とよだ 時・山の伝承民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼102号 「上越・平標山の山ノ神」

【概略】
平標山小屋のわきの山ノ神は大変な美女です。はち切そうな豊満な
肉体で、祠の中から笑みを浮かべて流し目を送ってきます。平標山
から胸をときめかせての下山。そんな不謹慎な態度の罰か、突然の
雷と大雨。ずぶぬれでやっと物置小屋に逃げ込みました。その時大
雨にうたれていたマイヅルソウの白い小さな花を思い出します。
・群馬県利根郡みなかみ町と新潟県南魚沼郡湯沢町との境

▼102号 「上越・平標山の山ノ神」

【本文】

山ノ神というのはふつう、やきもち焼きで見にくいコワーイ女神だ
とされていますよね。だから山仕事に女性を入れるのはタブーとい
うことになっています。ところがですよ、谷川連峰平標山小屋の山
ノ神は大変な美女なんです。はち切れんばかりの豊満な肉体をあら
わに、祠の中から笑みを浮かべて流し目を送ってくれています。

ある年の7月、梅雨も明けて平標山(1984m)は炎天下。東方・谷
川岳方面へ続く縦走路にアカトンボが群れています。夕べ稜線の越
路避難小屋に泊まった登山者が「夜中すごい雷で、小屋がゆれ、は
らわたにまで響き渡った」とその時の恐怖を語りかけてきます。

平標山は文字通り平らな山。山名は山頂が平らで目立ち、その平ら
な上に新潟と群馬の県境の標識が建っているので「平標」だという
けどホントかいな。この名はおもに土樽方面の呼び方だという。

三国方面ではヤカイ沢の頭ともいっていますが、普通は仙ノ倉山を
含めて大源太山と呼んでいるそうです。また平標山と仙ノ倉山の間
の稜線部には、土の中の水分の凍結と融解が繰り返されてできた「構
造土」というものがあるそうです。

砂礫が粗・細粒に分かれて「条線土」、「階段土」、「亀甲土」を形
成しているという。とくに「条線土」が稜線に直角に交わり、南北
にみごと連なっています。

さて、平標小屋の山ノ神の流し目に胸をときめかせて下山にかかり
ます。そんな不謹慎な態度に罰がくだったか、途中で突然の雷と大
雨を喰らいました。全身ずぶぬれの目にあいながらやっと予約して
あったタクシーの待っている物置小屋の中に逃げ込み、着替えをし
ました。

あの時大雨にたたかれながら滑りやすい坂道を下る足元で咲いてい
たマイヅルソウの白い小さな花を思い出します。それにしてもあの
山の神さま、いまもご息災でしょうか。


▼【データ】
【山名】・山頂が平らで目立つので県境の目標になるため「平標」
の山。この名はおもに土樽方面の呼び方だという。三国方面ではヤ
カイ沢の頭ともいっていますが、普通は仙ノ倉山を含めて大源太山
と呼んでいるそうです。

平標山と仙ノ倉山の間の稜線部に、土中の水分の凍結と融解の繰り
返しでできた「構造土」がある。砂礫が粗・細粒に分かれて「条線
土」、「階段土」、「亀甲土」を形成。とくに「条線土」が稜線に直角
に交わるする南北にみごと連なる。苗場山の眺めがよい。北西に平
標池がある。

【所在地】
・群馬県利根郡みなかみ町(旧新治村)と新潟県南魚沼郡湯沢町と
の境。JR上越新幹線越後湯沢駅からバス、平標登山口下車、歩い
て3時間で平標山の家。地形図に平標山の家の記載あり。

【位置】
・緯度経度:北緯36度48分24.72秒、東経138度49分29.36秒(国
土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「三国峠(高田)」(国土地理院「地図閲覧
サービス」から検索)。

【山行】平標山
・第2日:1985年(昭和60)7月21日(日・晴れ):1985年(昭和6
0)7月20日(土)〜21日(日)「上野駅(22:43発越後湯沢行)・越後
湯沢駅・元橋・松手山・無人気象観測装置・平標山・平標小屋・林
道・平標(火打峠)・元橋バス停・越後湯沢駅」:東京野歩路会

【参考文献】
・「角川日本地名大辞典15・新潟県」田中圭一ほか篇(角川書店)
1989年(平成1)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成4)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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山旅イラスト【ひとり画通信】
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