冬 編 12月

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●目次

第1章 残りのカレンダーは 冬への扉
 ・(1)師走(007-1) (2)ツワブキ(007-2) ・(3)ヤマユリ(008)
 ・(4)ヒガンバナ
(009) ・(5)クロナガアリ(010) ・(6)サンコジュ(011)
 ・(7)馬頭観音
(012)

第2章 枯らしに 冬の小僧が 目を覚ます
 ・(1)ミノムシ(013) ・(2)ジャノヒゲ(014) ・(3)ホオノキの芽(015)
 ・(4)ヤマノイモの掘りあと
(016-1) ・(5)ノボロギク(016-2)

第3章 冬枯れの森で見つけるサルの腰掛け
 ・(1)サルノコシカケ(017) ・(2)カマキリの卵(018)
 ・(3)ヤブコウジ
(019) ・(4)ヤブウグイス(020) ・(5)マツカサ(021)
 ・(6)オモト
(022-1) ・(7)昔は牛の餌?ヤツデ(022-2)

第4章 イモ版を彫って知る 絵の下手さかげん
 ・(1)サツマイモ(023) ・(2)ムギ踏み(024) ・(3)タラヨウ(025)
 ・(4)ニワトコ
(026)

第5章 裏が白く 後ろ暗いくない 正月飾り
 ・(1)ウラジロ(027) ・(2)フユイチゴ(028) ・(3)氷遊び(029)
 ・(4)センリョウ
(030) ・(5)マンリョウ(031) ・(6)ミカンで遊ぶ(032)

 

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第1章 残りのカレンダーは 冬への扉

 冬編(12月)・第1章「残りのカレンダーは 冬への扉」

(1)師走

 師走とは「師馳(は)せ月」なのだそうです。昔は正月も盆と同
じように祖先の霊をともらう月だったそうです。お経をあげるため、
お坊さん(師)があちこちの家々を忙しく走り回ったのが語源だと
いう。

 また、1年の終わりの十二月は、みんな忙しく、師匠も趨(すい)
走(チョコチョコ走る)するため「師趨」がいつの間にか「師走」
の字をあてたとする説もあります。

 一方、十二月は1年の終わりの月であり、総仕舞いの意味の「仕
極(しは)つ」が語源との説もあります。次に「としはつるつき」
や「としはするつき」がなまったという説(「東雅」)。

 また、江戸・元禄元(1688)年の「日本歳時記」(貝原好古編・
貝原益軒補)という本には「しわすというは四時の訛音なり。四極
月(しはつづき)なるべし」とあります。四時(春夏秋冬)が果て
る意味の「しはつ」がなまって「しわす」になったのだそうです。
(007-1)

 

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 冬編(12月)・第1章「残りのカレンダーは 冬への扉」

(2)ツワブキ

 ツワブキは、海岸のガケなどによく見かけます。フキに似た葉に
ツヤがあって、光っています。ツヤがあるフキというので「ツヤブ
キ」。それがなまってツワブキになったそうです。

 葉がいつも青く、花の少ない冬に黄色の美しい花を咲かせます。
そんなことから観賞用に庭に植えられ、園芸品種がたくさんありま
す。

 花が舌状花だけのヤエツワブキ、葉のフチが縮れたシガミツワブ
キ(ボタンツワブキとも)、葉に黄色い紋が入ったキモンツワブキ
などがあり、ヨーローッパやアメリカにも持ち込まれています。

 ツワブキは太平洋側は福島県、日本海側では石川県から西の本州、
四国、九州、沖縄の海岸や海辺の山などに分布するキク科ツワブキ
属の常緑多年草。

 大きな葉には組織細胞を引き締めるというタンニン、細菌の侵入
を防ぎ、皮膚の損傷部を保護するという葉緑素があって、軽いやけ
ど、はれもの、うちみなど民間療法に利用されています。

 ツワブキはまた山菜としても料理されます。若い葉の茎をフキと
同じようにアクを抜き、ゴマ和え、酢みそ和え、白和え、油みそ煮、
甘煮、つくだ煮、塩漬けと専門書に項目がならんでいます。

 10月から1月、高さ50〜30センチの太い花茎を出し、たくさ
んの頭花を円すい花序に咲きます。舌状花と管状花からなっていて
花茎は4〜6センチ。
・キク科ツワブキ属の常緑多年草
(007-2)

 

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 冬編(12月)・第1章「残りのカレンダーは 冬への扉」

(3)ヤマユリ

 裏山の小道を歩いていると、ヤマユリの茎が枯れて立っているの
を見つけます。あんなにきれいに花を咲かせてつけた種子も、とう
に落ちてからが風に揺れています。

 その根を掘り出します。鱗茎(りんけい)は黄白色で大きく、直
径10センチにもなり、きんとんなどに料理します。昔は、飢きん
の時など、食糧やご飯に混ぜて大事に食べたそうです。

 鱗茎は、できもの、うちみ、食欲増進、気管支炎に薬効がありま
す。夏咲く花の数で、ユリの年齢がわかるといいます。

 南アルプス・光岳(てかりだけ)から下山。寸又峡(すまたきょ
う)へ37キロメートルの長ーい林道を歩いていた時のこと。あま
りの暑さに滝の水を頭からかぶり、ふと見上げたら、大きなヤマユ
リ。たくさんの花がついています。

 1,2,3,4…。20を数えるころ暑さで頭がクラクラ。24、
5個はあったみたい。
・ユリ科ユリ属日本特産の多年草
(008)

 

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 冬編(12月)・第1章「残りのカレンダーは 冬への扉」

