夏 編 8月

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●目次

第1章 熱帯夜 葉落ち月とは気が早い
 ・(1)葉月 ・(2)スイカ ・(3)イナゴ ・(4)アメンボ
 ・(5)ミズスマシ

第2章 アサガオは いくつ咲いたか 朝寝坊
 ・(1)アサガオ ・(2)セミの抜けがら ・(3)ミョウガ
 ・(4)ジガパチ ・(5)クモの巣の網 ・(6)ガマ

第3章 クサボケ トボケシドミの実
 ・(1)クサボケの実 ・(2)イタドリ ・(3)ウドの花
 ・(4)ヤマユリの花 ・(5)ホオノキの葉 ・(6)キツツキ

第4章 落雷で 静かになる 雷おやじ
 ・(1)雷 ・(2)ホウキギ ・(3)イトトンボ
 ・(4)ヒマワリ ・(5)カラスムギ ・(6)トウガン

第5章 テトラポット 夏の終わりの涼しぶき
 ・(1)イソギンチャク ・(2)カニ ・(3)ヤドカリ
 ・(4)フナムシ

第6章 プカリブカリ 布袋様も水に浮く?
 ・(1)ホティアオイ ・(2)サンショウウオ
 ・(3)ヒゲラシ ・(4)ヤマカガシ ・(5)クモのけんか
 ・(6)腹切りクモ ・(7)オモダカ

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第1章  熱帯夜 葉落月とは気が早い

夏編(8月)・第1章「葉落月とは気が早い」

(1)葉月

  葉月(はづき)はもともと、旧暦の8月のことですがいまの暦で
も使っています。

 葉月の意味は、この月は稲穂が出そろう月であり、稲の「穂発(ほ
はり)月」といっていたものがなまったのだと、賀茂真淵(かもの
まぶち)の「語意考」や新井白石の「東雅」はいっています。

 また、稲穂の「発月(はりつき)」とするのは「大言海」の説。
昔はこのころは、月に稲関連の名前をつけるほど、豊作か否かを決
める大切な時期だったわけです。

 そのほか、葉月の文字通り、葉っぱに関係した説もあります。「奥
義抄・おうぎしょう」(藤原清輔著)や「和訓栞」(谷川士清・たに
がわことすが)では、紅葉した葉が落ちる月という意味の「葉落月」
が「はづき」に転化したものだという説。

 「年浪草」(似雲)の「葉月とは、この月や粛殺の気生じ、百卉
葉を落とす。ゆえに葉落月という。今略して葉月と称す」と出てて
いる例もあります。

 また変わった説に、雁が初めて渡来する月なので「初来(はつき)
月」だとする説(「類聚名物考・るいじゅうめいぶつこう」)という
のもあります。
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夏編(8月)・第1章「葉落月とは気が早い」

(2)スイカ

  スイカは西瓜。一名水瓜と書かれるほど水分が多い。それが熱帯
はアフリカ、カラハリ砂漠の原産というからオドロキです。もっと
も夏の炎天下、ジリジリの畑で育つところを見るとなんとなくうな
ずけます。

 ドーンと昔、紀元前2000年ころ、古代エジプト人はスイカを栽
培し、種子を食べていたといいます。ウソじゃありません。当時の
壁画にちゃんと描いてあります。

 日本には寛永年間(1624〜44)長崎に入ったといわれます。し
かし「長崎両面鏡」という古〜い本には天正7年(1579)だと書い
てあり、また「和漢三才図会」には慶安年間(1648〜52)隠元和
尚が豆といっしょに伝えたとあり、書物によってさまざまなようで
す。

 当時のスイカは黒皮種だったそうです。そして割ってみると中が
まっ赤ときています。そこでなぜか「由井正雪の亡霊」だとか何と
かいって気味悪がって食べなかったそうです。

 花は特別な品種以外は単性花です。だいたい茎の7〜9節めごと
に雌花をつけ、他の節には雄花をつけるといいます。スイカの花は
半日花で朝早く開き、午後にはしぼんでしまいます。

