山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼118号「丹沢・大室山山麓道志村大群神社」

【概略】
もともと神とは雄大な自然そのものを敬うことにあったといいま
す。そんな古い形をいまに残しているのが道志村にある大室神社。
大室山をご神体とし、雨屋本殿をきらう神だそうで、いまでも社は
白木の建木だけで建物や屋根がありません。そこに埋め込んだ神鏡
は雨ざらしになっています。この神鏡の裏側は建て替えの時、宮大
工だけが見ることが許されるといいます。
・山梨県道志村大室指

▼118号「丹沢・大室山山麓道志村大群神社」

かつて人々は、人知を越えた自然の現象を恐れ、神を感じ敬いまし
た。天に届くような高山が地震のために揺れ動き巨岩が砕け、大木
がへし折れ、土砂で押し流されるとき、人々は山そのものを神と感
じるのは当然です。

その神意を感じる山が望めることができる場所を神域とし、神聖な
礼拝場所に定めました。このようにもともと神を敬うとは雄大な自
然そのものを敬うことにあったようです。

そんな古い形をいまに残しているのがここ丹沢も裏丹沢に接してい
る山梨県道志村にある大群(おおむれ)神社です。

この神社は丹沢の大室山(大群山とも書く・標高1587.60m)をご
神体とし、イニシエより雨屋本殿をきらう神として伝えられ、いま
でも社は白木の建木だけで屋根がなく、そこに埋め込んだ神鏡は雨
ざらしです。

1月。この間降った雪が農家の屋根に積もり、大きなツララがたれ
下がっています。白木の建木は最近建て替えたらしく枠組みが新し
くなっています。

この神鏡の裏側には何か意味あるものがあるらしく、建て替えの時、
宮大工だけが裏面を見ることが許されるといわれています。新しい
白い枠組みと青くさびた銅の神鏡がやけに不釣り合いです。

かつては大室山頂にも「大牟礼(おおむれ)山大権現」という石碑
もまつってあったそうですが1847年(弘化4)の甲州相州国境争
いのとき、神官が石碑を担ぎおろしたため(「道志七里」)いまはあ
りません。

▼【データ】
【所在地】
・山梨県道志村大室指。富士急行都留市駅からバス、大室指停留所
下車、さらに歩いて15分で大群神社。地形図には大室指集落名の
み記載あり。

【位置】
・大群神社:北緯35度31分59.47秒、東経139度04分23.15秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「大室山(東京) 」(国土地理院「地図閲覧
サービス」から検索)

【参考文献】
・「角川日本地名大辞典14・神奈川県」伊倉退蔵ほか編(角川書店)
1984年(昭和59)
・「コンサイス日本山名辞典」(三省堂)1979年(昭和54)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「道志七里」伊藤堅吉(山梨県道志村役場)1953(昭和28)年
・「日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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