【全国の山・天狗のはなし】  

▼24:群馬県の山

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▼04:金洞山長清法印

【略文】
群馬県上信電鉄の終点、下仁田駅構内待合所には、天狗の面が掲げ
てある。これは妙義山の金洞山(中之岳)にすむというの天狗だと
いう。この天狗は山も崩れるような雷鳴大雨を一喝して止めたとい
う。その名前は長清法印天狗。父は小田原北条家の家臣だったとい
う。
・群馬県下仁田町

04:金洞山長清法印

【本文】
 JR高崎駅から下仁田駅間を走る上信電鉄は、まだ単線。この
鉄道は明治30年(1879)上野鉄道として全線開通、小坂鉄山の鉱
石や富岡製糸場の生糸などを輸送していました。

その終点、下仁田駅の構内待合所には、天狗の面が掲げてあって、
下に「魔除妙義山中之岳大天狗」という文字が書かれています。

下仁田町は、北部に日本三大奇勝の一つ妙義山を控え、その一峰
に金洞山(こんどうさん・中之岳)があり、中腹に中之岳神社が
建っています。

金洞山には昔から天狗(怪人)が住むといわれ、麓の農家のカキ
ノキから雲を足場に山中の住みかに帰っていったとか、山も崩れ
るような「雷鳴大雨」を一喝して止めたなどの不思議な伝承があ
ります。

その怪人の名は長清法印(せいちょうほういん)という天狗。長
清法印の父は小田原北条家の家臣で、戦場で討ち死にしたと伝え
ます。

長清はその仇をうつためこの山に籠もり修行をつづけ、ついに神
通力を得たと聞きます。その後、仇はうてましたが、目的が達成
したとたんふと浮き世の空しさを知ったという。

そして東京上野の寛永寺内元光寺に入り仏道を修め、再び妙義山
の金洞山に戻ってきたといいます。時は移り、文明ハイテクの世
の中になり、こんな子供だましのようなことははいつしか忘れら
れ、いまは構内で面だけが虚空を睨んでいます。




▼下仁田駅【データ】
【所在地】
・群馬県下仁田町。上信電鉄終着下仁田駅
【位置】
・下仁田駅:北緯36度12分37.84秒、東経138度47分12.00秒
【地図】
・2万5千分の1地形図「下仁田(長野)」

【参考文献】
『角川日本地名大辞典10・群馬県』井上定幸ほか編(角川書店)1988
年(昭和63)
・『図聚天狗列伝・東日本編』知切光歳(三樹書房)1977年(昭和52)
・『天狗の研究』知切光歳(大陸書房)1975年(昭和50)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・『妙義山』(歴史と信仰の山)(あさを社)1981年(昭和56)
・『名山の文化史』高橋千劔破(河出書房新社)2007年(平成19)

 

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【とよだ 時】 山と田園風物漫画
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 (主に画文著作で活動)
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山のはがき画の会

 

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