・ウリ科スイカ属.の1年生つる植物

 スイカを使って虫かごを作ります。窓を開け、中をくりぬき、小
枝で格子を作ればできあがり。

 お面のちょうちんも作ります。目鼻、口をくりぬき、底にくぎを
差して、ろうそくを立てます。オバケだゾー。
(061-2)

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夏編(8月)・第1章「葉落月とは気が早い」

(3)イナゴ

 
 ー時、農薬の使い過ぎとかでいなくなってしまったイナゴも、最
近は、少しずつ見られるうになりました。

 イナゴは、パッタの仲間。そばへ寄ると、ジッとこっちを見なが
らスルスルと稲の葉の裏側に隠れます。

 かつては、日本中でイナゴを食べていたそうです。タンパク質と
ミネラルを共に富み、栄養価が高く、いなかの子どもは、夏休みに
なると、朝早く起きて田んぼにイナゴ取りに出かけました。

 布で作った袋に竹筒をしばり、捕まえたイナゴを中に入れ、逃げ
られないよう親指で竹筒の穴をふさぎます。食用にする時は、袋な
どに入れ生きたまま、放置、ふんをよく出させてから熱湯を通しま
す。その後、砂糖としょう油で炒り上げます。

 イナゴを二ワトリに食べさせると、とたんに卵の産み方が違って
きます。
(062)

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夏編(8月)・第1章「葉落月とは気が早い」

(4)アメンボ

  夏休み、田舎のおじいちゃんの家に行きました。朝のすずしいう
ちに、犬をつれて散歩に出かけます。少し歩くと田んぼに出ました。
頭をたれた稲穂に、イナゴがいます。近づくと、クルリと葉のうら
側にかくれたりします。

 その田んぼのわきに用水池がありました。水面にスイレンや水草
が浮かんでいます。そのわきをじょうずにぬってアメンボがスイス
ーイとすべっていきます。

 アメンボは細長い棒のような体で長〜い脚をもっています。よく
見るとあしがついている水面がへこんでいます。長い脚の先に、た
くさんの毛が生えていて水をはじいて水面に浮かんでいるのです。

 アメンボは前脚、中脚、うしろ脚が各2本ずつあります。前脚は
餌を捕まえるのに使い、中脚の動きで前に進み、うしろ脚は舵役で
方向を決めるのに使っています。スイスイと勝手に歩きまわってい
るようですが、ちゃんとした縄張りがあって、自分の縄張りの中に
落ちてきたエサを捕まえて食べています。

 アメンボは、漢字で「水よう(蠅の虫へんのないもの)」とか「飴
坊」と書きます。体から飴のような臭いを出すので飴坊(あめんぼ
う)なのだそうです。カワグモの名もあるそうです。日本にはふつ
うのアメンボのほかオオアメンボ、ヒメアメンボなど20種以上も
いるそうですから簡単に「アメンボ」なんて呼べないようです。

 アメンボは、体長11〜12ミリ、池や川、水たまりにふつうにい
て水に落ちた昆虫の血を吸って生きています。日本全国に分布して
います。オオアメンボはその名のように、体長19〜26ミリと大き
い。池や小さい流れの水面にすんでいて、落ちてきた昆虫などの血
を吸います。本州、四国、九州に分布。

 ヒメアメンボは、体長9〜11ミリと小さい。全国の静かな水面
にいて、水に落ちた昆虫の血を吸って生きています。シマアメンボ
は、体長5〜6ミリとさらに小さく、全国の谷川にすんでいて、や
はり落ちてきた昆虫の血を吸っています。

 そのほかコセアカアメンボ、ハネナシアメンボ、また海にすんで
いるウミアメンボなどがいるそうです。
昆虫綱半翅目アメンボ科(カメムシの仲間)。
(063)

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夏編(8月)・第1章「葉落月とは気が早い」

(5)ミズスマシ 

 河や池などの静かな水面にミズスマシがクルクル旋回していま
す。黒くて鋼鉄のような光沢があり、足で地面をけって驚かせると、
すぐに水の中に潜ってしまいます。水面を回わる様子が、いかにも
水を掃除しているようです。

