山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼108号 「埼玉・両神山の大頭羅神王」

【前文】
両神山の表参道に大頭羅神王という石像は右手に剣を持ち、髪の毛
のなかにはもう一つの顔が異様な形をしています。これは木曾の御嶽
山の八海山の大頭羅坊という天狗の分身。この山の信仰は御嶽山の
行者によって始まったものというから納得できます。
・埼玉県小鹿野町

▼108号 「埼玉・両神山の大頭羅神王」(詳細)

【本文】
埼玉県両神山(1723m) は、深田久弥の『日本百名山』にも取り上
げられる名山。飛鳥時代の役ノ行者(えんのぎょうじゃ)の開山と
され、かつては修験道の山として賑わいました。

その表参道、八海山(はっかいさん)とよばれる所に大頭羅神王(お
おずらしんのう)という石像があります。

右手に剣を持ち、髪の毛のなかにはもう一つの顔が異様な形で彫ら
れています。この山の信仰は木曽の御嶽山の行者によって始まった
ものという。

そういえば御嶽山の前衛の山の八海山、三笠山、阿留摩耶山(ある
まやさん)の名も地図の上に見うけられます。しかも、行者の唱え
る唱文のなかに「三笠山刀利天坊(とうりてんぼう)、八海山大頭
羅坊、阿留摩耶山アルマヤ坊…」と御嶽山と同じ天狗の名がでてく
るという。

ならばこの大頭羅神王というのは、御嶽山の天狗の分身であるわけ
です。火炎に似た形をした髪の毛のなかの顔は両牙をむきだし、見
ようによっては不動さまのようにも見えます。

そういえば石像のすぐ上は弘法の清水という水場があり、なにやら
関連ありそうです。人の気配も感じない深山。耳にハルゼミの鳴き
声がしみるひとときでした。

▼【データ】
【山名】両神山(りょうかみさん)、八日見山(ようかみさん)、竜
神山(りゅうかみさん)、竜頭山(りょうかみさん)、鋸山、ヤオカ
ミサン。

【由来】両神説:伊弉諾尊(いざなぎのみこと)、伊弉冉尊(いざ
なぎのみこと)の両神。八日見説:日本武尊が八日間この山を見続
けた。竜頭(ヤオカミ)説:雨乞い(大蛇)、?(おかみ)神、高
オカミ神、闇オカミ神説。

【所在地】
・埼玉県秩父郡小鹿野町両神(旧秩父郡両神村)秩父鉄道三峰口駅
の北西14キロ。西武線秩父駅からバス・小鹿野乗り換え出原から
歩いて2時間で八海山大頭羅神王の石像。地形図になにも記載なし。

【位置】
・大頭羅神王石像:緯度経度:北緯36度1分24.67秒、東経138
度51分36.14秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」か
ら検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「両神山(長野)」(別の図葉名と重ならず)
(国土地理院「地図閲覧サービス」から検索)

▼【参考】
・『図聚天狗列伝・東日本編』知切光歳(三樹書房)1977年(昭和5
2)
・『天狗の研究』知切光歳(大陸書房)1975年(昭和50)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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