秋 編 11月
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●目次
第1章 葉が落ちて カラスウリの 数わかり
・(1)霜月 ・(2)カラスウリの実 ・(3)コブシの実
・(4)カヤの実 ・(5)スギ ・(6)ガマズミ
・(7)クチナシ ・(8)スズメウリの実
第2章 秋深く 梢のカキは 野鳥のご馳走
・(1)カキ ・(2)サンショウ ・(3)ウラシマソウ/マムシグサ
第3章 風の音頭で 枯れ葉の踊り
・(1)落ち葉 ・(2)ニシキギ ・(3)マメガキ
・(4)ナラ ・(5)ケヤキ ・(6)ハナミョウガ
第4章 山で熟れる 赤い実 黒い実 紫の実
・(1)ムラサキシキブ ・(2)ツリバナ
・(3)リユウノウギク ・(4)シャシャンポ
第5章 枯れ葉の音は 冬の足音
・(1)トウガラシ ・(2)ミズナラ ・(3)ツクバネ
・(4)ホオノキ ・(5)ツチトリモチ…………………………………
第1章 葉が落ちて カラスウリの 数わかり
秋編(11月)・第1章「葉が落ちて カラスウリの 数わかり」 ・(1)霜月
霜月とは本当は旧暦の11月のことですがいまの暦でもよく使いま
す。平安時代の歌学書「奥義抄(おうぎしょう)」(藤原清輔著)に
は「霜しきりに降るゆえに、霜降り月というを誤れる」とあります。
また「下学集(かがくしゅう)」、「東雅(とうが)」などの古書によ
ると、文字どおり霜が降りる月なので、しもつき(霜月)といった
という。
またおもしろい説では、「凋(しぼ)む月」、「末つ月」が転化し
たとか、「新嘗祭をやる月なので「食物月(おしものづき)」といっ
たのがなまって「しもつき」になったなどの説もあります。
江戸時代の「滑稽雑談(こっけいぞうだん)」(其諺(きげん)著)
には「霜こもりの葉月、雪待月、神楽月」ともいうとあります。
現代では「おしものづき食物月」の略で「新嘗祭」の月との説も
あります。霜月には収穫祭としての霜月祭りがあります。祭りの日
にちは地方によってさまざまですが、臼の上にイネをのせ、それを
田の神さまとし、供え物をしたり、大師さまにかゆを供えたりしま
す。(067-1)
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秋編(11月)・第1章「葉が落ちて カラスウリの 数わかり」 ・(2)カラスウリの実
夏の夕方、まっ白にうきあがって咲いていたカラスウリも、いま
は葉が落ちた木に、赤くなった果実がぶらさっがています。
カラスウリは「烏瓜」と書きます。木の上に残っているのでカラ
スガ食べ残したウリに見立てたものだそうです。果実の中にある種
子はカマキリの頭にそっくりで、また見ようによっては大黒さまに
似ています。
米俵に乗って、打ち出の小槌を持った福の神に似ているとなれば、
そうソマツに扱われません。ムカシは財布の中に入れておく風習が
あったといいます。
このカラスウリが薬になるというのですから大黒さまのご利益
か。果肉を酒に漬け、練った物を凍傷に。また、ひび、あかぎれに
も効果があるとか。
根っこを土瓜根(ドカコン)といい、便秘、ゼンソク、利尿剤に。
例の大黒サンの種子は土瓜仁(ドカニン)といい、せき止めによい
といわれています。
果肉は化粧用にも利用され、若い果実は塩づけカスづけにして食
べられます。
・ウリ科カラスウリ属のつる性植物(067-2)
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秋編(11月)・第1章「葉が落ちて カラスウリの 数わかり」 ・(3)コブシの実 |
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秋編(11月)・第1章「葉が落ちて カラスウリの 数わかり」 ・(4)カヤの実 |
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秋編(11月)・第1章「葉が落ちて カラスウリの 数わかり」 ・(5)スギ |
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秋編(11月)・第1章「葉が落ちて カラスウリの 数わかり」 ・(6)ガマズミ |
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秋編(11月)・第1章「葉が落ちて カラスウリの 数わかり」 ・(7)クチナシ |
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秋編(11月)・第1章「葉が落ちて カラスウリの 数わかり」 ・(8)スズメウリの実 |
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第2章 秋深く 梢のカキは 野鳥のご馳走 |
秋編(11月)・第2章「秋深く 梢のカキは 野鳥のご馳走」 ・(1)カキ |
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秋編(11月)・第2章「秋深く 梢のカキは 野鳥のご馳走」 ・(2)サンショウ |
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秋編(11月)・第2章「秋深く 梢のカキは 野鳥のご馳走」 ・(3)ウラシマソウ/マムシグサ |