 ミズスマシの目は、上下に分かれていて、上の目で水の上を見な
がら、下の目で水中のボウフラなど、小さな昆虫を見つけ、捕まえ
て食べています。

 大きくなると、水中の物の上に繭を作ります。日本には、ミズス
マシのほか、コミズスマシ、オオミズスマシ、オナガミズスマシな
どがいるという。

 ミズスママシは、水澄まし。その名の通り、水をきれいにするも
のと思い込み、苦労して捕まえ、泥で濁った水溜まりに放したこと
がありました。ミズスマシは潜ったまま、それっきり……。オレっ
て、どこまでパカなんだろうねェ。
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第2章 アサガオは いくつ咲いたか 朝寝坊

夏編(8月)・第2章「アサガオは いくつ咲いたか 朝寝坊」

(1)アサガオ

 夏休みのアサガオ観察、きょうはいくつ咲いたかな?アサガオは
つるが支柱にからまって延びていきます。つるのからみ方には右巻
きと左巻きがあります。

 その見分け方が分かりますか?鉛筆を右手にまっすぐに立てて持
ち、親指を上に立て人差し指をのばします。その人差し指を曲げた
方向につるが巻いていれば右巻きです。反対に左手同じようにした
のが左巻き。ほら、アサガオは右巻きになっているでしょう。

 アサガオは、朝咲いて午前中にしぼむので漢字で朝顔。だから当
然ヒルガオもあれば、ヨルガオもあります。野生地があっちやこっ
ちで見つかっていていまだはっきりしていないという。

 奈良時代に中国から伝来したことになっています。花の観賞用で
はなく種子を下剤の薬用とするためだったという。

 その昔、藤原の為盛が越前の守だった時、官庁に出す年貢米を一
向に納めないため、近衛府、衛門府、兵衛府の役人たちが、大勢で
為盛の屋敷に談判にでかけました。

 それを知った為盛朝臣はアサガオの種をすりつぶした粉末(下剤)
を酒に混ぜて役人たちに飲ませて退散させた話があります(「今昔
物語」巻第28・第五「越前の守為盛が謀をめぐらす話」)。

 また平安末期のこと、神輿(みこし)をかついであばれまわる叡
山の荒法師に手をやいた朝廷は、アサガオの種子の汁を溶かしたお
酒をふるまったという。

 荒法師たちのお腹はあっちでゴロゴロ、こっちでピーピー、ひど
い目にあわせたという話が同じ「今昔物語」にあります。

 江戸時代から園芸品として発展し、明治にはアメリカ産や大輪種
も混ざり、ますますにぎやかになっていきました。

 アサガオの花を使って草花遊びをしましょう。花をにぎって上か
ら手のひらでたたきます。ぽん!と音がして破れます。葉を握った
手の上に載せて穴の中にへこませ同じようにたたきます。鉄砲遊び
です。

 また花をしぼませ、その先を指でつまんで息でふくらませて割る
風船遊び。いろいろな花を絞って何色のインクができるか色インク
遊びもできます。
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夏編(8月)・第2章「アサガオは いくつ咲いたか 朝寝坊」

(2)セミの抜けがら

 朝早くから、あっちの木の枝、こっちの木の幹で、セミがにぎや
かに鳴いています。神社やお寺などの境内の地面に手の親指くらい
の丸い穴があいています。セミの幼虫が抜けた後です。

 まわりをよく注意してみると、低い木の枝や草の茎にセミの抜け
がらを見つけます。あしのつめを使い、しっかり木につかまってい
ます。からは背中が割れて、文字通り、カラカラに乾燥しています。

 夕方、幼虫は、土から出て木に登り、夜になってからぬぎ始めま
す。ぬけがらを見ただけで、セミの種類をあてられるようになれば、
大したもの。

 5〜10年もの間、土の中にいただけあって、ぬけがらの爪は丈
夫です。爪で木の葉や草を切って遊ぶのもおもしろいです。またあ、
アブラゼミのからは漢方薬にも利用されます。
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夏編(8月)・第2章「アサガオは いくつ咲いたか 朝寝坊」

