山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼207号 「東北・吾妻連峰姥ヶ原の姥神」

【概略】
東北の吾妻連峰、浄土平からちょっと入った「姥ヶ原」はもと「優
婆ヶ原」と書かれたという。最初は月光姥神がまつられていた所で、
いまは姥神の石仏が鎮座しています。かつては清浄結界の場所。信
者たちは、新しいわらじに履き替えて奥ノ院にお参りに向かったと
いう。
・福島県猪苗代町

▼207号 「東北・吾妻連峰姥ヶ原の姥神」

有名な山のふもとに、よく姥神や姥石などの石像がまつられていま
す。それにはたいがい老女や尼さんが、女人禁制のタブーを犯して
山に登り、神の怒りにふれて石にされてしまったとかの伝説がつい
ています。

また山岳修行の山や谷、高原には薬師岳、地獄谷、浄土ヶ原などの
仏教用語のついたものが多く、姥とか優婆の名がついています。東
北の吾妻連峰、吾妻小富士のある浄土平からちょっと入った「姥ヶ
原」にも姥神の石像が口を開けて座っています。

姥ヶ原はもとは「優婆ヶ原」と書かれたという。優婆とは出家せず
に仏道を修行する優婆夷(うばい・女)、優婆塞(うばそく・男)
からきた名前だという。

ここは最初は月光姥神がまつられていた所だそうで、いまは姥神の
石仏が足の先が欠けたまま鎮座しています。この山も役ノ行者の開
山とされ、吾妻山大権現がまつられています。

修験道のお山かけは福島県猪苗代町側や二本松市岳温泉側から、ま
た福島市庭坂姥堂からも峰入りされたといいます。かつてはここが
清浄結界の場所だったところ。

お山かけの信者たちは、新しいわらじに履き替えて奥ノ院にお参り
に向かったのだそうです。

▼【データ】
【所在地】
・福島県耶麻郡猪苗代町。JR福島駅からバス、磐梯吾妻スカイラ
イン浄土平下車、歩いて1時間40分で姥ヶ原。地形図に姥ヶ原の
文字のみ記載。姥ヶ原より北東方向405mに鎌沼がある。

【位置】
・姥ヶ原:北緯37度43分15.89秒、東経140度13分50.4秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「吾妻山(福島)」

【山行】吾妻連峰縦走
・某年10月20日(日・晴れ)探訪

【参考】
・「民間信仰辞典」桜井徳太郎(東京堂出版)1984年(昭和59)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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山旅イラスト【ひとり画展通信】
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