山の伝承伝説に遊ぶ
山旅通信
【ひとり画ってん】とよだ 時

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▼013号「房総・安房高山の野猿」

【序文】
かつて房総半島を鋸山から尾根づたいに太平洋側まで縦走するこ
とができました。その途中、安房高山で野猿の群れに紛れ込んだこ
とがありました。それから数年後、林道が造成済み。崖はセメントが
吹き付けられ、網の目のように造成されていく車道林道。あの子猿
たちはどうなったのでしょうか。

▼013号「房総・安房高山の野猿」

【本文】
かつては、房総半島を東京湾側鋸南町の鋸山から出発、東に向かい
太平洋側勝浦市と天津小湊町との境「おせんころがし」まで尾根沿
いに縦走できました。

ちょっと古い話で恐縮ですが、ある年の暮れ、正月をこのヤブ山で
迎えようと出かけたことがありました。3日目、安房高山で野猿の
群れに出会いました。さすがボス猿は悠々たるもの。完全に無視さ
れました。

山頂には標識があり鴨川市方面が開けていました。それから数年後、
再び訪れたときには、愛宕神社の直下に、三島トンネル南側からの
林道が造成済み。

山肌が削られて10mもの崖になっています。以前来たとき稜線沿い
にあった石仏が新しい林道沿いに移してあります。安房高山山頂に
行く道は来る人はいないのか薮がひどく登れるものではありませ
ん。

仕方なく林道を歩いて行くと見覚えのある、しかし立派になった林
道に突き当たりました。崖はセメントが吹き付けられ、山頂からは
降りられなくなっています。振り返れば太陽は西に傾いています。

かつて野猿たちに出会ったのはあのあたりか。網の目のように造成
されていく房総の山々。あの子猿たちの将来が気になってなりませ
ん。

▼【データ】
【山名】
・安房高山(あわたかやま・あわんたやま)

【所在地】
・千葉県鴨川市 JR外房線安房鴨川駅から日東バス金束行き、釜
沼下車、2時間で安房高山。二等三角点(364.9m)がある。地形
図に標高364.9mの記載あり。

【位置】
・三角点:緯度 35°09分27.06秒、経度 140°01分12.81秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「鴨川(大多喜)」

【参考】
・「房総の山」(千葉県山岳連盟)1977年(昭和52)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)

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山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅通信【ひとり画展】
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