(3)ミョウガ

 夏休み利用しておばあちゃんのいるいなかに行きました。家の前
の畑は草いきれがして、トウモロコシがひものような花をつけてい
ます。

 畑のかたすみの手入れもされないようなところにミョウガが生え
ていて、根元に太ったタケノコを小さくしたようなミョウガの子が
顔を出しています。先の皮のあいだからうす黄色の花が出ているの
もあります。

 おばあちゃんにミョウガの子をもらい、鶴をつくってみましょう。
細ながい根元のほうを鶴の首にみたてて、細い枝で足をつくります。
枝を地面にさすと立つよ。またミョウガの葉に人さし指をはさんで
折り、口で吹くと笛になります。

 ミョウガの子は香りがよく、から味もあり汁の実や酢のもの、薬
味など料理に利用されます。ミョウガは昔はメウガと書きました。
ショウガを男にたとえたとき、ミョウガを女にみて、メ(女)オガ
といったのがミョウガになったのだということです。
ショウガ科ショウガ属の多年草
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夏編(8月)・第2章「アサガオは いくつ咲いたか 朝寝坊」

(4)ジガバチ(068)

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夏編(8月)・第2章「アサガオは いくつ咲いたか 朝寝坊」

(5)クモの巣の網

 セミ捕り、チョウ捕り、トンボ捕り。虫かごに、昆虫採集用の網、
そんなのは自然派のやることではありません。

 まず、虫取り網。ふたまたになった木の枝を探します。長い柄を
持っているふたまたにクモの巣を巻きつけるのです。コガネグモや
ジョロウグモの巣をいくつも巻きつけます。

 もっと厚くがんじょうにしたいなら、その上にクモをはあわせま
す。尻から糸を出し、地面に逃げようとするのを、枝をクルクルま
わし、糸を巻きつけるのです。

 また、クワやヤナギの細長い枝を、一辺30aくらいの三角形の
空間ができるよう折り曲げ、主軸に結びます。後は、三角形の空間
にクモの巣を巻きつけるのはふたまたの枝と同じです。

 ナスやスイカの虫かごを持って、もうイッパシの野生派。セミや
トンボなどチョロイ、チョロイ。
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夏編(8月)・第2章「アサガオは いくつ咲いたか 朝寝坊」

(6)ガマ

 池や川のふちの泥地に、アイスキャンデーのような形をした茶色
いガマの穂が風に揺れています。秋になると、白い長毛が出てきて、
ガマの穂綿になります。

 ♪ガマの穂綿にくるまれば、ウサギは元の白ウサギ〜。なつかし
い因幡の白ウサギであります。

 しかし、この物語には、穂綿ではなく、花粉にくるまったとある
のです。ガマの花粉は、奈良時代以前からきず薬に使われ、漢方で
も、止血剤として、きず口にふりかけるというから、話は真実をお
びてきます。

 穂綿はふとんの綿にしたり、火打ち石の火口、葉や茎はすだれ、
むしろに利用した時もあったそうです。それにしても、小学校3年
の学芸会で大国主命(おおくにぬしのみここ)をやり、大袋を舞台
の上で落とし、先生に怒られたのがなつかしい。
(070)

 

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第3章 クサボケ とぼけ シドミの実

夏編(8月)・第3章「クサボケ とぼけ シドミの実」

(1)クサボケ

 春、真っ赤な花を咲かせていたクサボケも、今は、もう実をつけ、
なかには、黄色に熟したものもあります。

 子どものころ「シドミ」といって、酸っぱい果実をかじったこと
を思い出し、いまでもツバが出てきます。

 地方により、ジナシ(地梨)、コボケ、ノボケとも呼ぶそうです。
クサボケ、コボケ、ノボケとつづくと「バカにするな」と怒られそ
うな名ですが、ボケに似た小さな木なので草に見立て、野にあるの
でノボケと名づけたもの。                  
 ではボケとは何ぞや。これは木瓜(モッカ)がなまったもの。中
国原産のボケを唐(から)ボケというのに対し、クサボケの生薬を
和木瓜(ワモッカ)という。ナルホド。

