【全国の山・天狗のはなし】  

▼26:東京都の山

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▼01:高尾山の天狗・飯縄権現

【略文】
南北朝時代、偉いお坊さんが高尾山にやってきて、山中の滝で修行
をしていました。疲れてウトウトした時、夢の中にあらわれた飯縄
権現の像を本尊とし、修験道の道場にしたといいます。この飯縄権
現は長野県飯縄山の天狗・飯綱三郎の分家格。白狐に乗った荼吉尼
天の姿です。ところがこれが「女神」だというからややこしい。
・東京都八王子市

▼01:高尾山の天狗・飯縄権現」

【本文】
 有名な高尾山の天狗はくちばしのあるカラス天狗だという。高
尾山は東京都民の山、山頂に真言宗薬王院有喜寺があって、真言
宗の関東三山(成田山新勝寺、川崎平間寺)のひとつに数えられ
ています。

 この山は奈良時代、聖武天皇の勅願により行基菩薩がみずから
薬師如来を刻み、諸人救済のため高尾山上に仏像を安置、本尊と
して開山したのがはじまりということになっています。

 それから600年たった、南北朝時代の1376(永和2)年、沙門(し
ゃもん・出家して修行に仙念する人)俊源大徳(しゅんげんたい
とく)が再興のおり、修行に疲れ、仮眠している時、夢枕に神が
現れたという。

 神は俊源に向かって「余はアバラ(不動)明王である。長い間
世の中が多難で、諸々の魔怪が横行して世を騒がすので、雷を落
として降伏させるために奇瑞をあらわした。これを飯縄の神女と
いう。山に祭るように」といったと「若稽旧記」(1750・寛延3年)
に記載されているという(「図聚天狗列伝・東日本編」)。

 それによると、顔は人、トビのようなくちばしがあり、法衣を
着て背中に火炎を背負っていて、両肩に翼があり、右手に宝剣、
左手に索縄を持って、白狐にまたがった荼吉尼天(だきにてん)
の姿だったという。名前、姿からしてまさしく長野県飯縄山の天
狗・飯綱三郎の姿です。

 俊源は、その像をまつって本尊とし、修験道の道場としたとい
います。この飯綱三郎の姿は、ここ高尾山のほか、箱根の大雄山
最乗寺の道了尊、群馬の迦葉山、古峰ヶ原の天狗などはみなこの
姿です。これは飯縄系列の天狗とされ、飯綱三郎に代表されるよ
うに男の天狗です。しかし『若稽旧記』には確かに「これを飯縄
の神女という」とあります。それでは高尾山の天狗は女性という
ことになってしまいます。これは俊源大徳の聞き違いでしょうか。

このくちばしのある荼吉尼天姿の天狗が、鼻高天狗として(天狗
といえば鼻高天狗と勘違いされ)麓の駅に堂々と飾れられてしま
っているいま、これも永遠の謎になってしまうのでしょうか。

 ちなみに室町時代までは天狗といえばカラス天狗で、それもみ
にくい「ボッタガラス」の姿でした。室町時代末期、日本画家の
狩野元信が鞍馬山の天狗「鞍馬大僧正坊」をイメージし、いまま
でのトビのようなカラス天狗と違った「かっこいい」、鼻の高い山
伏姿の天狗を描き出しました。

 以来、各地の天狗信奉者が次々に、いままでの烏天狗からこの
大天狗の姿に乗り換えてしまいました。そんな中で飯縄系の山々
は昔の烏天狗のままでおしとおしています。

 しかしいま一般の人にとっては、天狗といえば赤ら顔の鼻の高
い、高下駄を履いた山伏姿をイメージします。そこで駅やお寺の
境内には鼻高天狗を置いてあります。それほど狩野元信の描いた
天狗姿は浸透してしまっているのですね。しかし、本尊は白狐に
乗った荼吉尼天姿をしています。



▼高尾山頂【データ】
【所在地】
・東京都八王子市。中央線高尾駅の南西4キロ。京王高尾線高尾
山口駅からケーブルカー・高尾山駅から歩いて45分で高尾山山頂。
・山頂に二等三角点(599.2m)とビジターセンター、レストラン
ハウス、やまびこ茶屋がある。・山頂直下に薬王院(有喜寺)があ
る。
・地形図に山名と三角点の標高と高尾ビジターセンターの文字の
記載あり。三角点より東方向486mに薬王院がある。

【ご利益】
・【薬王院(有喜寺)】:除災開運・招福・商売繁盛
【位置】
・二等三角点:北緯35度37分30.55秒、東経139度14分36.99秒
【三角点】
・点名:高尾山
【地図】
・2万5千分の1地形図「与瀬(東京)」or「八王子(東京)」(2図
葉名と重なる)

▼【参考文献】
・『山岳宗教史研究叢書8・日光山と関東の修験道』宮田登・宮本
袈裟雄(みやもとけさお)編(名著出版)1979年(昭和54)
・『新編武蔵風土記稿』(巻之102下・多磨郡之14之下・由井領):
「大日本地誌大系・11」:『新編武蔵風土記稿・5』蘆田伊人編集校
訂(雄山閣)昭和45(1970)年版
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『図聚天狗列伝・東日本編』知切光歳(三樹書房)1977年(昭和5
2)
・『天狗の研究』知切光歳(大陸書房)1975年(昭和50)
・『日本山岳ルーツ大辞典』村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成4)
・『日本歴史地名大系13・東京都の地名』児玉幸多ほか(平凡社)
2002年(平成14)

 

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