とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼029号「山梨県大菩薩峠・丸川峠の地蔵」

大菩薩峠付近の丸川峠小屋に石の地蔵がひとつ鎮座しています。昔、
荒くれ者が坊さんを殺したたたりで疫病が大流行。村人は地蔵をつ
くり供養したという。3月、丸川峠の夜は星がまばゆい。流れるよ
うに動く星。人工衛星を見たのはこの時がはじめてでした。
・山梨県塩山市とと丹波山村

▼029号「山梨県大菩薩峠・丸川峠の地蔵」

【本文】
山梨県大菩薩峠の北西にある丸川峠の山小屋の主人は、木彫りが得
意で小屋の中にはいろいろなものが所せましとならんでいます。そ
の中に混じって石の地蔵がひとつ鎮座しておわします。

昔、丸川峠の近く、黒川鶏冠山直下・武田信玄の黒川金山で働いて
いた荒くれ者が、その乱暴をさとして説教してくれる坊さんをうる
さがって殺してしまったという。

そのたたりのせいか、ふもとの村々に疫病が大流行したという。困
った村人は、地蔵をつくり、ねんごろに供養したら病気はピタリと
やんだといいます。

それを聞いた山麓登山口である裂石(さけいし)集落のある人がそ
の地蔵が欲しくなりある夜、こっそり盗みだしてしまったそうです。
ところが柳沢峠までくると、背中の地蔵が急に重くなりどうしても
先に進めません。

にっちもさっちも行かなくなったドロボー、地蔵を放り出して逃げ
たという伝説があります。

3月、丸川峠の夜は星がまばゆく光っています。小屋の外に出て眺
めていると、流れるようにゆっくりと動く星が目に入りました。人
工衛星です。肉眼で人工衛星を見たのはこの時がはじめてでした。

【後日談】それからン十年。ある初秋に訪れた丸川峠は、小屋のま
わりのお花畑に入らないようにと登山道に綱が張られ、高山植物を
植え直してありました。立て札によると、ラーメンなどの汁や放尿
によるためだという。

小屋裏の広場に見覚えのある大きな木彫りの地蔵さまが、大分風化
して痛々しげながらご無事でした。水場への道も変わっていてしば
らくウロウロしました。

▼【データ】
【所在地】
・山梨県甲州市塩山(旧同県塩山市)と山梨県北都留郡丹波山村と
の境。中央線塩山駅の北東10キロ。JR塩山駅からバス裂石下車、
徒歩2時間20分で丸川峠。地形図に峠名の記載あり。

【位置】
・丸川峠:北緯35度45分18.17秒、東経138度49分44.26秒

【地図】
・2万5千分の1地形図柳沢峠(甲府)or「大菩薩峠(甲府)」(2図
葉名と重なる)

【山行】黒川鶏冠山・大菩薩峠
・第1日:1983年(昭和57)3月30日(火)大菩薩丸川峠探訪:19
83年(昭和57)3月30日(火)〜31日(水)「黒川鶏冠山・丸川峠
・大菩薩峠・介山荘・裂石・大菩薩峠」:ファミリー山行

【参考】
・『日本山岳ルーツ大辞典』村石利夫(竹書房)1997年(平成9)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅イラスト通信【ひとり画通信】
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