秋 編 10月
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●目次
第1章 願いごと 頼んでみても 神は留守
・(1)神無月 ・(2)ドングリ ・(3)ヤマブドウ
・(4)ジュズタマ
第2章 口あけるクリ 秋の真ん中
・(1)クリ ・(2)ヤブミョウガ ・(3)ヤマノイモ
・(4)ムクノキ ・(5)サツマイモ
第3章 ドロボーグサつけて ネコの朝帰り
・(1)ドロボークサ ・(2)オナモミ ・(3)イノコズチ
・(4)ヌルデ
第4章 紅葉は 野山の収穫祭
・(1)紅葉 ・(2)ナナカマド ・(3)ノブドウ
・(4)ヨウシュヤマゴボウ ・(5)ツチアケビ
・(6)カエデ
第5章 モミジの赤色 イチョウの黄色 空の青色
・(1)イチョウ ・(2)カラタチ ・(3)イヌマキ
・(4)センブリ ・(5)アキグミ ・(6)サルナシ
第6章 トイレの前に手を洗え ハゼノキのあるキャンプ場
・(1)ハゼノキ ・(2)ナンバンギセル ・(3)アケビ
・(4)シイの実 ・(5)クルミ ・(6)サルトリイバラ
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第1章 願いごと 頼んでみても 神は留守
秋編(10月)・第1章「願いごと 頼んでみても 神は留守」
(1)神無月
旧暦の10月は神無月(かんなづき)といいました。これはこの
月は、日本にいるたくさんの神(八百万・やおよろず)の神)が縁
結びの相談に出雲(いずも・島板県)に集まるため、神がいなくな
るといわれているのだそうです。
出雲の方では逆に「神在月・かみありづき」というのだそうです。
「かんなづき」の名についてはそのほか、雷(かみなり・神鳴り)
がもう鳴らなくなった月なので、神無月というのだとか、いや、新
しくできたお米を使ってお酒をかもすので醸成月(かみなづき)が
本当の意味だなどの説があります。
旧暦10月に神さまが旅をして、どこかへ集まるという考えは、
鎌倉時代以前からあったそうで、当時は、行き先が出雲ではなかっ
たらしく、「徒然草」を書いた吉田兼好は、その中で、「神が伊勢大
神宮へ参集するというが、今までそんなことを書いた本もないし、
その説の本説はない」と否定しています。勝手な願い事を聞いてや
ったり、旅をしたり、神さまも忙しいことであります。(035-1)
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秋編(10月)・第1章「願いごと 頼んでみても 神は留守」 (2)ドングリ
先日、奥多摩で野宿をしてきました。もし山に登ったとき、何か
起きて家に帰れなくなったときのため、テントを使わず一晩過ごす
訓練なのです。夜がシラジラと明け、野鳥のさえずりで目がさめま
した。
どうやらウツラウツラしていたようです。朝食をとり、眠い目を
こすりながら山から降りはじめます。かさかさと枯れ葉の上を歩い
ていると、登山道にドングリが落ちているのが目につきました。マ
テバシイの実でした。早速皮をむいて食べはじめます。クリのよう
な味がして結構おいしいです。
ドングリには、食べられるものと、渋くて食べると便秘になって
しまうものがあります。食べられるものはマテバシイのほかにシイ
ノミやイチイガシ、ウバメガシなどです。また、カシワのドングリ
からはでん粉がとれるそうです。渋いドングリもかつて凶作のとき
などは、渋をぬいてたべたそうですよ。
ドングリは、クヌギやカシ、シイ、ナラなどの実で、いろいろな
形が違います。ドングリの名は栃栗からきた名前だそうですが、漢
字では団栗と書きます。木についているときは、下のほうにおわん
のような殻をつけていますが、熟すと風で木が揺れると、とれて落
ちてきます。
地面に落ちたドングリは、次の年の春、水分を吸収し皮を破って
根を出し、そこから茎を伸ばしはじめます。ドングリのとがった方
には芽(根や茎)のもとになるところがあり、皮の中の白いものは
その養分を蓄えた双葉なのだそうです。栄養もたっぷり供えていて
今か今かと春を待っているんですね。
ドングリは森や林にすむ、リスやネズミ、クマなどの大事な食料
にもなります。ドングリのとれない年は、クマがお腹が減って冬眠
できなくて、よく人里にあらわれたりします。それにしてもあんな
に渋い実を食べて動物たちはよく便秘しないものですね。それとも
食べれるドングリを選んでいるのでしょうか。
ドングリは、木の種類によって形が違います。丸い、球形のもの
はクヌギやカシワ、アベマキなどのもの。広だ円形のものはシラカ
シ、イチイガシ、卵形だ円形のものはミズナラ、ウラジロガシ、だ
円形はウバメガシ、アカガシ、アラカシ、長だ円形はコナラ、マテ
バシイのドングリです。
子供のころ、このドングリを使っていろいろなものを作りました。
ドングリの尻にマッチを差し込み、コマをつくります。堅いドング
リの尻にマッチの棒がなかなか刺さってくれません。やっと出来て