(4)ヒガンバナ

 秋の彼岸の頃、真っ赤な花を咲かせたヒガンバナも、今は、線形
の葉だけが斜面のあぜに生えています。

 昔の子どもは、こんなものでも遊んでしまいました。まず、ゴザ
やダンボールを用意。それにまたがってすわり、前を手で持ち、ヒ
ガンバナの葉の上をすべり降ります。草すべりです。つるつるな線
形の葉は、摩擦も少なく、ゴザやダンボールはすごいスピード。途
中でひっくり返ったりして、キャーキャー。ワイワイにぎやかです。

 ヒガンバナの鱗茎は、ラッキョウに似ていて有毒。でも吐剤(と
ざい)去痰剤(きょたんざい)の原料や、急性腎炎、ネフローゼ症
候群、黄せん、たむしなどの薬になるそうです。

 また、昔、農作物が凶作の年などは、鱗茎をつき砕いて、水にひ
たし、稀塩酸(きえんさん)などで毒を取り去り、団子にして食べ
たといいます。
(009)

 

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 冬編(12月)・第1章「残りのカレンダーは 冬への扉」

(5)クロナガアリ

 木枯らしの吹く冬だというのに、ちよっと暖かい日になると、空
き地などで、黒いアリがウロウロしているのを見かけます。寒さに
強いクロナガアリというアリの一種です。

 ほかのアリがとうに地中に姿を消し、巣の中でぬくぬく?として
いるころ、クロナガアリは、地面に落ちているエノコログサ、スス
キ、メヒシバなどのイネ科の植物やヨモギなどの種子を見つけては
エサにするため巣に運びます。

 集める雑草の種子は、そのほか30種類以上にもなるそうです。
これらの種子を巣の中に運んだあと、皮をむき混気でやわらかくし、

自分たちで食べたり幼虫のエサにします。ふつうのアリは、動物質
しか食べないのに、このアリは穀物を食べるなんて。巣の中に電気
がまでもあるのでしょうか??

 どのくらい寒さに強いのか実験した人がいます。それによると、
クロオオアリは、摂氏7度以上でないとちゃんと歩けないのに、こ
のクロナガアリは摂氏3度で十分。やはり、やはりだったのです。

 クロナガアリは働きアリで体長5ミリぐらい。黒い体をしており、
頭が四角、細かくたてジワがあります。乾燥した草地の地中に住み、
巣は深く3メートル以上になることもあるといいます。夏から晩秋
に雑草の種子を集め巣の中に蓄えます。春から夏までの間は巣の入
り口を閉めて外には出ない(「学研の図鑑・昆虫・p143」)というか
ら変わったアリさんではあります。

 羽アリとなって飛び立つのは初夏の夕方。新しい巣を作るために
結婚飛行が行われます。数日前から巣の入り口が広げられ、雨が降
ったあとの風のない蒸し暑い日などに、羽を持った新女王アリとオ
スアリが出てきて次々に飛び立って行きます。

 結婚飛行前、クロナガアリの新女王たちは共同で巣作りをすると
きもあるそうです。巣の中で仲良く生活している女王アリたちです
が、働きアリの最初の一匹が羽化したとたん、一変して新女王同士
が殺しあいをはじめます。そして残った1匹だけが本当の女王との
資格を得るというから厳しい世界です。

 交尾を終わった新女王アリは自ら羽を切り落とし、穴を掘って地
中に巣を作り産卵。それからは飲まず食わずの卵の世話がはじまり
ます。やっと幼虫がかえると自分の肩の羽を動かす筋肉を分解して、
その栄養分をあげるというのですからただただ驚くばかり。

 幼虫が「一人前」の働きアリになり、たくさんの仲間が増えて巣
はだんだん大きくなります。この仲間から次の新女王アリやオスア
リ生まれ、結婚飛行に飛び立つまでに8年もかかるのだそうです。
・昆虫綱膜翅目アリ科に属する昆虫
(010)

 

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 冬編(12月)・第1章「残りのカレンダーは 冬への扉」

(6)サンゴジュ

 農家の生け垣に、赤いサンゴのような実がなっています。サンゴ
ジュは、庭園樹として、また材に水分が多く、燃えにくく、葉は炎
を出さないため、防火樹として利用します。

 サンゴジュの大きな葉の両端を切って捨てます。そして、先の方
から爪を横に立てて、引っぱります。すると、細い糸(葉の筋)が
あらわれ、葉の切れ片がぶら下がります。それを次々に繰り返し、
ぶら下げるとできあがり。♪小田原ちょうちんぶら下げてェ…のち
ょうちんです。

 サンゴジュの材は密で堅いため、ろくろ細工や小器具の材料にも
なり、実を竹鉄砲の玉にするので、テッポーノキの方言もあります。
生材が重く、薪用に運ぶのに牛が苦しむので、ウシコロシと呼ぶ地
方も。最近はクルマの排気ガスに強いことも知られています。
(011)

 

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 冬編(12月)・第1章「残りのカレンダーは 冬への扉」

(7)馬頭観音

 農村の道路わきに、馬頭観音が建っています。頭の上に馬の顔の
ある石仏だったり、馬頭観世音と彫った石碑だったり。

 馬頭観音は、馬頭観世音菩薩というのが本名。六観音の一つで、
馬頭金剛明王ともいいます。この神さまは、馬のように水を飲んだ
り、雑草を食べ、六道中の畜生道に苦しむ人々を救うのだそうです。

 今のように、車や、トラクターなどの農機具がなかった時代、馬
は、大切な動力源でありました。人々は、お馬さまをそれは大事に
し、かつては農家は自分たちの住まいといっしょに馬舎(うましゃ)
をつくったほど。

 だから死んだ飼い馬のために路傍に供養塔を建て、畜生道を守っ
てくれる馬頭観音として馬の安全、無病息災を祈ったのだそうです。
(012)

 

