山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼173号 「箱根・明星ヶ岳と道了尊」

【概略】
箱根・大雄山最乗寺は曹洞宗の名刹。室町時代、僧了庵が創建した
ものという。その弟子の道了は怪力の持ち主。寺の完成後、師の了
庵が亡くなると、道了は寺を永久に守護するため、天狗の姿になっ
て空中に舞い上がり明星ヶ岳に飛び立ったという。
・神奈川県小田原市と箱根町との境

▼173号 「箱根・明星ヶ岳と道了尊」

箱根の明星ヶ岳、明神ヶ岳の北側登山口にある大雄山最乗寺は曹洞
宗の名刹で、天を摩すばかりの大木の杉林のなかにあります。最乗
寺境内へ入る終点のバスの停留所の名前が、なぜか道了尊(どうり
ょうそん)です。

このお寺には仁王さまのかわりに大天狗、小天狗の像が建っており、
赤い天狗のげたがたくさん並んでいます。最乗寺は、室町時代前期
の応永元年(1394)、了庵(りょうあん)という僧によって建てら
れたものだそうです。

その建設に協力した弟子に怪力の持ち主、道了という者がいました。
お寺の完成後、1411年(応永18)に師の了庵が亡くなると、道了は
お寺を永久に守護するため、5つの誓願を唱えて両肩に翼を生やし、
身を天狗の姿に変じて、空中に舞い上がったという。

そして右手に降魔の輪杖を持ち、左手に縛魔の剛縄を握って明星ヶ
岳(924m)に飛び立ったという伝説があります。なるほど、境内
には仁王のかわりに大天狗・小天狗が建ち、赤い天狗のげたがたく
さんならんでいます。

バス停名はこの天狗の名。地元の人は、道了尊(サン)と呼び、大
雄山駅構内にも「道了薩た」の石碑を建てて親しんでいます。

しかし明星ヶ岳山頂には道了天狗の石碑はなく、あるのは木曽御嶽
大神の石碑と祠だけ。われら天狗愛好者にとっては寂しい限りです。

▼【データ】
【所在地】
・神奈川県南足柄市大雄町。伊豆箱根鉄道大雄山線大雄山駅からバ
ス、道了尊から10分で大雄山最乗寺(曹洞宗)奥之院。地形図に奥
之院と記載あり。奥之院より北東方向308mに最乗寺本堂がある。

【ご利益】
・【大雄山最乗寺】:諸願成就

【位置】
・最乗寺奥之院:北緯35度18分1.23秒、東経139度04分23.5秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「関本(横須賀)」

【参考】
・「天狗の研究」知切光歳(大陸書房)1975年(昭和50)
・「図聚天狗列伝・東日本編」知切光歳(三樹書房)1977年(昭和5
2)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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