とよだ 時・山の伝承民俗画
山旅イラスト【ひとり画通信】(ひとり画展)

▼051号「東北・飯豊山草履塚の姥ごん」

飯豊山も昔は女人禁制。その昔、羽前の国小松出身のある姥が禁を
破ってここまで来たが神の怒りにふれ、むなしく石にされたという
伝説の石仏。細長い葉が茂った囲いの中で姥権はハンカチやタオル
をまく。うつむいた顔が風化してものすごい表情に見えました。
【本文】は下記にあります。

▼051号「東北・飯豊山草履塚の姥ごん」

【本文】
雄大に連なる飯豊(いいで)連峰の数ある峰々の中で、主峰とされ
る飯豊山(いいでさん・2105m)は、単に「お山」とも呼ばれ、大
昔から修験道の聖地として信仰されてきました。

飯豊本山(いいでほんざん)・飯出山・四季山などの異名がありま
す。飯豊山の名は、この山の西斜面、新潟県北蒲原郡内に温泉があ
り「湯出・ゆいで」に由来しているといいます。

また山が飯を盛ったような形だからとの説(「会津正統記」(652年)
もあります)。さらに夏に登ると万年雪やお花畑があり、風は秋を
思わせるように冷たいので信者たちは四季山といったといいます。

その他、『陸奥国風土記』逸文(原文がほとんどなくなって世に一
部分しか伝わっていない文章)の「飯豊山」には、此(こ)の山は、
豊岡姫命(とよおかひめのこと)の忌庭(ゆには)なり。

又、飯豊青尊(いひとよあをのみこと)、物部臣(もののべのおみ)
をして、御幣(みてぐら)を奉(たてまつ)らしめたまひき。故(か
れ)、山の名と為(な)す。

古翁(ふるおきな)の曰(い)へらく、昔、巻向(まきむく)の珠
城(たまき)の宮に御宇(あめのしたしろ)しめしし天皇(すめら
みこと)の二十七年、戊午(つちのえうま)のとし、秋(とし)飢
餓(う)ゑて、人民(たみ)多(おほ)く亡(う)せき。

故(かれ)、宇恵々山(うゑゑやま)と云(い)ひき。後、名を改
めて豊田(とよだ)と云(い)ひ、又飯豊(いひとよ)と云ふ(大
善院舊記)との一文も見えます。


そこから豊岡姫命・飯豊青尊に由来する説もあるようです。飯豊山
は、山形県と新潟県境にありながら、山頂一帯だけは福島県山都町
の一部という飛び地になっている奇妙な境界線です。

ここは古くからの飯豊神社信仰の山。山頂の飯豊神社の福島県里宮
本殿は山都町一ノ木にあります。そのため人々は昔から里宮のある
福島県側から奥ノ院へ登っていたため、三国岳から飯豊本山、御西
岳先までの約8キロは幅の狭い稜線づたいの細い登山道は福島県の
領域になっているのだそうです。

飯豊山山頂から東南に下って約1時間、草履(ぞうり)塚というピ
ークがあります。かつては剱神社と草履小屋があったところだそう
で、お山の飯豊神社にお参りに来た人は、ここで草履をはきかえて
から出発したという。

7月末、ギラギラと真夏の太陽が照りつけます。まだ8時だという
のにもう汗だくです。登山道の突然の下り、降りついた所に妙な石
仏があります。

その昔、羽前の国小松(いまの山形県東置賜郡川西町)出身のある
老女が飯豊山に登りたい一念で女人禁制を犯して、ここまでやって
来ましたが、神の怒りにふれてむなしく石にされたという伝説があ
る姥権(うばごん)です。

かつては女性が信仰の山に登ることは神を冒する行為とされ、女人
禁制の山が多くありました。それでも勇気ある「おてんば」が禁を
犯して山に入り、神罰にあたったという話はよく耳にします。

細長い葉の茂った草が繁茂する石垣の中に風化した石像が体を布に
まかれすごい形相をしています。姥権はハンカチやタオルをまき、
うつむいた顔が異様な姿だけに無念さが伝わる石像でした。

▼【データ】
【山名】飯豊山(いいでさん)・飯豊本山(いいでほんざん)・飯出
山・四季山。西斜面の新潟県北蒲原郡内に温泉があり「湯出・ゆい
で」に由来。また山容が飯を盛ったような形に由来(652年「会津
正統記」)。また「陸奥国風土記」逸文にある飯豊山のように豊岡姫
命・飯豊青尊に由来するなどの説がある。四季山:夏に登ると万年
雪やお花畑があり、さらに風は秋を思わせるように冷たいので信者
たちは四季山といった。

【所在地】
・福島県喜多方市山都町(旧耶麻郡山都町)磐越西線山都駅の北25
キロ。JR磐越西線山都駅かタクシー・川入りからのべ7時間30分
で姥権。地形図に姥ノ前と記載あり。

【位置】
・姥権:【緯度経度】北緯37度50分37.94秒、東経139度43分8.86秒
(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「飯豊山(新潟)」(別の図葉名と重ならず)
(国土地理院「地図閲覧サービス」から検索)

【山行】
・第3日:1985年(昭和60)7月30日(火・晴れ)東北飯豊山姥権
探訪:1985年(昭和60)7月28日(日)〜8月1日(木)「山都駅・川
入・三国小屋・切合小屋・草履塚・姥権・飯豊山頂・御西・烏帽子
岳・梅花皮(かいらぎ)岳・門内岳・地神山・鉾立峰・えぶりさし
岳(?差岳)・大熊小屋・セガイ沢・大石・越後下関駅】:「飯豊連
峰縦走(川入・三国岳〜えぶり差岳・越後下関駅)」東京野歩路会

【参考】
・「飯豊山の修験道」中地茂男(「山岳宗教史研究叢書・7」(名著
出版)1977年(昭和52)所収)
・「角川日本地名大辞典7・福島県」小林清治ほか編(角川書店)1
981年(昭和56)
・「角川日本地名大辞典6・山形県」誉田慶恩ほか編(角川書店)1
981年(昭和56)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「新編会津風土記」(巻之二十五〜巻之五十):大日本地誌大系・
第31「新会津風土記2」(雄山閣)1932年(昭和7)
・「東北の山岳信仰」岩崎敏夫(岩崎美術社)1996年(平成8)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・『日本歴史地名大系6・山形の地名』(平凡社)1990年(平成2)
・「日本歴史地名大系7・福島県の地名」(平凡社)1993年(平成5)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
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