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第2章 木枯らしに冬の小僧が目をさます

 冬編(12月)・第2章「木枯らしに冬の小僧が目をさます」

(1)ミノムシ

 足にまつわりつく落ち葉をはらいながら、今夜のねぐらをさがし
ます。やっと平地を見つけ、テントを張り、シュラフにもぐり込み
ます。ふと外を見ると、同じような格好をしたものが木の枝から、
ぶら下がっています。ミノムシです。

 ミノムシは、ミノガの幼虫。枯れ葉や小枝の破片、木の皮などを
絹糸でつづって「みの」をつくり、その中にもぐり込み、上部の口
が開いているところから頭を出して木の新芽や葉、茎を食べて暮ら
します。体が大きくなって、きゅうくつになると、みのを修理する
という器用な技術を持っています。

 冬は、みのにフタをして、4月ごろまでジーッと枝にぶら下がっ
ています。このみのを切り開き、つぎ合わせて手さげなどの民芸品
をつくったりします。(ちょっとかわいそう)。

 雄はみのの中でサナギになり、ガになりますが、雌はガにはなら
ず、そのままです。色紙や毛糸を小さく切って与えると、色とりど
りのきれいなみのをつくります。
・昆虫綱鱗翅目ミノガ科に属するガの幼虫。

※ちなみにミノガは、日本にはよく見られるオオミノガのほか、ネ
グロミノガ、チャノミノガ、シバミノガなど20種しか知られてい
ないという。しかし、苔などにつく極小さな種類でまだ発見されて
いないものが多いため、今後40種以上になるものと見込まれると
いう。

 また、みのをつくる幼虫は、ミノガの全種類のほか、ヒロズコガ
科の一部にもいるそうです。
(013)

 

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 冬編(12月)・第2章「木枯らしに冬の小僧が目をさます」

(2)ジャノヒゲ

 ジャノヒゲは蛇の髭(ひげ)の意味で、その葉がヘビのひげのよう
だというわけです。へびにひげがあったっけ?そんなことは深く考
えないように。

 つまり、あればこんなものだろうと昔の人は考えたわけです。一
名リュウノヒゲ(竜の髭)ともいいます。

 日当たりのよい草地や林のへりに生えるユリ科ジャノヒゲ属の多
年草。葉は濃い緑色で長さ10〜20センチ。幅3、4ミリという細
長さです。

 7、8月ごろ、葉の間から7〜10センチの花茎を出して、淡い紫色
の小さな花が、総状花序というから、柄のある花が軸からはなれて
たがいちがいについて房になって咲きます。

 花がおわるとトーゼン実がなります。直系8ミリくらいの濃青紫色
で光沢のある実は、発達しない果皮が破れ、種子が裸になったもの。

 果実でないため固く、まわりの皮をはいだ白い実は地面やコンク
リートにぶつけるとはずみます。だれでも一度はやったことのある、
はずみ玉遊びもなつかしい遊びです。

 さて根っこ。これこそ名前の通りひげ根です。そのふくらんだ部
分(塊根)を採取して乾燥したものを麦門冬(ばくもんとう)と呼び
薬用にします。サポニン、粘液、ブドウ糖などを含んでいて甘く粘
りがあるそうです。

薬効は解熱、鎮咳(ちんがい)、去痰(きょたん)、強壮剤として百日
ぜき、肺炎、肺結核、咳嗽(がいそう)、口渇、便秘その他モロモロ
……。
・ユリ科ジャノヒゲ属の多年草
(014)

 

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 冬編(12月)・第2章「木枯らしに冬の小僧が目をさます」

(3)ホオノキの芽

 ホオノキは、高さ25m、幹の直径が1mにもなる大木で、まっす
ぐにのびた幹の肌が白っぽい灰色をしてすべすべした感じをしてい
ます。

 樹皮は薬の材料にもなり、木材は柔らかく狂いが少ないため、彫
刻材、建具、漆器木地、製図板、家具、朴歯下駄などに利用されま
す。また昔は刀のさやにも使われたといいます。

 山の植物にとって待ち遠しい春。ホオノキも冬芽の毛皮を着て冬の寒
さにジッと耐えて春を待っています。

 そのホオノキの冬芽で笛を作って遊びます。まず芽になっている
もとの部分にぐるりと傷をつけて、冬芽のカバーをはずします。鉛
筆のキャップのようなカバーがとれます。それを下唇に当てて吹き
ます。
・モクレン科モクレン属の落葉高木
(015)

 

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 冬編(12月)・第2章「木枯らしに冬の小僧が目をさます」

(4)ヤマイモの堀あと

 いまごろ、森や林の中を歩いていると、あちらこちらに地面を掘
ったあとが目につきます。これは地元の人たちがヤマノイモを掘っ
たあとです。穴は掘りっぱなしなので、落ちると危険です。

 いっしょにいた年配の人が「昔はちゃんと埋めたもんだがな」と
あきれていました。

 それに「ヤマノイモは全部掘らずに、上の茎側の細い部分を少し
残して穴に埋めておくと、むかごよりも早く生長し、あとのために
よい」ともいっていました。むかごとはヤマノイモの茎にできる褐
色の丸いイモの赤ちゃんのような

もの。タネとは別の物です。むかごは地面に落ちて芽を出して生長
します。これもご飯に炊き込んで食べられます。

 ヤマノイモは春、古いイモの上に新しいイモができて、それが古
いイモの貯蔵物質を吸収し、急に大きくなります。そして古いイモ
はなくなって、毎年前よりも大きな新イモになるわけです。不思議、
不思議。薬用として、火傷、喘息百日咳などに利用するそうです。