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第3章 風の音頭で 枯れ葉の踊り |
秋編(11月)・第3章「風の音頭で 枯れ葉の踊り」 ・(1)落ち葉 |
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秋編(11月)・第3章「風の音頭で 枯れ葉の踊り」 ・(2)ニシキギ |
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秋編(11月)・第3章「風の音頭で 枯れ葉の踊り」 ・(3)マメガキ(079) |
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秋編(11月)・第3章「風の音頭で 枯れ葉の踊り」 ・(4)ナラ |
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秋編(11月)・第3章「風の音頭で 枯れ葉の踊り」 ・(5)ケヤキ |
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秋編(11月)・第3章「風の音頭で 枯れ葉の踊り」 ・(6)ハナミョウガ |
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第4章 山で熟れる 赤い実 黒い実 紫の実
秋編(11月)・第4章「山で熟れる 赤い実 黒い実 紫の実」 ・(1)ムラサキシキブ
誰でも知っているムラサキシキブです。山道で、ガマミズやマサ
キ、マユミなど赤い実を見つけ、またヤマブドウ、エビズルなどの
黒が目につくなかで、紫色の小さなムラサキシキブは触ると落ちそ
うで手が出せません。
ムラサキシキブは、ご存知平安時代の才媛。紫色の、この果実を
紫式部にあやかり美化してつけた名前だそうです。
この木の幹は真っすぐ伸びるうえ、白く堅く、ねばりがあり強い
ので、とんかちなど道具の柄や杖、箸にも利用され、また木炭とし
てもよいものができるといわれます。
さらに昔は、火縄銃の銃身の掃除や弾丸こめに使った道具「唐子
棒」には最適な材料だったそうです。また木曽地方では、ヒモミと
呼び、昔は火を起こすためのきりに使われ、洋がさの柄に買い集め
られもしたそうです。
・クマツヅラ科ムラサキシキブ属の落葉低木(083)
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秋編(11月)・第4章「山で熟れる 赤い実 黒い実 紫の実」 ・(2)ツリバナ
山歩きでツリバナが赤い実をつり下げているのを見つけます。み
ごとな朱赤色をしています。
5、6月ごろ、細長い枝に、長い柄をつけた花がつり下がったよ
うに咲きます。花は紫色をおびた緑色で、まばらなので華やかさは
ありません。
秋になり、ぶら下がった丸い果実は、赤く、乾かすと鈍い五稜が
あらわれ、熟すと5枚のからに裂け始めます。暗赤色の内側からは、
仮種皮をもつ真っ赤な種子が出てきて、カラにたれ下がります。た
れ下がる花と種子、まさにツリバナなのであります。
からにぶら下がった実が、少しくらいの風にも振り落とされるも
のかと、頑張っている様子がなんとなくこっけいで、手を添えたく
なります。
昔は、この実をとって頭のシラミを駆除するのに利用したそうで
す。
・ニシキギ科ニシキギ属の落葉低木(084)
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秋編(11月)・第4章「山で熟れる 赤い実 黒い実 紫の実」 ・(3)リュウノウギク
リュウノウギクは漢字で「竜脳菊」と書きます。竜脳とはタンス
などに入れる樟脳(しょうのう)に似た香りのする香料の原料。。防
虫剤などに使います。
リュウノウギクは茎や葉に揮発油が含まれていて、指でもむと竜
脳のいい香りがします。名の由来もそこにあるという。
日本では福島県から新潟県以西、本州、四国、九州の宮崎県に分
布。日当たりのよい山地に生え、秋10月から11月ごろ、茎の頂に
白色黄心の頭花を咲かせます。舌状花は淡い紅色をおびるものもあります。
このリュウノウギクを食べるというのですから人間はすごい。揚
げ物に、また、ひとつまみの塩を入れてゆでて、そのほかゴマ和え
にも。上品な香りがしておいしいといいます。
リュウノウギクはまた薬草でもあります。茎葉を内用すれば血圧
をたかめ、発汗、呼吸、血液の循環をうながすという。外用では局
所の血管の拡張がどうだかこうだかになるそうです。
そんなことより民間療法でまいります。陰干しを刻んで布袋に入
れお風呂に……。リウマチ、腰痛、五十肩、痛風、慢性便症などに
効ありとのよし。
秋の抜け毛に葉のアルコール浸液を塗布、また小さい切り傷に葉
の食用油浸液を温め患部へ流し込むという。その他、おできの化膿
促進、排膿によいというが、興味のある方は薬草の本をどうぞ。
・キク科キク属の多年草(085)
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秋編(11月)・第4章「山で熟れる 赤い実 黒い実 紫の実」 ・(4)シャシャンボ
初冬に低山や丘陵地に生え、果実は黒く熟します。食べると甘酸
っぱく、果実酒なども作れます。名前は、果実が丸く小さいことか
ら、小小ん坊(ササンボ)の意味からきているようです。生食など
のほか、ジャム、ジュース、ケーキにも利用します。
シャシャンボは、関東地方南部、石川県以西に分布し、サシビ(長