 クサボケの香りのよい果実は砂糖煮、塩づけ、砂糖づけ、焼酎づ
け、ジャム、マーマレードに利用するのだそうです。

 また、輪切りにして乾燥し、薬用になります。果実はリンゴ酸2
〜3%、クエン酸、酒石酸なるものを含み、ボケの果実酒、ボケ酒
は整腸、低血圧、暑気あたり、不眠症にまでバッチリだとか。

 バラ科の落葉小低木。4〜5月ごろから赤い目立つきれいな花を
咲かせます。花の白い、シロバナクサボケというのもあるそうです。
・バラ科の落葉小低木
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夏編(8月)・第3章「クサボケ とぼけ シドミの実」

(2)イタドリ

 稲穂がそよいでいます。波のようなうねりが近づくたびに心地よ
い風が頬をなでます。

 春、小さいタケノコのような若茎だったイタドリが、すっかり大
きくなって、農道わきの日当たりのよい荒れ地や斜面に生えていま
す。白い花が円錐状に群がって咲いています。

 茎は竹のように中ががらんどうで、1.5mにもなっています。卵
形の葉っぱも6センチから15センチにもなっているのもあります。

 このイタドリの茎で遊び道具を作ります。茎を適当な長さにとっ
て、太い方をななめに切ります。さらに、別の短いイタドリの茎を
2本支柱として用意します。

 斜めに切った茎と2本の支柱に、キリで穴をあけ、よく動くよう
に小枝を通します。それとは別に太い茎に穴をあけて、そのなかに
水の通る細い茎を差し込みます。

 このセットを、イラストのように組み立てて水を流せば、ほら、
「ししおどし」ができました。キリの穴は、そそいだ水が受け口に
いっぱいになると、重さで下がる位置になるようバランスを考えま
す。水が流れてしまうと受け口は跳ね上がり、支柱の反対側が石に
当たり、パッコーンと音がします。

 また、石に当たる側へ「こま」をつけます。こまが当たるところ
へ花や草の実を置くと「米つき」装置のできあがり〜。

 「ししおどし」は、もっと大きな竹でできたもので、田んぼや畑
に来る害鳥や害獣を追い払う装置でしたが、音が風流だというので、
いまは庭園にも取り入れられています。

 イタドリの名は、痛みどりの効き目があるから来ているといいま
すがはっきりしません。根は漢方薬として、また打ち身や腫れ物な
どに民間薬にも利用されます。
タデ科タデ属の多年草。雌雄異株。
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夏編(8月)・第3章「クサボケ とぼけ シドミの実」

(3)ウドの花

 山菜として食べられるウドも、今頃になると、茎の上部に白い球
形状に小花をたくさん咲かせています。

 花は約3_ぐらいで、花弁は5個、5本の雄しべ、5本の花柱が
あります。急激に大きくなり、冬には枯れてしまうところから、”
ウドの大木、柱にゃならぬ”などと、ずう体ばかりデカクても役に
立たないもののたとえにされたりします。

 今は、フレームなどで栽培されているウドも、もとはといえば山
ウド。その若芽の香りが愛されて、大昔から好んで食べられ、江戸
時代中期には、もう軟白栽培が始まったそうです。そして今は、ぬ
た、酢のもの、あえもの、煮もの、サラダと、もう野菜の一部です。

 ウドはまた、薬用にも利用されます。ウドの根茎は頭痛、、せん
気、半身不随、の軽傷などに効力があるそうとか。
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夏編(8月)・第3章「クサボケ とぼけ シドミの実」

