山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼077号「奥多摩・臼杵山の石仏」

・【概略】
奥多摩戸倉三山・臼杵山(うすぎさん)は、養蚕の神臼杵神社をま
つる山です。かつて養蚕が盛んな時代、カイコを食べるネズミには
農家は大変な迷惑でした。そのネズミの天敵である猫は農家にとっ
て有り難い存在です。臼杵山の山の臼杵神社もお使いは猫。神社の
の狛犬は猫の石像になっています。しかし、その姿はどう見ても格
好の悪い犬かブタにしか見えません。でも風化したこま犬は祠の前
にデンと控えてカイコを守ってござります。
・東京都西多摩郡檜原村とあきる野市との境

▼077号「奥多摩・臼杵山の石仏」

カイコを食べにやってくるネズミは養蚕農家にとって、とてもやっ
かいなものです。そのにっくきネズ公を食ってくれる天敵の猫やヘ
ビは、農家にとっては有り難い存在。養蚕の神としてまつります。

ここ東京奥多摩・戸倉三山(臼杵山、市道山、刈寄山)の臼杵山の
臼杵神社も養蚕の神として祭祀されています。その狛犬は、猫の姿
の石像で、祠の前に控えているといいます。

戸倉三山の名は、このあたりが五日市町(現あきる野市)に合併さ
れる前は戸倉村だったので村の名からとったとのこと。

ある年の2月。きょうは青梅マラソンの日。きのう降ったばかりの
雪がひざくらいまであり、その中に臼杵権現の石祠がポツンとたっ
ています。積もった雪の上に杉の木の葉が散らばっています。

「ネコってこれ?」。変わった形とは聞いていましたが、ナルホド、
ナルホド。猫というよりは、どう見ても格好の悪い犬かブタです。
しかしこれでもりっぱな蚕神さまなのであります。ハイカーはこれ
もご愛敬と笑って拝んでいきます。

帰り、つい人のあとをついて行き、雪の中道に迷ってしまいました。
子供づれの私たちはほかの人たちに着いていけず、月の出た夜道を
懐中電灯を頼りにトボ、トボ。盆堀地区についたのは午後8時半に
なってしまったことがありました。

あきる野市五日市地区は、山地の炭や木材の集散地。とくにスギが
多くいまも青梅(おうめ)林業地域の一部になっています。また地
区のなかを流れる秋川沿いには桑畑が多く、機織りものの産地にな
っています。

美しい自然にも恵まれ、日帰り観光地として1969年(昭和44)、
当時の五日市町は全国にもまれな「清浄都市宣言」を行い、自然環
境の保存を呼びかけました。

▼【データ】
【山名】・臼木は浅木で樹木が少ないところ。臼や杵を産出すると
もいう(「日本山岳ルーツ大辞典」)。臼淵伝説がある。

【所在地】
・東京都西多摩郡檜原村とあきる野市との境。JR五日市線武蔵五
日市駅からバス、元郷停留所下車、さらに歩いて1時間30分で臼
杵山。三等三角点(842.1m)がある。地形図に山名と三角点標高8
42.1。その北側に鳥居のマーク記載あり。

【地図】
・2万5千分の1地形図「五日市(東京)」(国土地理院「地図閲覧
サービス」から検索)。5万分の1地形図「東京−五日市」(「電子
国土ポータルWebシステム」から検索)

【参考文献】
・「角川日本地名大辞典13・東京都」北原進(角川書店)1978年(昭
和53年)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)

……………………………………

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

………………………………………………………………………………………………
山旅イラスト【ひとり画展通信】
題名一覧へ戻る