とよだ 時・山の伝承民俗画
山旅イラスト【ひとり画通信】(ひとり画展)

▼062号「朝日連峰大鳥池タキタロウ」

・【概略】
数万年前、まわりの山の大崩壊でせき止められて出来たとされ、他
の生物と遮断されてしまったという大鳥池。ここには「タキタロウ」
と呼ばれる幻の魚がすむといい、地元ではちょっとした話題の湖。
大鳥集落の旅館には「タキタロウまんじゅう」が出現していた。

・【本文】

東北山形県、朝日連峰北部以東岳(いとうだけ)直下に大鳥池とい
う幽閉な池があります。ここは標高966mのところにあり、湖面の
長経・南北約1km、深さ68m、湖岸線延長3.2km、湖表面積0.4km。
昭和の初めまでは道らしい道もなく人もめったに入らず、またいま
でも交通が不便なため登山者か釣人しか訪れないという。

ここも女人禁制で、女人が禁を破り大鳥池方面へ入山すると、天候
の急変が起こり災害をもたらすなどの言い伝えがあったという。大
鳥池にはヌシがいて、それは99の頭を持つ竜神だとも、また巨大
なタキタロウともいわれていて、その住処は近くの三角池(みすま
池)だとされています。

タキタロウは漢字では瀧太郎とか竹太郎とも書くそうです。その名
は、瀧太郎という人が発見したという説と、瀧のヌシからきたとす
る説がありますがはっきりしません。

村人の間では、この魚は、口が三つ口で兎に似ているとか、尾びれ
が大きく農具の箕のようであったとか、下あごがめくれ上がってい
るとかいわれています。

この魚はここに放流したヒメマスの大きくなったものだともいう人
もいますが、地元の人はタキタロウは、ヒメマスを放流した明治末
期以前からいたといい張ります。小学生は「オレたちのタキタロウ、
絶対出てくるな」と作文に書いています。

この大鳥池は、数万年前にまわりの山々の大崩壊で谷がせき止めら
れて出来たとされる湖(山形高等学校(現山形大学)教授、故 安
斉徹氏)だとされています。それ以来、他の生物と遮断されてしま
い、以来独立した生態系がつづいてきたという。

大鳥池ではじめて調査が行われたのは1926年(大正15)。1934年
(昭和9)には、潅漑用水利用のため、大鳥池排水口に3mのかさ
あげをし、コンクリートでの制水門を建設(いまの登山道はこの工
事のために作られたものを利用)。

1982年(昭和57年)7月に行われた地元山形県朝日町主催の「以
東岳登山」で、当時の旅館「朝日屋」館主が以東岳直登尾根から、
タキタロウらしき巨大魚(複数)を目撃したという。これを受けて
朝日町は大鳥池調査団を結成組織。調査の結果、得体の知れない大
きな魚を一匹捕獲。大鳥池には巨大魚がいることが確認されました。
この巨大魚は、朝日村の開発センターに展示してあるそうです。

捕獲した巨大魚を解剖してみるとイワナを3匹も飲み込んでいたと
うのです。巨大魚は魚を餌にしていたのです。巨大魚は学問的な分
類では、既知のイワナ、アメマス(エゾイワナ)、ヒメマス、イト
ウなどが巨大化したものとする説もありますが、これらには入らな
い別種の魚ということを主張する地元の人が多い。

結果をまとめた「大鳥池調査報告書」でも、タキタロウは体長約2
m、アメマス系のニッコウイワナ、あるいはオショロコマにちかい
エゾイワナではないかという程度。アメマス系は「陸封型」と「降
海型」があり、体長が40センチ以上になるには海の中で生長する必
要があるいう。

それならばここ大鳥池は淡水でも海と同じ役割を果たしているので
しょうか。「大鳥池調査報告書」は、必要があれば保護・増殖をは
かっていく。当初の目的どおり、大鳥池の生態系を守るため、今後
とも関係機関の協力を得ながら調査を継続していきたいという。

ある年の8月の初め朝日連峰を縦走、以東岳から大鳥池に下山。池
は以外に大きく、湖面にひっそりとさざ波がただよい神秘さを増し
ています。裸になり、シャツを乾かしながら、大休憩。

もしかしたらと湖面にタキタロウの姿を探します。いまはキャンプ
場もあり、泡滝ダムまでマイクロバスも入ります。あくまでも静か
な湖水をバックに写真をとり大鳥池をあとにします。

「何匹ものタキタロウが泳ぐ姿は雄大。10数mもの水面が動いた。
たしかにこの目で見たんだ」。途中まで迎えに来て戴いた旅館のご
主人(タキタロウ目撃者ご本人)が、マイクロバスの運転しながら
胸を張っていました。バスの着いた大鳥集落には小学生のタキタロ
ウーのポスターがズラリ。そばの旅館には「タキタロウまんじゅう」
が出現していました。

▼大鳥池【データ】
【所在地】
・山形県鶴岡市旧朝日各地区名(旧東田川郡朝日村)。JR羽越本
線酒田駅からバス大鳥終点、5時間45分で大鳥池。地形図に大鳥池
の文字と北側に大鳥小屋の記載あり。

【位置】
・大鳥池:北緯38度21分45.34秒、東経139度49分43.99秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「大鳥池(村上)」

【山行】
・1984年(昭和59)8月2日(水・晴れ)

【参考】
・「角川日本地名大辞典6・山形県」誉田慶恩ほか編(角川書店)1
981年(昭和56)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・朝日旅館HP:http://www.takitaro.co.jp/densetsu/index.html
・「日本歴史地名大系6・山形の地名」(平凡社)1990年(平成2)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16))

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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