とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼218号 「奥多摩・御前山白カタクリの花」

【概略】
その昔、三頭山が荒れたとき、大和の国へ占いに行ったエカツとミ
トカツの兄弟。山荒れがやみ、エカツは三頭山の三頭御前社に、ミ
トカツは鹿止(かのと)御前社として御前山にまつられたという。
4月、御前山はカタクリの花盛り。一面染まった紅紫色のなかに白
いカタクリを見つけました。
・東京都奥多摩町と檜原村との境。

▼218号 「奥多摩・御前山白カタクリの花」

【本文】
東京都奥多摩御前山(1405m)は、大岳山や三頭山とともに奥多
摩三山のひとつ。御前山の名は東側の大岳山を男性に見立てたの
に対して、姫御前の意味にしたのだともいわれます。『旅と伝説』
1942年(昭和17)1月号「山と地形のことば」で高橋文太郎氏は、
「越中の釼ヶ岳(三〇〇三米)は釼ヶ御前と尊称され、山をゴゼ
ンサマと敬称するのは古い習慣であった。…。

東北の飯豊山には本山直下にオンマヘザカ(御前坂)があり、こ
の付近にはゴヒショ(御秘所)と呼ぶ山中の霊地がある(山岳)。
奥多摩にも御前山(一四〇五米)があり、この付近に大嶽山(1267
米)がある。恐らくはこの御前山も大嶽山に對する御前であらう」
と述べています。

それに対して山の形が神に供える盛り飯に似ているからついた名
だという説もあります。山村民俗の会会員の加藤秀夫氏は、その
会報『あしなか第1冊』「あしなか第6輯」1943年(昭和18)の
なかで、「奥多摩の御前山は大岳山の前山だと言ふ見方からオンマ
ヘ山説が生じたんだと思ふが、主峰に対してオンマヘと考へられ
る例は越中立山の剣ヶ御前山(鶴ヶ御前山2776.6m)は剱岳の前
山だと言ふ人達の一ツの大きな論拠となってゐるんだが、これは
旧く、大正十(1921)年『山岳』第十六年一号の?鼠(けいそ・
ハツカネズミ)談山の中で、木暮理太郎(明治時代の登山家、日
本登山界の大先達)先生が、「剱岳の尊称であったのが、今ではそ
の南にある山の呼称となったのである」と強く否定せられて居る。」
…。

奥多摩の御前山は単に御前山と呼ばれて冠称がない。これは小河
内側でも檜原側でも同じであった。小河内側の熱海辺ではそこか
ら望見できる御前山西方の小突起(檜原称惣岳山)辺りを前(メ
エ)御前と言ふし、神戸(カノト)辺では御前山の南中尾根の分
岐点突起を又前(メエ)御前と言ってゐた。…。

大岳山と御前山は元来地勢的にも、信仰的にも全然関係なかった
のである」と主張し、「御前(ごぜん)は御膳(ごぜん)で神供(じ
んく)する飯を盛るかたちが尖頂(せんちょう)(とがった山頂)
三角形をしてなしている、その形態から導かれたという」として
います。

ところで、檜原村の教育委員会によれば、かつて三頭山が大荒れ
になった時、わざわざ大和の国まで占いに行って、山をしずめた
エカツとミトカツという兄弟がいました。この兄弟を神として山
に祭る際、弟のミトカツを「かのと鹿止御前社」として、ここ御
前山に祭ったという、檜原村の伝承があります。

御前山から小河内峠に向かう途中には中平遺跡があり先史時代の
甲州・武州・信州の文化交流の跡だという。5月ごろ山頂付近に
咲くカタクリは有名で、毎年、見物のハイカーでにぎわいます。
山頂直下の避難小屋わきには湧き水があって、山行時はいつもあ
のうまい水を一口飲みに寄ったものでした。

しかし、近年のあまりのハイカーの多さに山が汚れ、飲めなくな
ってしまっています(当時)。4月、御前山はカタクリの花盛り。
一面染まった紅紫色のなかに白いカタクリを見つけました。

▼御前山【データ】
【所在地】
・東京都西多摩郡奥多摩町と檜原村との境。JR青梅線奥多摩駅
からバス奥多摩湖バス停から歩いて3時間で御前山。三等三角点
(1405.0m)がある。

【位置】
・【三角点】緯度経度:北緯35度46分12.32秒、東経139度04分
50.4秒(電子国土ポータルWebシステムから検索)

【基準点の詳細】
・基準点:(基準点コード:TR35339502601)(点名:御前山)(冠字
選点番号:果 11)(種別等級:三等三角点)(基準点成果状態:
正常)(地形図:東京−五日市)(測地系:世界測地系)(緯度経度
:緯度 35°46′12.313、経度 139°04′50.3803)(標高:1404.98
m)(基準点現況状態:柱石き損 20040126)(所在地:記載なし)(点
の記図閲覧:×)(国土地理院「基準点成果等閲覧サービス」から
検索)

【点の記】
・閲覧不可

【地図】
・2万5千分の1地形図「奥多摩湖(東京)」(国土地理院「地図閲
覧サービス」から検索)。5万分の1地形図「東京−五日市」(「電
子国土ポータルWebシステム」から検索)

【山行】奥多摩愛宕山・鋸尾根・御前山・小河内峠
・第1日目:1996年(平成8)4月20日(土・晴れ)探訪:1996年(平
成8)4月20日(土)〜21日(日)「奥多摩駅・氷川キャンプ場・愛宕
神社入口・愛宕山・愛宕神社・天聖神社・鋸山・大ダワ避難小屋・
鞘口山・御前山・惣岳山・小河内峠・奥多摩湖へ下る遊歩道・奥多
摩湖バス停・奥多摩駅」

【参考文献】
・『あしなか第1冊』「あしなか第6輯」(山村民俗の会)1943年(昭
和18)。
・アルパインガイド17『奥多摩・奥武蔵』寺田政晴(山と渓谷社)
1990年(平成2)
・『奥多摩』宮内敏雄(百水社)1992年(平成4)
・『角川日本地名大辞典13・東京都」北原進(角川書店)1978年(昭
和53年)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『旅と伝説』三元社(1942年(昭和17)1月号)
・檜原村文化財専門委員岡部駒橘氏の手紙

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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山旅イラスト【ひとり画通信】
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