 かつて子どもたちはこのむかごの木の枝などをさしてやじろえべ
を作ったり、平たく3枚の羽のある果実をなめて花の上につけて「天
狗遊び」をしました。

 またことわざに「ヤマノイモがウナギになる」というのがありま
す。物ごとが意外な状況に変化することをいうそうです。ヤマノイ
モがウナギになっちゃ、意外な状況に違いないですね。
・ヤマノイモ科ヤマノイモ属の多年草
(016-1)

 

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 冬編(12月)・第2章「木枯らしに冬の小僧が目をさます」

(5)ノボロギク

 冬なのに畑や道ばたで黄色いノボロギクの花が咲いています。普
通は春から夏に多く咲きますが、ほぼ1年中花が見られます。

 ノボロギクの原産地はヨーロッパで、明治の初め(1870年前後)
に渡来した帰化植物だそうです。繁殖力が強く、日本全土に分布。
人里近くの空き地などに野生化、しばしば群落をつくっています。

 ノボロギクとは、花のあと総包片が反転したあと目立ってくる純
白色の冠毛を、ぼろ切れに見たてた「ぼろ菊(サワギク)」に似てい
るので、野に咲くぼろ菊の意味のノボロギク。はるばるヨーロッパ
からやてきたのにひどい名前をもらったものです。

キク科の1年草または越年草で、高さ30センチ前後。茎は柔らか
く肉質で多数分岐して赤紫色をおびています。葉は互い違いに生え、
縁(へり)が不規則にきざみが入って肉質で軟らかい、毛はあったり
なかったりします。

 花は頭花で少数。葉のわきから生え、散房花序(下の花の柄が長
く上の花の柄が短く、花が平らにならぶ)状につき、黄色の管状花
(まれには少数の小舌状もあるという)からなっています。

 総苞は先が少し細まった円柱形で長さ8〜10ミリ。基部には先
が黒い小さい総苞がいくつかあります。花冠は五裂、花柱分枝の先
には乳頭状の突起毛があります。果実は長さ1、5〜2、5ミリ。世
界中に帰化しています。
・キク科キオン属の1年草または越年草
(016-2)

 

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第3章 冬枯れの森で見つけるサルノコシカケ

 冬編(月)・第3章「冬枯れの森で見つけるサルノコシカケ」

(1)サルノコシカケ

 日だまりの山道で、大木の幹に皿のように生えているサルノコシ
カケを見かけます。サルノコシカケとはいいますが、一度も猿が腰
掛けているのを見たことはありませんが。

 これは、サルノコシカケ目のサルノコシカケ科やマンネンタケ科、
キコブタケ科のうち木質で多年生となるキノコの総称だという。

 このキノコは多年生で毎年大きくなり、木質、革質、コルク質、
肉質で、色も褐色、紅色、黄色、白色などいろいろです。キノコの
下面には小さな穴があり、穴の内面で胞子を作っています。

 種類により、マツタケやマイタケなどのように食用になるものも
あれば、マンネンタケは装飾用、大きなコフキサルノコシカケは細
工用に、なかにはエブリコ、ブクリョウのように薬になるものもあ
るそうです。

 サルノコシカケは腐ったブナの木によく生えています。これが生
えると木は腐り、材木としては使用不能になるという。

 かつてサルノコシカケにガンを治す成分があるというので、ブー
ムになったこともありました。しかし、全種類にそのような成分が
あるは限らず、なかにはガンを促進するものもあるとのことですの
で要注意です。

 サルノコシカケは、何年も育ち続けるため、幅が1mにもなるも
のもあるということです。
(017)

 

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 冬編(月)・第3章「冬枯れの森で見つけるサルノコシカケ」

(2)カマキリの卵

 山から吹きおろす木枯らしが一段と寒く感じるようになりまし
た。雑木林の小枝に泡が固まって干からびたようなものがくっつい
ています。カマキリの卵嚢(らんのう)というもので、中には400
個もの卵が入っているそうです。

 秋にカマキリの雌がお尻から泡を出して木の枝や石などにくっつ
けます。産卵した後、泡はまもなく団子のように固まり、手でちぎ
ろうとしても、少しぐらいではビクともしません。

 カマキリの卵はこの卵嚢でジッと冬を越し、春になると待ってま
したとばかりいっせいにふ化します。ふ化した幼虫は、卵のうにあ
るふ化孔からわれ先に糸をひきながら飛び出して、先に出たものか
ら脱皮してはい上がります。

 なにしろ400個も入っているのですから大騒ぎ。この幼虫も親と
同じ姿かたちをしています。その後、数回脱皮して、あのどうもう
な成虫になっていきます。

 カマキリの卵が木の枝の上のほうにあると大雪が降るという言い
伝えがあります。科学的な根拠は不明だそうですが、カマキリは気
候に敏感で、雪を被ってしまうような低いところを嫌い、卵を産む
のはふつう1mから2mくらいだそうです。

 ほかの木の枝もよくみると、ミノムシやクスサン、イラガ、ウス
タビガ、アゲハなども、まゆや卵で冬越しをしています。こうみる
と静かな林の中も結構にぎやかです。お互いに、はげましあってい
るのでしょうか。

 カマキリにはいろいろな種類があって、日本にも10種以上がいる
という。カマキリ、オオカマキリ、ウスバカマキリ、コカマキリ、
ハラビロカマキリなどが有名です。

 昔は子どもたちが、雌同志を同じ入れ物に入れてけんかをさせて
遊びました。羽を広げて、前足を構える格好を先にした方が勝ち。
どちらも同時の時は、けんかして逃げた方が負け。長くけんかさせ
ると共食いをするので注意が必要です。
(018)

 

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 冬編(月)・第3章「冬枯れの森で見つけるサルノコシカケ」

(3)ヤブコウジ

 高さ10〜20センチの小低木ヤブコウジ。冬中つける赤い実を愛
でて正月の床の間に飾られます。ヤブコウジは古くはヤマタチバナ
とも呼ばれ、「万葉集」にも詠まれています。

