とよだ 時・山の伝承民俗画
山旅イラスト【ひとり画通信】(ひとり画展)

▼024号「安達太良山山頂のホコラ」

【前文】
高村光太郎の「智恵子抄」でも名高い山。アダタラとは「安達郡一
・太郎山」、また「製鉄のタタラ」との説があります。特徴あるそ
のピークには安達太良神社のホコラがまつられ薬師岳の薬師如来と
共に岳温泉の御神体になっています。

▼024号「安達太良山山頂のホコラ」

【本文】
福島県の安達太良山(1700m)は、その形から別名乳首山とも呼ばれ
ています。アダタラとは「安達郡一番の山・太郎山」の意味、また
「製鉄のタタラ」、「アイヌ語の乳の意味のアタタ」からきたなどの
由来説があるがはっきりしないという。

安達太良といえば、南側から和尚山、安達太良山、鉄山、箕輪山、
鬼面山と続く連山のこと。そのなかでいわゆる「乳首」と呼ばれる
ピークが、安達太良山の山頂です。

安達太良というと必ずで出てくるのが、高村光太郎の「智恵子抄」
が名高い。そして同じように、「万葉集」巻十四に「安達太良の嶺
に伏す鹿猪のありつつも……」のとうたわれています。それほど有
名であり、古くから親しまれた山であるというわけです。

その安達太良山も有史以後、1899〜1900年に沼ノ平火口から噴火
が続きました。特に1900年7月の大爆発は、火口の硫黄鉱山の従
業員83人中、死者72人、負傷者10人、不明1人というすさまじ
さ。鉱山は全滅。今でも福島地方気象台が、常時火山観測中という。

山頂には小さな石碑があり、かつては安達太良神社がまつられてい
たそうですが、1146年(久安2年・平安後半)にいまの福島県安
達郡本宮町に移したのだそうです。

祭神は、高皇産霊神(たかみむすびのかみ)、神皇産霊神(かんむ
すびのかみ)、飯豊和気神(いいでわけのかみ)、陽日湯泉神(よう
じつゆぜんのかみ・温泉の神)、大刀自神(おおとじのかみ)とい
う、日本最初からの神々などそうそうたるメンバーなのであります。

その後、ほかの皇霊二神を合祀し、安達太良明神(三社明神)と称
しているという。また山岳仏教での岳山駈けが行われ、山中には勢
至平、弥陀ヶ原、梵字石、僧悟台、薬師岳などの地名も残っていま
す。

山麓の大玉村の相応寺、安達町の円東寺は、ともに山号を安達太良
山といい、それぞれ寺の縁起にはかつて安達太良山中に寺域をもっ
ていたと書かれているそうです。

いまある山頂の石碑にまつられる陽日温泉神は、山腹の岳温泉の御
神体になっています。やはり温泉の神であるわけです。

ある年の4月、安達太良山は大吹雪に見舞われました。向かい風に
乗ったタクシーの前がフワッともち上がるほどです。やっとの思い
で奥岳温泉へ着きました。

当初宿泊予定のくろがね小屋までなんてトテモトテモの状態なので
す。急きょ宿泊をお願いした奥岳温泉の主人も「明日の結婚披露宴
がキャンセルされた」と大なげき。

しかし、翌日はカラッと上がった晴天に、エビノシッポを見ながら
ルンルン気分で登ります。山頂は360度の大展望。「あれが磐梯山、
あの光るのが猪苗代湖……」。なるほど近くに見えます。展望を楽
しんでの帰り、五葉松平の雪はもうぬかりはじめ、大きなフキノト
ウが大きな顔をして日光浴をしていました。

★【データ】
山名:安達太良山(あだたらやま・あだたらさん)

・【異名・由来】
異名:安達太郎山・乳首山(ちちくびやま)・岳山(だけやま)。
由来:安達郡一番の山・太郎山の意味。また「製鉄のタタラ」、「ア
イヌ語の乳の意味のアタタ」からきたなどの由来説がある。

・【所在地】
福島県二本松市、同県安達郡大玉村、同県郡山市と同県耶麻郡猪苗
代町との境。東北本線二本松駅の西14キロ。JR東北本線二本松
駅からバス、奥岳温泉から3時間で安達太良山。二等三角点(1699.6
m)がある。地形図に山名と三角点の標高の記載あり。

・【ご利益】
安達太良神社:豊穣をもたらす農業神

・【名山】
「日本百名山」(深田久弥選定):第21番選定(日本二百名山、日
本三百名山にも含まれる)
「新日本百名山」(岩崎元郎選定):第24番選定
「花の百名山」(田中澄江選定・1981年):第27番選定

・【位置】
三角点:北緯37度37分16.03秒、東経140度17分16.35秒

・【地図】
2万5千分の1地形図「安達太良山(福島)」。5万分の1地形図「福
島−二本松 」

・【山行】
第2日目:1983年(昭和57)4月11日(日・快晴)福島安達太良山
探訪:1983年(昭和57)4月10日(土)〜11日(日)「二本松駅・
奥岳温泉安達太良山・二本松駅・上野駅」:東京野歩路会

・【参考】
「角川日本地名大辞典7・福島県」小林清治ほか編(角川書店)19
81年(昭和56)
「日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
「日本歴史地名大系7・福島県の地名」(平凡社)1993年(平成5)
「霊山・安達太良山とその信仰」梅宮茂:「山岳宗教史研究叢書7」
1977年(昭和52)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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