赤い軸を持ってまわしてもそううまくは回ってくれないものです。
また、3つのドングリに木の枝を通してやじろべえを作ります。
そのほか、楊枝を殻にさしてひしゃくのおもちゃ。いまの子供には
「子供だまし」のようですが、林の中を駆けまわり大木にからまっ
ているツタにぶら下がって「ターザン遊び」。昔の子どもはマイナ
スイオンをたっぷり吸って遊んでいました。勉強は出来なかったけ
ど、子供の時から生活習慣病にかかるような青ビョウタンはいませ
んでしたよね。
ドングリ:コナラ・ミズナラ・クヌギ・カシワ・アラカシ・シラカ
シなどの果実の総称。(035-2、036)
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秋編(10月)・第1章「願いごと 頼んでみても 神は留守」 ・(3)ヤマブドウ |
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秋編(10月)・第1章「願いごと 頼んでみても 神は留守」 (4)ジュズダマ |
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第2章 口あけるクリ 秋の真ん中 |
秋編(10月)・第2章「口あけるクリ 秋の真ん中」 (1)クリ |
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秋編(10月)・第2章「口あけるクリ 秋の真ん中」 (2)ヤブミョウガ |
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秋編(10月)・第2章「口あけるクリ 秋の真ん中」 (3)ヤマノイモ |
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秋編(10月)・第2章「口あけるクリ 秋の真ん中」 (4)ムクノキ |
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秋編(10月)・第2章「口あけるクリ 秋の真ん中」 ・(5)サツマイモ |
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第3章 ドロボーグサつけて ネコの朝帰り |
秋編(10月)・第3章「ドロボーグサつけて ネコの朝帰り」 (1)ドロボーグサ |
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秋編(10月)・第3章「ドロボーグサつけて ネコの朝帰り」 (2)オナモミ |
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秋編(10月)・第3章「ドロボーグサつけて ネコの朝帰り」 (3)イノコズチ |
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秋編(10月)・第3章「ドロボーグサつけて ネコの朝帰り」 (4)ヌルデ |
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第4章 紅葉は 野山の収穫祭 |
秋編(10月)・第4章「紅葉は 野山の収穫祭」 (1)紅葉 |
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秋編(10月)・第4章「紅葉は 野山の収穫祭」 (2)ナナカマド |
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秋編(10月)・第4章「紅葉は 野山の収穫祭」 (3)ノブドウ |
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秋編(10月)・第4章「紅葉は 野山の収穫祭」 (4)ヨウシュヤマブドウ |
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秋編(10月)・第4章「紅葉は 野山の収穫祭」 (5)ツチアケビ |
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秋編(10月)・第4章「紅葉は 野山の収穫祭」 (6)カエデ
カエデは紅葉が美しくなり、果実に翼がある落葉高木の総称です。
世界に160種もあるそうで、日本にもイタヤカエデ、イロハカエデ
など26種も分布しています。
カエデは蛙手(かえるで)の略で葉の形からきた名前だといわれ、
紅葉(もみじ)するほとんどがカエデ類なので、モミジと呼んでカ
エデを指しているようです。平安時代より前は「黄葉」と書いてい
たそうですよ。
カエデは漢字では「楓」と書きますが、中国で楓というのはマン
サク科の大木のことだそうで、似ても似つかぬ別の植物をいってい
るという。
なぜこんなまちがいがはじまったかというと、827年というから