(4)ヤマユリの花

 林の中で白いヤマユリの花が目立ちます。花茎が20〜26センチ
にもなり、ユリの仲間では一番の大きさです。その香りは閉めきっ
た部屋ではむせかえるように強烈です。

 ヤマユリは日本の特産で、ヨーロッパへは文久元年(1861)に紹
介されていますが、当時その香りとユリの王者ともいえる風格に驚
嘆をもって迎えられたといいます。

 以後、日本からの野山掘り球根による輸入や実生からの選び出し、
またカノコユリなどとの交雑が行われ、いまではいろいろな園芸品
種が作り出されています。

 ヤマユリは花の数で、年齢がわかるという。普通の野生状態では、
一本の茎に一輪から六輪程度つくとされていますが、南アルプス光
(てかり)岳から寸又峡への徒歩十時間もかかる林道途中で見たヤマ
ユリは、十六、七の花がたしかにありました。

 大きく黄白色の鱗茎は、苦味がないので古くから食用にされ、と
くに飢饉の時などは食糧にされ、また、まぜご飯にして食べられま
した。いまでもきんとん、みそ煮、鱗茎を一枚ずつとって薄い衣で
揚げて食塩をかけて食べたりします。

 薬用として鱗茎は打ち身、できもの、食欲増進、気管支炎、滋養
強壮、たん切りに、花弁は止血、はれもの、切り傷に効あるといい
ます。

 観賞用品種に、口紅(くちべに)、紅すじ、白星などがあります。
ユリ科ユリ属ヤマユリ亜属の多年草
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夏編(8月)・第3章「クサボケ とぼけ シドミの実」

(5)ホオノキの葉

 暑い登山道から急に涼しい樹林帯に入ります。見上げるとホオノ
キが遅咲きの花をつけたものもあり、大きな葉を風車のように広げ
ています。ホオノキの葉は、長楕円形で大きいものは長さ80セン
チにもなり日本の木々のなかでは最大だという。

 ほんのりと香りののあるホオノキの葉は、昔は食器に使用したり、
お酒を飲むさかずきに利用したことが『万葉集』にもうたわれてい
ます。いまでも、ホオノキの葉にごちそうを盛って食べる習慣があ
ったり、岐阜県の郷土料理「朴葉みそ」に利用されたり、5月5日
のこどもの日に、この葉にかしわ餅をつつむところが各地にあるそ
うです。

 ホオノキは、高さ25m、幹の直径が1mにもなる大木で、まっす
ぐにのびた幹の肌が白っぽい灰色をしてすべすべした感じをしてい
ます。樹皮は薬の材料にもなり、木材は柔らかく狂いが少ないため、
彫刻材、建具、漆器木地、製図板、家具、朴歯下駄などに利用され
ます。また昔は刀のさやにも使われたといいます。

 平安後期の武将・木曽義仲(源義仲)は、兵たちにホオノキの葉
でつつんだ餅を持たせて戦ったという。

遊び:葉を小枝でとめつなぐと帽子ができます。また飛行機遊びを
しても遊べます。
・モクレン科モクレン属の落葉高木
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夏編(8月)・第3章「クサボケ とぼけ シドミの実」

(6)キツツキ

 静かな森の中を歩きます。ガサガサッ。ホオノキの大きな葉が落
ちてきます。突然"タララララ”。木をたたくような音が森中に響き
ます。キツツキです。木の幹をつついて、虫を探している音です。

 キツツキは、アカゲラやアオゲラ、コゲラなどのキツツキ科のケ
ラ類をいいます。足が強く、真っすぐな幹にしがみつき、鋭いくち
ばしで穴をあけることができます。

 キツツキの舌は非常に長くて、あたまのうしろをまいてしまって
おき、木の幹の奥にいる虫を、この舌をつき出して、引っぱり出す
ことができます。

 北アルプス・北鎌尾根から槍ヶ岳に登り、上高地に帰る時のこと、
くたびれた足を引きずり、キツツキの「タララ……」の中、ただ黙
々と歩いたことが思い出されます。長い道だった……。
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第4章 落雷で 静かになる 雷おやじ

夏編(8月)・第4章「落雷で 静かになる 雷おやじ」

(1)雷

 ピカッと光るイナズマ。ガラガラッ暴れまわる雷は、本当に怖い
もの。鬼が太鼓をたたくぐらいならともかく、正体がエレキとくれ
ば、もうお手あげです。

 落雷で死ぬ人は、全国では毎年平均30人もいるといい、ゴルフ
場とか山の上での事故が特に多いようです。野外で雷にあった時、
洞くつやへこんだ所でできるだけ低い姿勢をとります。頭から上に
金属製のもの(かさなど)を出してはいけません。

