『新・丹沢山ものがたり』CD本(加筆版)
第12章「大笄・小笄−加入道山」

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▼09:オオバコと加入道山

【略文】
もともと神とは雄大な自然そのものを敬うことにあったといいます。そんな
古い形をいまに残しているのが道志村にある大室神社。大室山をご神体
とし、雨屋本殿をきらう神だそうで、いまでも社は白木の建木だけで建物
や屋根がありません。そこに埋め込んだ神鏡は雨ざらしになっています。
この神鏡の裏側は建て替えの時、宮大工だけが見ることが許されるとい
います。
・山梨県道志村

▼09:オオバコと加入道山

【本文】
 加入道山(かにゅうどうやま)は、静かな山はブナの原生林にお
おわれ、山項わきに避難小屋があります。丹沢の北側にあり、いま
はバスの便も良くなり日帰りもできますが、以前は山梨県道志側か
らでも1、2泊は必要だったところ。


 もう随分前のこと、大晦日にここに泊まりに行きました。ガスの
中、小屋に着いてみると2、3人の人がすでに泊まりに来ていまし
た。この年の押しつまった時に酔狂な人がいるものだと、自分を棚
にあげて驚いたことがあります。


 山名は、このあたりはシカが多く、鹿入道(かにゅうどう)と呼
んでいたものが、いつしか鹿の文字が加になったという説と、屋根
をふくカヤや牛馬のエサの草を刈る場所を、土地の言葉で「かにゅ
うどう」といい、加入道の字をあてたともいいます。


 また、道志村の古老の話では昔、この山に大入道が住んでいたと
も伝えます。こんなところにもオオバコが群生しています。オオバ
コは人について広がるという何とも人なつこい植物。オオバコは、
広くて大きいので大葉子。まさに名の由来は葉っぱにあります。


 この葉をあぶって、指先で軽くもむと表皮がふくれて、まるでカ
エルのたいこ腹のようになります。そのせいか、ゲェロッパなどカ
エルの葉を意味する方言がたくさんあります。


 オオバコの種子は水気を帯びると粘り気が出て、人の靴のうらや
昔の牛馬車について広がる植物。人間の踏み固めた道が適地で、そ
れが廃道になり、人が通らなくなると自然に消滅するというからな
んとも不思議な植物です。


 いまからン!十年前、夏山訓練を兼ねて白石峠下の水場のある休
憩所にテントを張りに行ったことがありました。翌日は篠突くよう
な大雨に、加入道避難小屋に逃げ込みました。


 2mはあろうかというヘビがオオバコの葉の中を通って茂みの中
に消えていきます。止みそうもない大雨に飛び出して下山。下着か
ら水分がしたたっています。途中で一風呂浴びて服は着替えたが、
財布のなかのお札までビッショリ。駅についても自動販売機が使え
ませんでした。
・オオバコ科オオバコ属の多年草



▼【データ】
【所在地】
・神奈川県山北町と山梨県道志村との境。中央本線梁川駅の南11キ
ロ。小田急線新松田駅からバス、西丹沢終点下車、歩いて3時間30
分で加入道山。三等三角点(1418.4m)と、近くに避難小屋があ
る。地形図上には山名と三角点記号とその標高のみ記載。三角点
より南方向直線約672mに白石峠があり、三角点より東方向直線約4
87mに馬場峠がある。
【位置】
・三等三角点:北緯35度30分35.26秒、東経139度2分46.31秒
【地図】
・2万5千分の1地形図「大室山(東京)」



▼【参考】
・『かながわの山』植木知司(神奈川合同出版)1981年(昭和56)

 

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