平安時代は天長4年、「経国集」という本で、淳和(じゅんな)帝
と滋野貞主(しげのさだぬし)という人が使いはじめたのだそうで
す。
この二人が、実際には見たことのない中国の楓をカエデと混用し
て歌に詠ったのを、後生の「知識人」と称する人々が使ってしまっ
たのだという。
美しく紅葉するのは、秋は夜が寒くなり昼間葉でつくったでんぷ
んから変わった糖分の流れが止まってしまい、その結果、葉の中に
ある黄色素が還元され赤色のアントシアンになるためだという。
カエデは、カエデ科カエデ属の落葉高木の総称、熱帯と亜熱帯に
は常緑のものもあるそうです。その中のイロハカエデの系統には多
数の園芸種もあるという。その名前は、7つにさけた葉を昔「いろ
はにほへと」と数えたことに由来しているそうです。
また、イタヤカエデは、よく葉が茂って屋根を板でふいた「板屋」
のように、雨がもれないという意味だという。花はふつう雄花と両
性花があり、雌雄同株のものも異株のものもあるというから複雑で
す。花弁とがく片はふつう5枚、雄しべはふつう8本あります。カ
エデの材はボウリングのピンやレーンにも使われるそうです。
カエデの葉やドングリ、木の実を使ってチョウチョウも作れます。
ドングリの両脇にキリで穴をあけてカエデの葉の葉柄をさし込み
ます。(054)
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第5章 モミジの赤色 イチョウの黄色 空の青色
秋編(10月)・第5章「モミジの赤色 イチョウの黄色 空の青色」 (1)イチョウ
神社やお寺の境内が黄色いイチョウの落ち葉で埋まっています。
ボロボロに切れてしまっている葉もありますが、きれいにそのまま
になっている葉もあります。この葉を使ってってウサギやキツネを
つくって遊びましょう。
まずウサギをつくります。葉の真ん中部分に穴をあけ、次に先側
に2個所縦に切れ目を入れます。こんどは葉の茎(葉柄)をくるり
と回して穴に通します。切れ目を入れた両側が耳になるよう指でつ
まんで調節しましょう。最後に目の部分に細い枝で穴をあけると耳
の長いウサギの出来上がり。
次ははとがった耳になるようにはさみでイチョウの葉を切りま
す。やはり穴をあけた部分に葉柄を通してキツネの形に指で調節し、
目尻が上がった「キツネ目」につめで葉に傷をつければ立派なキツ
ネができました。
また3角形の葉の柄を上にし、両側を手前に着物を着るように重
ね合わせ、底辺を折り曲げて小枝でとめます。葉柄の所に花でもさ
せば花の顔した人形になります。
そのほかいろいろ自分で工夫してみましょう。失敗してもイチョ
ウの葉はいくらでもあります。安心してつくって下さい。
イチョウはもともと中国の原産だそうで、6世紀の半ばに日本に
伝来したとされています。この木はかなり太い木でもさし木で殖や
せるそうです。またお寺にとくに多いところから、昔イチョウの杖
をついた旅のお坊さんが各地のお寺に寄って突き刺していったもの
がついたのではないかといわれています。
イチョウには雄の木と雌の木があってギンナンが生るのは雌の株
の方。その見分け方として樹勢が上へ上へと伸びているのが雄で、
枝が横に伸びるのが雌だとか、葉が扇状になっている葉の真ん中に
切れ目があるの(ズボン形)が雄木で、ないの(スカート形)が雌
木だとの説。
またギンナンの形がどら焼き型になっているのが雄株になり、3
面体(丸味)の形は雌株になるなどの説が語り継がれていますが、
どれもイマイチ分からないということです。雄株か雌株かは4月ご
ろ花が咲いてからはじめて分かるそうで、房状の花を咲かせるのが
雄株。雌花は細長い枝の先に緑色の胚珠がむきだしになって咲くそ
うです。
イチョウ科イチョウ属の落葉高木。(055)
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秋編(10月)・第5章「モミジの赤色 イチョウの黄色 空の青色」 (2)カラタチ |
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秋編(10月)・第5章「モミジの赤色 イチョウの黄色 空の青色」 (3)イヌマキ
農家のわきの細い道を歩いていると、生け垣のなかにイヌマキの
実を見つけました。人形のような形をした実は、紫色に熟していま
す。
頭にあたるところが種子で、胴の形のところが花托(かたく)な
のだそうです。花托は熟すと甘いので、昔の子どもはおやつがわり
食べました。いまは、おとなが山歩きの途中に懐かしんでつまむく
らいです。
イヌマキの材は丈夫で美しく、シロアリの害に強いので、建築材
に使う地方もあるそうです。また、割れやすいが堅く耐水性がある
ので、器具や機械、土木などにも利用されるということです。
その他、生け垣に、果樹園の防風垣に、また庭園、公園よく植え
てあります。マキとは円木の略。また、杉を真木(本当の木の意味)
といい、この木を卑しんで犬の字をつけたというあります。ワン!