コウジとはコウジミカンのことだといい、タチバナと同じく、ヤブ
コウジの葉や実がミカンに似ているからだそうです。

 ヤブコウジのような赤い実をつける植物にそれぞれ「両」をつけ
て呼んだりします。アカモノ(ツツジ科)を一両、ヤブコウジを十
両、カラタチバナ(ヤブコウジ科)を百両、それにセンリョウ(セ
ンリョウ科)、マンリョウ(ヤブコウジ科)と続きます。

 そしてこれらをやはり赤い実をなるアリドオシ(アカネ科)とい
っしょに寄せ植えにし、「年中お金が有りどおし」と縁起をかつぎ
楽しむ人もいます。

 ヤブコウジは奥尻島から日本全土に分布。山地の木陰に群生、地
下茎をのばしてふえる常緑小低木。葉は輪生状に2、3段に集まっ
てつき、長さ4〜13センチくらいの長だ円形。ふちに細かいギザ
ギザがあります。

 7〜8月ごろ、葉や鱗片葉の腋から花序を出し、直径5〜8ミリ
の花を散形状に2〜5個下向きに咲きます。花は白く花冠に五裂。
雄しべは5本。果実は直径5ミリくらい。

 なおヤブコウジを正月の飾りに使う風習は、江戸時代から記録に
あり、明治中期には園芸品種がたくさんつくられ、投機の対象にな
ったこともあったそうです。
・ブコウジ科ヤブコウジ属の常緑小低木
(019)

 

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 冬編(月)・第3章「冬枯れの森で見つけるサルノコシカケ」

(4)ヤブウグイス

 ササやぶや低木の茂みの中に、ヤブウグイスがいるらしく、チャ
ッチャッという笹鳴きの声が聞こえます。

 夏、高い山から低い山までのササやぶのある林につがいですんで
いたウグイスも、冬は平地におりてきて、一羽ずつやぶの中でくら
します。

 餌は、一年を通して昆虫類やクモ類が主で、ササや低木の中を飛
び移りながら、木の枝や葉の裏側を見上げて獲物を見つけて捕まえ
ます。冬には虫のほか熟したカキなども食べます。

 子どもの頃、近所のおじさんが鳥かごにウグイスを飼っていまし
た。餌はすり餌のほか、熟れたカキや、オイランという品種のサツ
マイモでした。透き通った、きれいなウグイスの糞でした。

 ウグイスは、明るいササやぶを好み、森林に変わるともう住めな
くなってしまうそうです。(020)

 

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 冬編(月)・第3章「冬枯れの森で見つけるサルノコシカケ」

(5)マツカサ

 山道など歩いているとかさの開いたマツカサが落ちています。ま
た時には緑色のマツカサが散らばっているのを見つけることがあり
ます。リスが食事をしたあとです。お腹イッパイになったでしょう
か。

 かさの開いたマツカサは、タネを飛ばした後の褐色に色が変わっ
た、からのものです。マツカサはマツボックリともいい、普通はク
ロマツやアカマツの実をいっています。

 クロマツの実は、冬でもついています。春咲いた雌花がマツカサ
になって秋になり、冬になってもかさをつけたまま。そしてまた春
になり、秋になってから熟し、種を飛ばして地面に落ちます。

 マツカサに似た実をつける木は、このほか、エゾマツ、トドマツ、
カラマツ、モミ、ヒマラヤスギなどあります。

からのマツカサをひろってきて、のりでマッチ棒をつけたり、ド
ングリにきりで穴をあけたりして差し込み、人形などを作ってみま
しょう。

 丸く切った紙に中心に向かって切れ目を入れ帽子を作り、小さな
マツカサにかぶせ、別のマツカサにノリでくっつけます。それにマ
ッチ棒の手足をやはりノリでつければ「みのを着た人」の出来上が
り。

 またドングリにキリで穴をあけてマッチ棒を差し込み、マツカサ
のかさの間に差し入れてのりづけします。それに足をつければダチ
ョウになります。

 さらにドングリをマツカサのつけねにのりづけし、マッチ棒の一
本足をつければかかしのできあがり。そのほか踊り子など、工夫す
ればいろいろなものができますよ。
(021)

 

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 冬編(月)・第3章「冬枯れの森で見つけるサルノコシカケ」

(6)オモト

 オモトは漢字で「万年草」と書きます。葉が一年中青々としてい
るからだそうです。日本の暖地と中国に自生、福井県敦賀市のオモ
トの自生地は国の天然記念物に指定されています。

 オモトとは、株が大きくガサツなところから、おおもと(大本)
が語源だといいます。最初は薬用として利用されたといい、根や葉、
実には配糖体ロデキシンA、B,Cが含まれ、天日乾燥した根をマ
ンネンセイコン(万年青根)と呼び、強心剤や利尿剤に用いられま
すが、作用が激しく、「素人がみだりに使っては危険」と図鑑にあ
ります。

 オモトの肉厚で光沢のある葉、その葉の間からのぞく美しい赤い
実がめでられ、生け花にもされています。これが観賞の対象ととし
て栽培されるようになったのは、元禄時代(1688〜1704)らしく、
当時の本『花壇地錦抄(かだんちきんしょう)』に、縞(しま)オモト、
とらふオモトが野生種と区別して記載されています。

 その後、覆輪オモト、葉変わりなどが続々登場、1799年、(寛政
11)、大分県で出版した銘鑑『萬年青』には79品種を記載しています。

 天保年間には錦絵刷りにまでなり、明治、大正とブームは続き、
昭和になると品種改良がさらに進歩、現在約五百種の園芸品種があ
り、葉の大中小やその肉薄などで大別し、13の系統に分類され、
愛好者は全国に十万人を超えるというから、もはや「野草」ではな
いかもしれません。
・ユリ科オモト属の常緑多年草
(022-1)

