とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼050号「南ア・大沢岳百間洞山ノ家の病人」

【前文】
南アルプスの中心部百間洞山の家。朝、小屋のオヤジが頭をかかえ
ています。客に腎臓の発作の人がいて、そ寝たままというのです。
ヘリを頼むかというと首を振ります。結局6時間余かけてタクシー
が入る林道終点まで歩いていったとあとで聞きました。

▼050号「南ア・大沢岳百間洞山ノ家の病人」

南アルプスの赤石岳(3020m・長野、静岡県境)と聖(ひじり)岳
(3013m・同じ県境)の間にある百間洞(ひゃっけんぼら)山の家
という山小屋があります。

ここは静岡県大井川からつづく赤石沢の支流百間洞源頭。以前の小
屋は古く、かべ板がはずれており泊まると夜風が寝ている顔に吹き
つけ、外にいるのか中にいるのかわからないというものすごさ。

百間洞山の家は、登山家井深勉(1945年(昭和20)に小渋川で遭難
死)の情熱によって、1939年(昭和14)三信鉄道が努力の末建設し
たものという。

その後改築されて、いまは長野県飯田市が管理しているそうです。
赤石沢には、血紅色をしたラディオラリヤ板岩が露出するというの
で赤石沢と名づけ、その後そこにある山の沢の名をとって赤石岳と
呼んだという。

ここを登山口の椹島から3泊しながら遡行してきたつわものと出合
い驚かされました。小屋の外で夕食の支度。さすがに夕方になると
冷えはじめ、防寒具を着けはじめます。

夕食後、小屋のオヤジとアルコールを飲みながら話がはずみます。
これが無類の酒好きで、飲み残したウイスキーはこのびんに入れて
くれという。

泊まった登山者がそれぞれ飲み残しを入れるので、びんの中はいろ
いろな酒が交っているよと笑います。翌朝、オヤジが神妙な顔をし
ています。

小屋に腎臓の発作がおきて、寝たままの登山者がいるという。「100
万円かかるけど、ヘリコプター頼もうか」というと、少したつとよ
くなると病人は伏せたまま首を横に振ります。

小屋のオヤジもついに頭をかかえますが、先を急ぐ登山客、次つぎ
に出発していきます。結局、車を林道の入れる所まで来るよう無線
で要請、杖をつきながら歩いて下りたとあとで聞きました。ちなみ
に地図で調べてみたら林道終点まで6時間とありました。

▼【データ】
【山名】・百間洞山の家は、1945年(昭和20)に小渋川で遭難死し
た登山家井深勉の情熱によって、1939年(昭和14)三信鉄道が困
難の末建設したもの。その後改築され長野県飯田市上村(旧下伊那
郡上村)が管理している。

【所在地】
・長野県飯田市上村(旧下伊那郡上村)と静岡県静岡市との境。当
時、大井川鉄道井川駅からバス畑薙第一ダム、畑薙大吊り橋、聖岳
経由歩いて延べ20時間で百間洞山の家。飯田線飯田駅の東南東28
キロ。地形図に百間洞山の家の文字記載。

【位置】
・百間洞山ノ家:】北緯35度26分52.32秒、東経138度07分38.93秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「大沢岳(甲府)」or「赤石岳(甲府)」(2
図葉名と重なる)

【山行】南ア縦走
・第3日:1984年(昭和59)8月13日(月・晴れ)南ア百間洞山の
家探訪:1984年(昭和59)8月11日(土)〜8月15日(水)「南ア・椹
島・荒川三山・荒川岳・赤石岳・聖岳縦走」:東京野歩路会

【参考】
・『信州山岳百科・2』(信濃毎日新聞社)1983年(昭和58)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
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