『新・丹沢山ものがたり』CD本(加筆版)
第18章「弘法山・八菅山・仏果山・三峰山周辺」

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▼12:大山三ツ峰

【本文】
 丹沢大山の北東に三峰山という山があります。三峰という山は、丹沢の
ほかにもありまぎらわしい。ここの三峰は、丹沢山から北東にのびる尾根
にある三ツ峰(丹沢三ツ峰)と区別するため、「大山三峰」と呼ばれていま
す。この山は、はっきりとしたピークが3つあるので、その名がありますが、
見る場所で数が変わって見え、ピークは全部で大小6,7峰からなってい
るようです。


 『新編相模国風土記稿』(巻之五十八)煤ケ谷村には、「〇三ッ峯、西
方に在、三山並び立り(2行:中央なるは登凡二里、左右なるは少低し)
頂きに三峰社ありしが廃して神木の樫樹(2行:廻り三圍)のみ残れり、八
菅山の修験回峯の行所なり(2行:此餘当村の山中所々に行所あり」とあ
ります。かつてはこの山も、愛甲郡愛川町八菅(はすげ)山の八菅修験の
行場として登られたそうです。


 八菅の集落では男子13歳になると、先達に導かれて登ったという。八
菅修験は、まず八菅山で数々の神事によって儀式を数日間行いました。
それからいよいよ登山になります。行場の数は三峰山を含め30ヶ所。三
峰山はその18番、19番、20番。回峰は7泊の修行であったという。とく
にこの山を越えて大山までは、厳しい山岳地帯だけに、「奥駆け」といわ
れました。


 奥駆けは、1番が「八菅山上」、2番が「幣山」、3番が「館山」、4番が
「平山」、4番「塩川滝」と、だんだん進んで大山三峰山になります。……
18番が「阿弥陀岳」(三峰山の北峰)。ここは風が強くあたるところから「風
吹山」とも呼んだという。19番が「妙法寺岳」(〃中央峰)、20番が「大日
岳」(〃南峰)、さらに進み……・28番明星岳、29番が「雨降山大山寺
本宮」、30番が「大山寺白山不動」で終わっています。


 このコースは八菅から中津川沿いに北上し、平山に出て塩川滝にいた
り、半原越えをして経ヶ岳・華厳山・高取山と南下して、丹沢の部落に降
りる。丹沢からまた北上し、煤ヶ谷の寺谷から西に谷太郎川に沿って進ん
でいくと、北の辺室山に登り、南に走って大山三峰を越え、さらに南下し
て大山の頂上にのぼり、現在の下社のところに下って終わっています。こ
の間、幣山の大日滝や塩川滝では、修験者一同、滝の水を浴びて修行
したという。


 『新編相模国風土記稿』に書かれている、「頂きに三峰社ありしが廃し
て……」について、『丹澤記』を著した吉田喜久治氏はこんなことを載せ
ています。「三ッ峰社は、もともと最高峰にはない。札樫(または札掛とも)
というのは、八菅修験回峰の際、樫の木の根もとに棄札したしたところ。


 その位置は太尾(坂)760mあたりから分かれて、主尾根に出て820
mのタワからちょっと登った840mの南端あたり。いまは樫の木の根っこ
しか残っていない。三峰社のあったのはそこらしい」としています。


 さらに「三峰社のあった「頂」はずっと離れた、カラ沢川の打越に近い
尾根の一角、(詳しくいえばフトオ坂を登りきって、水平にからもうとすると
ころから右に分かれ、尾根のタワに出て、三峰側をちょっと登ったところ。
石祠がある)八菅(はすげ)修験の札掛(札樫)の伝承のある樫の木(いま
は朽ち果てて根っこしか残っていない)の根元にまつられていたのであ
る」としています。三峰山は、八菅修験の18番、19番、20番の行所と
いうことになっていますが、いまはそれらしい跡はなにも残っていません。



▼大山三峰山【データ】
【所在地】
・神奈川県愛甲郡清川村。小田急小田原線鶴巻温泉駅の北北西10
キロ。小田急線本厚木駅からバス、煤ヶ谷下車。北峰・中央峰・南峰と三
つの峰がある。約3時間で山頂。標高:934.56m(南峰)。
【位置】
・北緯35度27分52.51秒、東経139度14分43.91秒
【地図】
・2万5千分の1地形図:大山。



▼【参考文献】
・『角川日本地名大辞典14・神奈川県』伊倉退蔵ほか編(角川書店)
1984年(昭和59)
・『神奈川県史』(各論編5・民俗)神奈川県企画調査部県史編集室(神
奈川県)1977年(昭和52)
・『かながわの山』植木知司(神奈川合同出版)1981年(昭和56)
・『山岳宗教史研究叢書8・日光山と関東の修験道』宮田登・宮本袈裟雄
(みやもとけさお)編(名著出版)1979年(昭和54)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『新編相模国風土記稿』(巻之五十八):大日本地誌大系21「新編相模
国風土記稿3」編集校訂・蘆田伊人(雄山閣)1980年(昭和55)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・『日本歴史地名大系14・神奈川県の地名』鈴木棠三ほか(平凡社)
1990年(平成2)

 

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