 

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 冬編(12月)・第2章「木枯らしに冬の小僧が目をさます」

(6)昔は牛の餌?ヤツデ

 ヤツデを庭木にするのは、この木に邪悪の侵入を防ぐ呪力がある
からといいます。

 鹿児島県には、近くの村に伝染病が発生したりすると、村の入り
口やそれぞれの家の入り口にヤツデやナンテン、コショウを縄につ
るし「なんでん来たときは、八つ手でつかまえ、こしょうを食わせ
て毒を消す」という語呂合わせで、おまじないをする所があるそう
です。

 かつては疱瘡(ほうそう)がはやったりすると、軒先にヤツデの
葉をつるしたり、トベラの葉とともに戸口にさしたりする地方もあ
ったという。また、田の神さま、水神さま、氏神さまのまつりには、
赤飯をヤツデの葉の上にのせて供える風習もあるとか。

 ヤツデは「八つ手」の意味で、葉が八つに切れていることから出
た名だそうですが、実は9とか11に裂など奇数になっていることが
多いですよね。でも切れ目を数えると八つになりますよ。そんなと
こで勘弁してあげましょう。

 ヤツデは、南関東から南の暖かい、海に近い山林中に生えている
ウコギ科の常緑低木です。高さ2〜3mになります。葉っぱは、以
前は冬の間牛のエサにもされたそうです。

 葉に含まれるサポニン類のファトシンという物質は、せきをしず、
またこの葉を入れた湯に入ればリュウマチに効くといわれていま
す。園芸種にフクリンヤツデ、シロヤツデ、キモンヤツデなどがあ
るそうです。

 昔の子どもたちは、メダケを使って鉄砲をつくり、ヤツデの実の
玉で「木の実鉄砲」遊びをしたものです。
・ウコギ科ヤツデ属の常緑低木
(022-2)

 

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第4章 イモ版を彫って知る 絵の下手さかげん

 冬編(12月)・第4章「イモ版を彫って知る 絵の下手さかげん」

(1)サツマイモ

 正月も近くなり、そろそろ年賀状を書かねばなりません。印刷、
ワープロの時代でも、誰でも一度は試すのはサツマイモのはんこ。

 ヘビの絵がミミズに、イヌがブタに、トラがネコになっても、削
り取って何回でも彫り直せます。絵はあまり細かくせず、大ざっぱ
に彫ると、味のある年賀状ができます。

 薩摩芋というほど、薩摩(鹿児島)地方の栽培は古い。その鹿児
島でのお話し。宝永2年(1705年)のこと、前田利右衛門という
人が琉球あたりで島民が食べている珍しいイモを持ち帰り、庭に植
え、かいがしく世話をしました。

 やがてつるがのび、葉は茂ったが、秋がきても一つも実がならな
い。ついに怒り爆発。コゲナモノッ! とくわを打ち込んだら、イ
モがゴロゴロ現れたという話もあります。
(023)

 

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 冬編(12月)・第4章「イモ版を彫って知る 絵の下手さかげん」

(2)ムギ踏み

 かつては麦ふみも冬の農村の風物詩でした。吹きさらしの寒い畑
のなかで、手ぬぐいで頬被りした農家の人たちが背中を丸めて麦の
畝を横になって踏んでいたものでした。

 麦ふみは踏圧(とうあつ)ともいい、秋まきのコムギ、オオムギ
などを冬の間に数回踏みつけます。その回数や方法は地域によって
違いますが、ふつうは本葉3枚が開いたころを第1回目とし、幼穂
形成後の節間伸長開始期のころを最終回となるよう、2回から数回
行います。

 これは株のもとや、まわりの土などを踏み固め、霜柱での持ち上
がりや凍霜害を防ぎます。また麦の茎や葉に傷をつけて越冬前の地
上の部分がいたずらに伸びるのを抑制し、分けつを促進し、傷口か
ら水分の蒸散を促するのだそうです。

 そのため、細胞液の濃度が高くなり生理的な耐寒性を高め、さら
に、根の発達が促進されるので、苗が若い時期に根が深くまで根が
深く張るため、土壌の凍霜害への抵抗性を高める作用があるのだそ
うです。

 そのことから、暖地では主として地上部の徒長の防止や分けつ数
を増やすのに役立ち、寒地、とくに火山灰質の霜柱が多く発生する
地域では主に耐寒性を高める目的で行われるようです。

 これを研究した大谷義雄は、昭和18年から23年までコツコツと麦
ふみをしながら観察、研究し、効果を理論づけたということです。

 いまは省力のため、ほとんど行われなくなりましたが、それでも
トラクターでローラーをひき、効果を上げているところもあるそう
です。
(024)

 

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 冬編(12月)・第4章「イモ版を彫って知る 絵の下手さかげん」

(3)タラヨウ

 タラヨウの葉は、火にあぶると輪のような模様が浮き出てくるた
め、モンツキシバ、アブリダシなど方言があります。また葉の裏に
先のとがった棒などで絵や字を書くと、次第にその部分が黒く現れ
るのでエカキシバとかジカキシバというところもあります。葉が厚
くて固くギザギザしているため、オガ(大鋸)モチ、オガバともい
います。

 昔インドでは、ヤシ科のバイタラジュ(貝多羅樹)の葉にお経を
書く習慣があったことから、この木の葉も同じようなことができる
というので、タラヨウ(多羅葉)と名づけられたという。葉に傷を
つけるとその部分が黒くなるのは、細胞内の酸化酵素が空気ふれて
酸化作用を起こすからだそうです。

