山の伝承伝説に遊ぶ
山旅通信
【ひとり画ってん】とよだ 時

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▼018号「丹沢・夜の大倉尾根の富士山」

【略文】
夜中に登り山頂で日の出を見て縦走するカモシカ山行。懐中電灯
を頼りの大倉尾根。秦野の夜景が美しい。塔ノ岳の山頂を前にし
たころ左手の空中に電灯の光の列。富士登山の照明と懐中電灯の
光です。まるで「百鬼夜行」の行列を見ているようでした。

▼018号「丹沢・夜の大倉尾根の富士山」

【本文】
神奈川県秦野市と比較的首都圏に近く、また老若男女が気軽に登
れるのでいつもにぎやかな塔ノ岳(1491m)。昔この山の西側の斜
面にお塔と呼ばれる高さ18mもの大岩があったといいます。

岩の形が坊さんがお勤めをしているようだったので、村人があり
がたがり、信仰の対象になったという。お搭には拘留尊仏(くる
そんぶつ)をまつり、雨乞いの神になっていましたが、関東大震
災の翌年に起きた地震で、北西側の大金沢の谷底に音をたててこ
ろがり落ちたという。

山の名はこの「塔」からきているといいます。夜中に登山口を登
りはじめ、山頂で日の出を見て、そのまま縦走するのを「カモシ
カ山行」といっています。

最近はやる人も少なくなりましたが、山岳会のカモシカ山行に参
加してみました。

7月のある夜、懐中電灯を頼りに大倉尾根を登りはじめました。
秦野の夜景が美しい。時計も12時をまわり、次の日に入りまし
た。塔ノ岳の山頂を前にしたころ、左手の空中に電灯の光のよう
な列が浮かんでいます。

富士山に夜中に登る人のための照明と懐中電灯の光です。まあ、
この世間が寝静まっているときに……。まるで「百鬼夜行」の行
列を見ているようだといった後で、自分たちは何だと笑いあいま
した。

▼【データ】
【所在地】
・神奈川県秦野市堀山下集落大倉地区大倉尾根。小田急渋沢駅から
バス15分で大倉尾根登山口から歩いて2時間40分で富士山見晴
らし

【位置】
・富士山見晴らし:北緯35度26分32.28秒、東経139度09分44.88秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「大山(東京)」

【参考】
・「日本歴史地名大系・神奈川県」(平凡社)1990年(平成2)
・「角川日本地名大辞典14・神奈川県」伊倉退蔵ほか編(角川書店)
1984年(昭和59)

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山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅通信【ひとり画展】
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