『新・丹沢山ものがたり』CD本(加筆版)
第16章「大野山−神縄付近」

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▼01:大野山

神奈川県・丹沢山塊南部にある大野山(724m)はその名前の通り、
広々とした大きな草尾根です。頂上近くに県営牧場があり、全体が
なだらかで丹沢湖・畦ヶ丸・菰釣山など展望がよくききます。

この山は牧場と湖を結ぶなかなかの人気ハイキングコースです。そ
の山頂にまつられる祠は、竜集大権現という神さま。その石祠から
東に5分ほど下った肩に「イヌクビリ」と呼ばれる所があります。

イヌは犬。「ヤマイヌ」とか「オイヌ」とか呼ぶオオカミのこと。
クビリは「縊(くび)り」で首をくくってしめ殺すこと。つまり、
オオカミをくびり殺した場所の意味だそうです。


昔、このあたりにオオカミが出没し、ついに通行人を襲い、かみ殺
すしまつ。村人は山仕事にもいけません。そこで大野某という人が、
ひそかにワナをしかけ、ついに「くびって」退治したといいます。

その子孫がふもとの深沢地区の大野さんというお宅。いまでもその
オオカミの頭がい骨を「魔除け」として大切に保存しているそうで
す。


1957(昭和32)年に専門家が鑑定。その結果ニホンオオカミの骨で
あることが証明されたそうです。頂上の休憩所ではノラ猫が食べ物
をねだって頭を地面にこすりつけています。

牛の引越しに出会い、にぎやかな行列の後について歩いたりしまし
た。犬クビリはいまは単なる踏み歩かれた北に延びる林道の一角。
昔日の面影はなく明るい日の光に照らされていました。


▼【データ】
【所在地】
・神奈川県山北町。JR御殿場線谷峨駅から2時間で大野山。三等
三角点(723.1m)と竜集大権現の祠がある。地形図に山名と三角
点の標高と大野山乳牛育成牧場の文字の記載あり。

【位置】
・三角点:北緯35度23分9.52秒、東経139度02分55.45秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「山北(東京」


▼【参考】
・「尊仏2号」栗原祥・山田邦昭ほか(さがみの会)1989年(平成
1)

▼01:大野山(終わり)

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