崎県)、ササブ(志摩)、グレ(四国)、ミソッチョ(九州)、ヨメサ
ラ(嫁皿)=日本髪を結った嫁にできる丸い禿、京都・丹波地方)
なあどの方言があります。
また『古事記』や『倭名類聚抄』などに「鳥草樹」の名で出てく
る。サシブとかサヒブノキとよんでいるのがシャシャンボだろうと
いうことです。
・ツツジ科スノキ属の落葉低木〜小高木(086)
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第5章 枯れ葉の音は 冬の足音
秋編(11月)・第5章「枯れ葉の音は 冬の足音」 ・(1)トウガラシ
晩秋の野山。あんなにきれいだった紅葉も、今は枯れて、むなし
く風に舞っています。そんな山道のわき、溝の向こうの田んぼの一
角が畑になっています。
霜でまっ白になった中、赤いトウガラシが目立ちます。山里の人
が収穫するのを忘れたのか、これからとりに来るのでしょうか。
トウガラシは漢字で「唐辛子」と書くように、1542年、ポルト
ガル人が唐の国経由で長崎に持ち込んだものだという。また一説に
は1592年、秀吉の朝鮮出兵の時兵士が種子を持ち帰ったともいわ
れ高麗コショウの名もあります。
原産地は、ブラジルのアマゾン河流域とかでメキシコやペルーで
は古くから食用にしていたという。そこへあのコロンブスがやって
きて、1493年、ヨーロッパにもたらします。十六世紀には全域に
広がり辛味食品として注目されました。
トウガラシは辛いのが基本ですが、辛味のないものもあります。
それにより「辛いトウガラシ」と「甘いトウガラシ」に大別され、
それぞれにいろいろな変種があります。
トウガラシの辛みは、殺菌作用があり食欲を増進させ、体を温め
ます。また新陳代謝を促進させ熱発生を高め、よく食べる人には肥
満が少ないといわれています。またこれの成分を湿布して、冷えか
らくる腰痛や五十肩に効力ありとしています。
・ナス科トウガラシ属の1年草(087)
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秋編(11月)・第5章「枯れ葉の音は 冬の足音」 ・(2)ミズナラ
クマザサが一面に生えた中に、大きなミズナラが天に枝をのばし
ています。ナラ材は、いろいろなものに利用されていますが、なか
でも有用とされるのがミズナラです。
幹が30mにもなり材は淡い褐色。ずい線が細かくならんでいて
美しく、家具、建築、手すり、階段、床板、ドアかあら船室用材、
机、テーブル、酒だる、楽器、下駄の歯まで間に合わせてくれます。
ミズナラとは、木に水分を多く含み、燃えにくいところからつけ
られた名。大木なので、オオナラとも呼ばれ、材面の美しさに北海
道から北アメリカへオーク材として輸出したことも。
5月頃、新しい枝のもとからひものような雄花の穂をつり下げま
す。雌花は上部の葉腋につき、短く、秋になる果実は、おなじみの
ドングリです。
・ブナ科コナラ屬の落葉高木(088)
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秋編(11月)・第5章「枯れ葉の音は 冬の足音」 ・(3)ツクバネ
お正月に羽子板を買います。羽子板は羽根つき遊びのための板。
羽根つきの羽根を“つく羽根”と呼びます。その「つく羽根」と同
じ名前の植物があるのです。
ツクバネ。半寄生で、他の樹木の根から養分の一部を補給して生
きています。寄生する相手はスギ、ヒノキ、ツガ、モミなどだそう
で、根を掘りだしてみると、ツクバネの白い根っこがほかの木の根
にぴったりのくっつき、さかんに養分を横取りしています。
くっつく方はいいとして、くっつかれる方はたまりません。蹴飛
ばしたくとも、動けない植物という身分。いたしかたのないことで
す。
果実は、クチナシに似ており、先に小苞(しょうほう)の育った
四枚の羽根が広がるアレ。羽根つきの羽根にそっくり。ツクバネと
はよく名付けたものです。
・ビャクダン科ツクバネ屬の落葉低木(089)
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秋編(11月)・第5章「枯れ葉の音は 冬の足音」 ・(4)ホオノキ
バサッ、バサッとホオの葉が落ちてきます。高さ30mにもなる
大木のホオノキ。アメリカやヨーロッパでは庭木にするというから
規模が違います。かつて「ウサギ小屋」といわれたちっぽけな家の
せまい庭になんか、とても植えられません。
ホオノキはホオガシワともいい、カシワと同様に昔、この葉に食
べ物を盛ったのでついた名前。では、ホオとは何んぞや?これだ植
物学者は困っているとかいないとか。
なあに、この木をかつて大柏といっていたのが、なまってホオガ
シワになったのさ。という人もいます。なんだ簡単じゃないの。
木の皮をはいで乾燥し、日本製の厚朴(和厚朴=漢方薬)として、
煎じて健胃剤、駆虫剤に利用します。平安前期の本「延喜式」に、
当時、大和や伊勢などあちこちから厚朴(こうぼく)を年貢としてと
っていた記録があります。
・モクレン科モクレン属の落葉高木(090)
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秋編(11月)・第5章「枯れ葉の音は 冬の足音」 ・(5)ツチトリモチ 山には妙な植物も生えています。赤く丸い坊主頭に、葉もない気 |
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11月終わり