 林の中は避難場となりますが、とくに大きな木の付近には行かず、
個々の木からも数bは離れようにします。岩場では、雷撃電流が、
落ちた所で地面に吸収されず、まわりを掃くように流れるので注意
が必要です。高山では髪が逆立ち、イナズマが地面を這うような話
をよく耳にします。
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夏編(8月)・第4章「落雷で 静かになる 雷おやじ」

(2)ホウキギ

 ホウキギ(箒木)。一名ホウキグサ(箒草)。木だの草だのとヒト
をまどわすな、と怒られそうですが、茎が木のように固くなる一年
草です。

 よく枝分かれし、大きくなるとますます全体が丸くなります。秋
に紫紅色になってきれいな園芸品種もあって、農家の庭先でよく見
かけます。

 以前は大きくなったホウキギを乾かして、草や種子を落としてか
ら束ね、草ぼうきをつくりました。

 原産はヨーヨッパ。現地では生け垣や花だんのへりに植えたりし
ているそうです。そしていつの頃か中国経由で日本に。

 大昔はニハクサ(庭草)アカクサなどといい、平安前期の『新撰
字鐘』(892年)という本に出ています。また同時代の『延喜式』(927
年)には、武蔵国、下総国から種子を薬として朝献していたことが
書かれているそうです。

 江戸中期元禄時代の本『本朝食鑑』(平野要大著)や『農業全書』
(宮崎安貞著)にも「はうきくさ」は葉を食(めし)にもし、あえも
の、あつもの、種々料理に用ゆ。ほうき用として農家に植えおくと
よし。実は地膚子(じぶし)といって薬に使用――とでています。

 この実は強壮・利尿の漢方薬。また水につけ保温した種子は、発
芽直前のものを「とんぶり」の名で秋田県の名物になっていて、納
豆などにまぜて酒の酒のさかなにします。
アカザ科バッシア屬(かつてはホウキギ属として独立していた)の
一年草
(078)

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夏編(8月)・第4章「落雷で 静かになる 雷おやじ」

(3)イトトンボ

 池や沼の水草の上に、イトトンボが飛んでいます。風でも吹けば、
吹き飛ばされそうな弱々しいトンボです。

 百科事典によれば、昆虫網(こんちゅうもう)トンボ目イトトン
ボ科のトンボ類をさしますが、広義には、均し亜目のカワトンボ群
を除いた小形で、細身のアオイトトンボ科やモノサシトンボ科など
を含んだ総称だとしています。

 しかし、こんなに難しいことを言わなくても、われわれシロウト
は、糸のように細いトンボがヒラヒラ……みんなイトトンボなので
す。

 それでも気になり、図鑑を見ます。イトトンボは、日本に27種
もいて、小さいのは23ミリから、大きいのは45ミリまでいるそう
です。

 代表的なのに、モノサシトンボ、キイトンボ、アオイトトンボ、
アジアイトトンボ、クロイトトンボがいます。
(079)

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夏編(8月)・第4章「落雷で 静かになる 雷おやじ」

(4)ヒマワリ 

 アメリカ原産の一年草。花が太陽に向かって回るというのでつい
た名前だそうですが、実際には回らないというから困ります。コロ
ンブスのアメリカ発見後、スペイン人がヨーロッパに伝えたそうで
す。
 アメリカのカンザス州の州花であり、ペルーの国花だといわれて
います。
(080)

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夏編(8月)・第4章「落雷で 静かになる 雷おやじ」

(5)カラスムギ

 畑のふちや、荒れ地にカラスムギが小穂を垂れ下げています。西
アジアからヨーロッパ原産で、オートミールの原料であるエンバク
の原種だとされています。

 日本へは、ムギといっしょに伝わったのだそうです。カラスムギ
は、チャヒキグサともいうそうです。カラスムギは、カラスガ食べ
るようなムギのこと。

 チャヒキグサは穂を広げ、のぎにつばをつけて指にたて息を吹く
とクルクル回ります。茶をひいているようなので、この名があると
いうす。

 小穂を取り、ツバメを作ります。広げた包えいは羽、2本ののぎ
はツバメの尾に見立てます。また、茶ひきの要領で磁石に。のぎの
針がなかなか北を向かないのがユニークなところ。

