第3章「丹沢表尾根」

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▼03:表尾根に一の塔がない!

【略文】
ミネラルが豊富な丹沢の名水。ドライブの家族連れが水筒に水を詰
めています。飲食店主などもわざわざ水を汲みに来ています。護摩
屋敷跡は昔、八菅修験院の山伏たちが身を清め護摩を焚いて修行を
したところだという。
・神奈川県秦野市

▼03:表尾根に一の塔がない!

【本文】

神奈川県丹沢の表尾根は、展望にも恵まれた縦走路。ヤビツ峠ま
でバスも入る便利さで、多くの人に愛され、東京近郊の人なら誰
でも一度は歩いているコースです。また峠から東方の大山までも
1時間の距離です。

この縦走路は、千年以上も前に大山の山伏により開かれたという
のが定説ではあったようですが、はっきりした記録がありません
でした。しかし、1963年(昭和38)に伊勢原市の日向薬師の常連
坊から「峯中記略控」という記録が発見され、昔から修験道入峰
修行の場であったことが確認されました。

奈良時代の716(霊亀2)年、行基が関東へ巡りきたとき、大山を
開こうとしましたがなしえませんでした。次に奈良東大寺の良弁
大僧正がここに登り、お堂などを建て阿降山大山寺(うごうさん
だいさんじ)と号し、本社を石尊社としました。

のち、山岳修験の出現で大山もその修行道場の中心として栄え、
山伏たちは表尾根道を開き、自分たちの本尊・大日如来をブナの
巨木の股にに安置(木の又大日)、その手前にも新しく如来を置き
(新大日)、次第に塔ノ岳、丹沢山、蛭ヶ岳と奥へ奥へ修行の場を
広げて行ったのだそうです。

表尾根へは、秦野駅からバス、ヤビツ峠下車、富士見山荘からし
ばらく木立のなかを歩き、滑りやすい急坂をあえぐことからはじ
まります。さらにカヤトのなかを登り切ると二ノ塔に飛び出ます。
つづいて三ノ塔を経て烏尾山へとつづきます。

ここはなぜか二ノ塔から始まり、一ノ塔がありません。不思議だ
とは思いませんか。これには二ノ塔の南西の麓にある神社が関係
しているのだそうです。

その昔、毎晩のように山に何か光るものが現れたといいます。村
人が不思議に思って見ているとと、突然天空に大きなご神燈が輝
きました。次に、山の上のピークに1つ、そして別のピークにも
う1つの神燈が灯りはじめました。

村人たちは驚き、最初のご神燈(一ノ燈)が灯った場所を神聖な
ところと感じて、神社を建てました。それがいまの秦野市横野に
ある加羅古(からこ)神社なのだそうです。そして、それぞれ神
燈が灯ったピークを二ノ燈、三ノ燈といいました。それがいつか
二ノ塔、三の塔の字を当てるようになったのだそうです。加羅古
神社の縁起に残るお話です。


▼二ノ塔【データ】
【所在地】
・神奈川県秦野市。小田急小田原線秦野駅の北北西8キロ。小田
急秦野駅からバス、ヤビツ峠から歩いて40分で旧ヤビツ峠。また
1時間45分で二ノ塔(標高1140m)。地形図に山名のみ記載。標高
表示なし。
【位置】
・二ノ塔:北緯35度26分3.08秒、東経139度11分43.84秒
【地図】
・旧2万5千分の1地形図「大山(東京)」


▼【参考文献】
・「尊仏・2号」栗原祥ほか(さがみの会)1989年(平成1)
・『日本歴史地名大系・神奈川』平凡社1990年(平成2)
・『丹沢山麓 秦野の伝説』(岩田達治著)1980年(昭和55)