ごめん。マキ科マキ属の常緑高木(057)
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秋編(10月)・第5章「モミジの赤色 イチョウの黄色 空の青色」 (4)センブリ |
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秋編(10月)・第5章「モミジの赤色 イチョウの黄色 空の青色」 (5)アキグミ
秋の山野でアキグミを見つけるのも楽しみの一つです。枝にびっ
しりと赤い実をつけたアキグミは、河原に多く生え、秋空とまわり
の枯れススキに美しく映えています。
大きいものは高さ3m以上にもなるという落葉低木です。3m以
上になっても低木なんだなと思ったら「厳密な定義は存在せず。文
献によりまちまち。一般的には樹高5m以下もしくは5m以下の
木のことを指す」なのだそうです。
夏に熟すグミだからナツグミ。秋のグミだからアキグミ。なるほ
どなるほどと、口にほおばります。うまいけれど小粒なので、種子
を吐き出すのがめんどう。いいかげんでやめてしまいます。
新潟県や山口県のことわざに「アキグミはいくら食べてもよいが、
ナワシログミ(この場合トウグミのこと)は食べ過ぎると腹をこわ
す」というがあるそうです。
ナワシログミの果実(トウグミ)は大きいのでつい食べ過ぎにな
ってしまうが、そこへいくとアキグミの果実は小粒なので種子をは
き出すのが面倒になり、いい加減なところでやめるからではないか
という。
アキグミの方言もその地方で、アズキグミ、コメグミ、マメグミ
などといろいろありますが、どれもアキグミの果実の小さいことか
らきた名前だそうです。
もっとも鹿児島県でコメグミというのはコメの実るころ食べられ
るからだそうで、かつては春、コメグミの花の咲き具合でその年の
稲の豊作を予想したという。
中国地方では、アキグミをアサドリというそうです。鳥取県では
5,6月にその新葉を摘んで、乾かしてから炒り「アサドリ茶」を
つくって飲むそうです。また、鳥取県ではアサドリの葉を干して蓄
え、冬の間の家畜の餌にまぜて食べさせるという(「植物の世界・44
号」)。
民間薬としても利用するという。葉と皮を煎じて飲んで胃病に、
根を陰干ししてかぜ薬としても用います。アキグミの材はねがり強
いので、道具の柄(え)や囲炉裏(いろり)の自在鉤(かぎ)に使
用したそうです。
ちなみに、伊豆七島と関東地方南部の海岸に生えている、葉の幅
が広くて丸いものをマルバアキグミとして区別しているそうです。
・グミ科グミ属の落葉低木(059)
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秋編(10月)・第5章「モミジの赤色 イチョウの黄色 空の青色」 (6)サルナシ |
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第6章 トイレの前に手を洗え ハゼノキのあるキャンプ場 |
秋編(10月)・第6章「トイレの前に手を洗え ハゼノキのあるキャンプ場」 (1)ハゼノキ |
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秋編(10月)・第6章「トイレの前に手を洗え ハゼノキのあるキャンプ場」 (2)ナンバンギセル
ナンバンギセルは漢字で書くと南蛮煙管。その名のように南蛮渡
来のキセルのような形で、先端に「がんくび」のような花を咲かせ
ます。
この植物が寄生性であることは有名で、山道などでススキの根元
に生えているのをよくみかけます。寄生するものは、ススキのほか、
サトウキビ、ヒエなどのイネ科のほか、ミョウガ、スゲ属の植物な
ど。
ナンバンギセルはハマウツボ科ナンバンギセル属の一年生草本。
全体はやや肉質で無毛。直立した茎のように見えるのは実は花茎で、
茎はほとんど地上に出ず、赤褐色のりん片状の葉を数枚つけます。
その葉のわきから15〜20センチの花茎を出して、その先に横向
きに淡紫色の花をつけます。がく片は、合着して舟形になり先がと
がっていて、片方が裂け淡紅紫色のすじがあります。花冠は筒状。
さく果は卵球茎で1〜1.5センチくらいの大きさ。種子は小さ
く多数。草は寄生性のため葉緑素があありません。ナンバンギセル
は薬草だという。強精、強壮、不妊症によいというのです。
この草をショウチュウに漬けて、冷暗所に1ヶ月置いたものをサ
カズキに毎日1〜2杯飲むとバッチリだとものの本に書いてありま
す。ただし私はまだ試していませんが……。
古くは「オモイグサ」と呼ばれ、「万葉集」にも出ています。日
本全土の山野で見られます。
咲くといふものにはあらぬきせる草 森田公司
・ハマウツボ科ナンバンギセル属の寄生植物(062)
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秋編(10月)・第6章「トイレの前に手を洗え ハゼノキのあるキャンプ場」 (3)アケビ |
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秋編(10月)・第6章「トイレの前に手を洗え ハゼノキのあるキャンプ場」 (4)シイの実 |
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秋編(10月)・第6章「トイレの前に手を洗え ハゼノキのあるキャンプ場」 (5)クルミ |
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秋編(10月)・第6章「トイレの前に手を洗え ハゼノキのあるキャンプ場」 (6)サルトリイバラ |
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10月終わり