし
た。途中大深山荘で一泊。東岩手の外輪山にある薬師岳は、この山
の最高峰。北に八ツ目湿原から遠く八幡平への裾野が広がります。

付近に石の獅子頭が置いてあります。足下一面広がるコマクサ。ま
さに花が咲き乱れています。

その時、急に強い風が吹き出しました。帽子が舞い上がりはるか松
川温泉の方に飛ばされていきます。無理とは分かっていますが、思
わず追いかける姿勢に……。眼下に温泉の湯煙が上がっていました。

▼【データ】
【山名】
・【異名、由来】:岩手山、磐手山(谷文晁日本名山図会)、厳鷲山、
霧山岳、霧ヶ岳、奥ノ富士、南部片富士、南部富士、岩堤山(菅江
真澄)。岩G山(がんちょうやま・谷文晁名山図譜)。改心した鬼が
約束の手形を岩に押した。残雪がワシににている雪形説。厳鷲山:
春に鷲の形をした雪形が残る。

【所在地】
・岩手県岩手郡雫石町と岩手県八幡平市旧松尾村各地区名(旧岩手
郡松尾村)・岩手県八幡平市旧西根町各地区名(旧岩手郡西根町)・
岩手県岩手郡滝沢村との境。いわて銀河鉄道滝沢駅の北西12キロ。
JR東北新幹線盛岡からバス、柳沢から歩いて5時間半で岩手山。
外輪山火口壁薬師岳に一等三角点(2038.2m)がある。外輪山南東
側に岩手山神社の奧宮がある。地形図に岩手山名と三角点の標高と
奥宮の場所に神社の鳥居記号の記載あり。

【名山】
・深田久弥選定「日本百名山」(第13番):日本二百名山、日本三百
名山にも含まれる。
・岩崎元郎選定「新日本百名山」(第13 番・岩手県)

【ご利益】
・戦勝祈願

【位置】
・三角点:【緯度経度】北緯39度51分09.39秒、東経141度00分
03.6秒(電子国土ポータルWebシステムから検索)

【基準点の詳細】
・基準点(三角点):(基準点コード:TR15941601001)(点名:岩手
山)(冠字選点番号:左 17)(種別等級:一等三角点)(基準点成
果状態:正常)(測地系:世界測地系)(緯度経度:緯度 39°51′0
9.4175、経度 141°00′03.6158)(標高:2038.20m)(基準点現況
状態:正常 19941001)(所在地:岩手県岩手郡滝沢村大字滝沢岩手
山347−1)(点の記図閲覧:可)。(国土地理院「基準点成果等
閲覧サービス」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「大更(盛岡)」or「松川温泉(秋田)」(2
図葉名と重なる)5万分の1地形図「盛岡−沼宮内」

【山行】東北の山縦走
・第3日目:1987年(平成1)7月30日(日・ガス晴れ)探訪:1987
年(平成1)7月28日(金)〜8月6日(日)「上野駅・盛岡駅・八幡
平頂上バス停・八幡平・もっこ岳・岩手山・雫石駅・田沢湖駅・秋
田駒ヶ岳・千沼ヶ原・烏帽子岳・田代岱・乳頭温泉・田沢湖駅・盛
岡駅・早池峰山・薬師岳・薬師堂・又一の滝・遠野駅・花巻駅・上
野駅」:家内と縦走

【参考】
・雫石町教育委員会からの手紙
・「角川日本地名大辞典3・岩手県」高橋富雄ほか編(角川書店)1985
年(昭和60)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「旅と伝説」三元社(昭和17年2月号・p12)「山と地形ことば」
高橋文太郎:「民俗学資料集成29」(岩崎美術社)
・「東北の山岳信仰」岩崎敏夫(岩崎美術社)1996年(平成8)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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