『新・丹沢山ものがたり』CD本(加筆版)
第17章「雨山・伊勢沢ノ頭・秦野峠・日影山・シダンゴ山・高松山」

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▼02檜岳・伊勢沢ノ頭・秦野峠

【本文】
 丹沢の鍋割山から西へ、茅ノ木棚沢ノ頭、雨山峠からさらに南西にの
びる尾根に檜岳・伊勢沢ノ頭・秦野峠とならんでいます。ここを檜岳山稜
と呼ぶそうです。この山稜の東側が足柄上郡松田町、西側が同郡山北
町の境です。


 松田町側では檜岳を「ひのきだっか」と呼ぶという。ダッカとは、たか
み、高所のことをいうそうで、ダッカに岳の字を当てたのだろうとのこと。


 南東側ふもとは松田町の寄(やどりき)集落。地名は、東山家入七ヶ村
が寄り合う会合が、木の下で行われたからその名があるという。ホントか
ね?なお、かつては「やどろぎ」と呼んでいましたが、いまは「やどりき」に
統一したという。


 檜岳の山頂は、細長い草原でまばらに潅木が生えている程度。東側
はスズタケが密生し、北西には潅木の点在した草地だとあります。ある参
考書には「檜の生い茂る山であったことによる山名」とありますが、この山
にはヒノキの原生林はないというというのですから、山の名はひと筋縄で
はいきません。


かつてここは樹林とヤブでどうにもならない尾根でしたが、登山道として
歩けるようになったのは、1955年(昭和30)の第10回国民体育大会登山
部門のコースの整備のおかげだという。


その南西にある山が伊勢沢ノ頭(1117m)です。西側に伊勢沢という沢が
突き上げおり、その源頭にあるピーク。名前の伊勢はあて字だという。
「イ」は石のイ、岩のイで、「セ」は瀬は(湍:せ。はやせ。急流のこと)だとし
ています。すなわち水流は早く急だけれども、水かさは浅く、そして石が
たくさんある所をいうらしい。


 これは難しい。これをイチイチ、『広辞苑』で調べながら…、いやスマホ
を使ったとしてもネットで調べながら歩くんでは、きょう中に里に降りられな
いゾ。


さてその南に秦野峠があります。いまは山北町玄倉集落から松田町の寄
集落間を林道が通っています。歩いていた昔も玄倉−寄集落を結ぶ交
易路でした。この峠はその集落間相互に嫁いでいく花嫁も越えていく「は
なじょろう」の道であったそうです。


 この峠も水害などで時々荒廃した所。いまある秦野峠林道は、25年の
歳月をかけて造成。1995年(平成7)に完成したそうです。なお玄倉で
は、寄集落を「前秦野」と呼んでいたこともあり、ここを秦野峠と呼ぶように
なったとのことです。南北朝時代、いまの山北町にあった南朝方の河村
氏の河村城のからめ手とされたところ。訪れる人は少なくなりましたが、歴
史の古い峠です。


 ある年の11月、ある社会人の山岳会の山行をさせてもらい、檜岳から
伊勢沢ノ頭経由秦野峠の沢沿いで野宿したことがありました。野宿とはも
し日帰りの山行でアクシデントに遭ったことを想定し、山中でテントなしで
一晩を過ごす練習です。


 当時、檜岳山頂にはベンチもあって気持ちよい広場になっています。
伊勢沢ノ頭も過ぎ、秦野峠から西へ直角に曲がって進むと、林道が目の
下にはいってきました。明るく開けたカヤトの原です。林道におります。


 ここが林道秦野峠地点。ここからは西からヘイソ沢、東から杉ノ沢が突
き上げています。早速水場が近くにあり一晩過ごすのに適したところを探
します。西側の山北側、ヘイソ沢源頭に陣取りました。持参した敷物の上
で重ね着したままごろ寝します。


 雨対策、風対策、寒さ対策などの装備は必修です。心細がる同行者
に「なに、あしたまで生きていればいいんだよ」といい聞かせ、一晩過ごし
ました。翌朝一同ともニコニコしながら起きてきました。きょうはシダンゴ山
を往復してから大野山に向かいました。


 途中、幾人ものハンターに出会いました。イノシシと鹿の駆除をするの
だという。「かわいそうじゃないの」。夕べ心細がっていた女性がハンター
に食ってかかっていました。元気でよかった。



▼檜岳【データ】
【所在地】
・神奈川県足柄上郡山北町と松田市との境。御殿場線山北駅の北13キ
ロ。小田急線新松田駅からバス。寄集落から雨山峠経由で檜岳。登山口
から5時間30分。
【位置】
・最高点:北緯35度25分53.13秒、東経139度6分7.17秒 
【地図】
・2万5千分の1地形図「中川(東京)」」



▼【参考文献】
・『角川日本地名大辞典14・神奈川県』伊倉退蔵ほか編(角川書店)1991
年(平成3)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『丹澤記』吉田喜久治(丘書房)1983年(昭和58)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)

 

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