『新・丹沢山ものがたり』CD本(加筆版)
第11章「同角山稜・ユーシン・山神峠」

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▼01:同角山稜

【本文】
 同角山稜(どうかくさんりょう)は、丹沢主稜のひとつの峰である檜洞丸
から、南西に延びる石棚山稜から、テシロノ頭手前の分岐から左に分か
れて、同角ノ頭、石小屋の頭、大石山を経てユーシン(カヤマノ平)まで
のコース。


 かつて1962年(昭和37)ごろまでは、踏み跡がかすかに分かる程度
で、それも部分的であったという。そのためザンザ洞や、石小屋沢を遡行
し、稜線に出てからが大変で、手強いヤブこぎに苦しめられながらふもと
に下ったものでした。その後登山道が整備されて、いまではすっかり一般
道になり、途中から同角沢におりる道もできて、変わったコースもとれるよ
うになりました。


 コースの途中からは、ザンザ洞源頭のキレットも望めます。ここはナイフ
リッジになっていて、風化も進んでいるので、かつては悪場として知られ
ていました。いまはキレットの上部に橋がかけられ、誰でも楽に通過でき
ます。この橋から見下ろし、ザンザ洞を眺めると落ち込んだ厳しいザレの
様子が確認できます。


 この同角とは、同角ノ頭と石小屋ノ頭を双耳峰にみたて、「同角」また
は「同格」としてつけられたという説があります。またドーカクは、ピークを
「頭角」とみて、それが転化したのだとの説もあります。『日本山岳ルーツ
大辞典』には、玄倉川支流に同角沢があり、これを源頭にして聳立し、そ
の先端に山峰(頭)があるという山名」しています。


 しかし、吉田喜久治は『丹澤記』は、トーカクというのは沢名がおこりで
はないらしいとしています。さらに、「二つの峰並立説はこさえものくさい。
諸星梅吉(玄倉村の翁)は、ドーガク、双峰説で、同角の当て字はそこか
ら出たものか。コブのことだったら、むしろ頭角をとる。このコブはたしかに
抜きん出た頭角。これなら理の上では納得できる。すなわち「ドーガク」で
も「ドーカク」でもなく「トーカク」である」。同角や、同格ではなく、「頭角」
だとしています。


 近くには同名の同角沢があり、3段で60mの遺言棚は、丹沢三滝(畦
ヶ丸近く中川川支流西沢の本棚(50m)、早戸川支流大滝沢にある早
戸大滝(50m)、そしてここドウガク沢(同角沢)の遺言棚・3段の滝)にあ
げられています。丹沢三滝については、上記の本棚(50m)、本谷川キ
ウハ沢出合先から長尾尾根に突き上げる大棚沢の大棚(30m)、上記の
早戸大滝(50m)との説もあります。


 そのほかに丹沢の名峰檜洞丸の名前のもとになっている檜洞、変わっ
た名前のゲタ(下駄)小屋沢、さらに有名なザンザ洞・小川谷など多彩な
沢が目白押しです。


 ある年の4月初旬、玄倉−山神峠からユーシン、同角山稜を経て檜洞
丸−蛭ヶ岳−姫次−東野から藤野駅に出たことがありました。当時山神
峠から先は通行禁止になっていました。この間降った雪で木々の間から
臨む檜洞丸は真っ白です。


 道は崩壊しており河原に出てユーシンへ。休憩所から同角山稜に取り
つき、大石山の由来の名物大石のまわりで休憩。同角の頭に着くころは
午後4時も30分をまわっていました。行動食をとるのもそこそこに腰をあ
げました。檜洞丸山頂にはすでにいくつかのテントが張ってありました。
次第に風が強くなり、あたりの残雪の冷気を吹き付けて急に寒くなってき
ました。


 風を避けてテントを青ヶ岳の小屋の前に張りました。ここでもテントを張
る時、飛ばされそうになるほどの強風、山頂に張った人たちはどうしてい
るか気にかかります。地面が凍っていてペグが刺せません。それでもマッ
トを敷きガスコンロに火をつければこっちのもの。


 暖かい夕食で体を休め、明日からの蛭ヶ岳−姫次への夢に入ってい
きました。小屋前の庭を借用し、なにがしかのお礼を小屋の中の箱に入
れたのでありました。



▼同角ノ頭【データ】
【所在地】
・神奈川県足柄上郡山北町。小田急新松田駅からバス、玄倉下車、歩
いて6時間10で同角ノ頭。地形図に同角の頭の山名なし
【位置】
・同角ノ頭:35度27分57.29秒、東経139度6分16.6秒
【地図】
・2万5千分の1地形図「中川(東京)」



▼【参考】
・『尊仏2号』栗原祥・山田邦昭ほか(さがみの会)1989年(平成元)
・『丹沢』(アルパインガイド37)羽賀正太郎(山と渓谷社)1980年(昭和
55)
・『丹澤記』吉田喜久治(岳(ヌプリ)書房)1983年(昭和58)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・『日本山岳ルーツ大辞典』村石利夫(竹書房)1997年(平成9)

 

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