 秋遅く、熟して赤くなって群生する実と、緑の葉のコントラスト
が見事なため、庭にも植えられます。また、火事の時に燃え移るの
を防ぐために、各家に植えてある地方もあるという。かつては、葉
をお茶の代用に利用したともいいます。

 タラヨウは高さ20m、幹の太さ直径60センチにもなる大きな木
で、静岡県から西の本州、四国、九州、などに分布しています。初
夏、前年の枝の葉のわきに短い枝を出し、淡い緑色の花をビッシリ
と咲かせます。雌雄異種。雄しべは4個、雌しべは退化しています。
・モチノキ科モチノキ属の常緑高木(近畿地方以西に生える)
(025)

 

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 冬編(12月)・第4章「イモ版を彫って知る 絵の下手さかげん」

(4)ニワトコ

 1月15日(小正月)に木の枝で削り花を作ります。削り花は紙
が普及する以前にご幣として使われたもの。その材料がニワトコで、
白い材がやわらかいので小細工ものや小鳥の止まり木のも利用され
るほか、茎のズイは顕微鏡観察の切片にも使用されます。

 ニワトコはタズノキともいい、地方によっては、水口まつりの時、
苗代の水口にこの枝を挿したりします。その語源は不明ながら万葉
の昔から「山多豆(やまたず)」という名で呼ばれ、歌われていま
す。

 早春、ほかの木々に先立って吹き出すニワトコの芽。その新芽を
摘んで山菜に利用します。ゆでてゴマ和え、からし和え、酢みそ和
え、白和え、煮びたし、油いため、つくだ煮、マヨネーズ和え、揚
げものと、人間はなんでも食べるものであります。その他、病気や
けがのニワトリに葉を刻んで食べさせると治りが早いとか。

 春、白い花が完全に咲ききらないころ、乾燥したものを接骨木花
(セツコツボクカ)といい、煎じて発汗、利尿に、打ち身やくじき
には浴場料として使われます。
・スイカズラ科ニワトコ屬の落葉高木
(026)

 

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第5章 裏が白く、後ろ暗くない正月飾り

 冬編(12月)・第5章「裏が白く、後ろ暗くない正月飾り」

(1)ウラジロ

 ウラジロは、しめ飾りに添えたり、三方の鏡もちの下にしいたり、
正月になくてはならない植物です。

 ウラジロは、葉の裏が白いのが名前の由来だそうです。そこから
「うしろ暗くない」と縁起をかつぎます。そして、枝や葉が向かい
合っているため、「共に正月を迎え合う」としめでたい植物なのだ
そうです。

 ウラジロはシダの代表格です。シダは羽片が下垂(しだ)るが語源
といいます。それを「歯垂(しだ)る」とかけて、「歯も垂れるほど
長生き」という意味にしゃれるメデタメデタの植物になっています。

 ウラジロは、地面の中を長くほふくする地下茎があって、そこか
ら出ている葉の中軸は、一対の羽片を出すたびにいったん生長を停
止するするという変わった伸び方をしています。

 羽片は長細いだ円形で、表はつやのある緑色をしています。小羽
片はさらに羽状をしており、深く裂けています。

 また茎が2本に分かれ、葉が両方についています。枝のつけねに
小さい芽があって来年の春伸びだして、先から左右に羽片が出て新
しいウラジロの葉ができるわけです。

 昔、山里の子どもたちは葉をむしり、「Y」の字になった葉柄の
背中を押さえてから、突然放すと葉柄は飛び上がります。これをと
び虫遊びといいました。

 美しい光沢のある褐色の葉柄を編んで、お盆や籠(かご)、箸(は
し)、お盆、籠などを作ったりしたそうです。

 冬、全草をとって乾燥させ、煎じて飲むと腹膜炎や浮腫に効あり
という薬草でもあります。
ウラジロ科ウラジロ属の常緑性大形シダ
(027-1)

 

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 冬編(12月)・第5章「裏が白く、後ろ暗くない正月飾り」

(2)フユイチゴ

 冬に低い山地を歩いていると、赤いキイチゴがたくさんなってい
るのをみつけます。熟すと甘く食べられます。ハイキングなどでこ
れを見つけると、いっせいに摘みとって口にほおばり、みんなモグ
モグやっています。

 フユイチゴのある山道は、私たちの祖先が昔から歩いた道で、新
しく作った道には絶対生えないものだと、何かの本で読みました。

 そもそもイチゴにもいろいろあります。普通のイチゴはオランダ
イチゴです。木になっているのがキイチゴで黄色いからキイチゴ?
 イヤ、赤くてもキイチゴです。また草イチゴもキイチゴと呼ぶの
だそうです。

 そして冬に熟して食べられるのがフユイチゴ、ものは順序になっ
ています。フユイチゴの茎は直立またはななめにあがり、高さ20
〜30センチくらい。全体に曲がった短い毛が生えて、トゲはあり
ません。花は白く枝先に5〜10個、7月から11月ごろまで咲きま
す。

 花弁は5個、長さ7〜9ミリ、がく片より少し長い。同じ仲間の
コバノフユイチゴ(木葉の冬苺)は葉がフユイチゴより小さく、先
が丸く両面に白い毛が密集しています。春に花をつけて果実は名前
に反して夏に熟して食べられます。

 ミヤマフユイチゴは深山冬苺で、茎はつる状で地をはい、小さい
トゲがあります。果実は冬に熟して食べられます。・バラ科キイチ
ゴ属の常緑小低木
(028)

 

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 冬編(12月)・第5章「裏が白く、後ろ暗くない正月飾り」

(3)氷遊び

 寒さが一段と厳しくなり、水溜まりや、池に氷がはるようになり
ました。朝起きてみると、バケツにくんでおいた水が凍っています。

 水はまわりから凍っていくので、バケツの氷の真ん中は盛り上が
っています。氷になると、水の時よりも量が増えるという証拠です。

 バケツの氷をとり、ストローか枯れた草の茎で息を吹きかけます。
だんだん氷に穴があき、最後に裏側にぬけます。そこに木の枝や草
の茎を通してブーラブラ。ただそれだけの遊び。つまらないといえ
ばつまりませんが。

 また、凍った池に石を投げて石すべりをします。氷の上を石がキ
ュッキューとすべっていき、向こう岸にはねかえり、もどってきま
す。公園の池などであまりやると危険なこともあり、管理のおじさ
んに怒られます。
(029)

 

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 冬編(12月)・第5章「裏が白く、後ろ暗くない正月飾り」

(4)センリョウ

 正月飾りにされるおなじみのセンリョウ。暖かい地方の常緑樹林
の中を歩いていると野生のセンリョウの茂った緑の葉の上に径5ミ
リくらいの赤い実が目立ちます。

 センリョウは高さ50センチぐらいの小さな木。センリョウの名
は漢字で千両。その名前と緑の葉と実の赤との組み合わせがめでら
れ、切り花にされています。

 センリョウは江戸時代の初期から栽培され生け花に使われたとい
う。当時の記録には「せんりうけ」の名で登場。せんりうけとは、
せんりう(センリョウ)のけ(花)の意味だという。時代が下るに
つれせんりゃう(仙蓼)というようになります。

 これが「千両」の字を使うようになるのは江戸時代の後期とかで
ヤブコウジ科のマンリョウと対比させた縁起物にしてからだとか。
現在、自然保護のため野生品の国際的商取引は、ワシントン条約で
禁止されています。

 このほか「両」の字をつけてめでたがるものに一両のツツジ科の
アカモノ、十両のヤブコウジ科のヤブコウジ、百両のカラタチバナ
(ヤブコウジ科)それにセンリョウ、マンリョウがあります。

 これらをアカネ科の小低木アリドオシといっしょに寄せ植えにし
て、「一両、十両、百両、千両、万両、年中お金が有りどおし」と
いって縁起をかつぎます。
・センリョウ科センリョウ属の常緑低木
(030)

 

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 冬編(12月)・第5章「裏が白く、後ろ暗くない正月飾り」

(5)マンリョウ

 高さ10〜20センチの小低木ヤブコウジ。冬中つける赤い実を愛
でて正月の床の間に飾られます。ヤブコウジは古くはヤマタチバナ
とも呼ばれ、「万葉集」にも詠まれています。

コウジとはコウジミカンのことだといい、タチバナと同じく、ヤブ
コウジの葉や実がミカンに似ているからだそうです。

 ヤブコウジのような赤い実をつける植物にそれぞれ「両」をつけ
て呼んだりします。アカモノ(ツツジ科)を一両、ヤブコウジを十
両、カラタチバナ(ヤブコウジ科)を百両、それにセンリョウ(セ
ンリョウ科)、マンリョウ(ヤブコウジ科)と続きます。

 そしてこれらをやはり赤い実をなるアリドオシ(アカネ科)とい
っしょに寄せ植えにし、「年中お金が有りどおし」と縁起をかつぎ
楽しむ人もいます。

 ヤブコウジは奥尻島から日本全土に分布。山地の木陰に群生、地
下茎をのばしてふえる常緑小低木。葉は輪生状に2、3段に集まっ
てつき、長さ4〜13センチくらいの長だ円形。ふちに細かいギザ
ギザがあります。

 7〜8月ごろ、葉や鱗片葉の腋から花序を出し、直径5〜8ミリ
の花を散形状に2〜5個下向きに咲きます。花は白く花冠に五裂。
雄しべは5本。果実は直径5ミリくらい。

 なおヤブコウジを正月の飾りに使う風習は、江戸時代から記録に
あり、明治中期には園芸品種がたくさんつくられ、投機の対象にな
ったこともあったそうです。
・ブコウジ科ヤブコウジ属の常緑小低木
(031)

 

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 冬編(12月)・第5章「裏が白く、後ろ暗くない正月飾り」

(6)ミカンで遊ぶ

 お正月のこたつにミカンがよく似合います。こたつから顔だけ出
してミカンを食べたことを思い出します。いまミカンといえばふつ
うはミカン科ミカン属の中の代表的な品種であるウンシュウミカン
をいっています。

 その昔、中国で修行したお坊さんが帰るとき浙江省温州府からミ
カンのタネを持ってきて鹿児島県に播きました。出てきたのが突然
変異のおいしいミカン。それがウンシュウミカンだという話もあり
ます。

 ミカンは体によく、お店に出まわると病人が少なくなり、医者が
青くなるということわざもあるほどです。ミカンの皮でつくった陳
皮は健胃剤として利用されています。

 また風邪をひいて咳が止まらないときや痰が切れないときには、
皮ごと焼いて中身が熱いミカンを食べるとよいそうです。しゃっく
りや利尿効果もあるとされます。

 ミカンを食べるとき、皮に爪をたてて割りその皮をいくつにも裂
き、中味の袋を取りだします。ひっくり返すと緑のへたがタコの口
になります。

 その上に目になる穴をふたつあけると、ほら、黄色いタコ入道が
できました。それを見ながら食べるミカンはおいしいよ。次の日に
見ると干からびてしまい、情けない姿になっています。

 同じように爪をたててイラストのように切り取り、手かごをつく
ってみましょう。なかの袋を取りだすのがむずかしく皮がすぐ切れ
て失敗するのでご注意。

 そのほか、中味の袋の数を当てっこしましょう。まず緑色のヘタ
をとります。ヘタに丸くならんでついている白ごまのようなツブツ
ブを数えます。その数が中の袋の数と同じだったらおなぐさみ。赤
ちゃん袋の分もあるでしょうか。
(032)

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12月終わり