 毛虫遊びもできます。なめてぬらした腕に穂をのせ、指先で皮膚
を動かすと「虫」はモゾモゾはい出します。
(081)

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夏編(8月)・第4章「落雷で 静かになる 雷おやじ」

(6)トウガン

 林道を歩いていると、こんな奥の方に……と思うような所にも畑
があります。その畑にゴロンと一つ大きなトウガンがころがってい
ます。

 今はあまり食べませんが、かつては、煮物、汁の実、あんかけ、
砂糖漬け、かす漬けとしてよく食べられました。

 トウガンは、熱帯アジアの原産。日本では、平安時代に、すでに
栽培されていて、『本草和名』や『倭名類聚抄』という平安初期の
本にも出てきます。

 『本草和名』には白冬瓜、一名冬瓜、和名加毛宇利(かもうり)
と記されています。トウガンは冬瓜(とうが)が本当で、なまって
いつの間にかトウガンとよばれたもの。

 冬瓜とは長く貯蔵ができ、冬にも食べられるとか、冬に種をまい
たものがうまいからとか、諸説があります。

 カモウリのカモは、毛皮のことで、果実に毛があるからというこ
とです。
(082)

 

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第5章 テトラポット 夏の終わりの 涼しぶき

夏編(8月)・第5章「テトラポット 夏の終わりの涼しぶき」

(1)イソギンチャク

 広い海の上にカモメが飛んでいます。波が岩にくだけ、しぶきが
顔にかかります。真夏、あんなに混み合っていた海も今はうそのよ
うです。

 岩の間や浅い海の底に、イソギンチャクが波に揺れています。花
びらのような触手の真ん中に口があり、流れてくる死んだ小魚やプ
ランクトンを捕まえて食べています。ふんもまた口からはき出しま
す。

 イソギンチャクは、体の中に海水を入れて体をふくらませるのだ
そうです。どおりで、指を口の中へ入れたりすると体中のみずを外
へ出してすばやく小さくなります。

 体中に刺胞をもっているので、外敵はあまりいませんが、チョウ
チョウウオ類やタラ類には食べられるといいます。足盤筋を使って
動けるとはいえ、一時間に数aというスローモーさです。
(083)

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夏編(8月)・第5章「テトラポット 夏の終わりの涼しぶき」

(2)カニ

 砂浜や岩浜に、カニがチョロチョロ歩きまわっています。捕まえ
ようと手を伸ばしても、岩のすき間や深みに逃げ込まれ、なかなか
思うようにはいきません。

 カニの足は10本あり、そのうちの2本ははさみになっています。
一口にカニといっても、深い海底にすむ、料理に使うようなカニ、
川にすむもの、干潟や砂浜のもの、磯のものなど、いろいろです。

 潮の干いた河口の干潟でたくさんのカニがおどりをおどっていま
す。よく見ると、穴の周りでそれぞれ、集団でダンスをおどってい
るように、はさみを上げたり下げたり……。

 これは行動学的にはまだわかっていないのだそうです。わかって
いようといまいと、当のチゴガニには関係ありません。みんなダン
スに夢中です。
(084)

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夏編(8月)・第5章「テトラポット 夏の終わりの涼しぶき」

(3)ヤドカリ

 ヤドカリも、海辺の人気者。ヤドカリというくらいですから、ほ
かの動物の宿を借りてすんでいます。たいていは、まき貝類の殻の
中に入っています。

 そして、大きくなってきゅうくつになると、自分の体にあった殻
を探します。まず、足でその殻をよく調べます。はさみで大きさを
はかり、中にあるゴミなどをきれいに掃除し、全体に安全であるこ
とを確かめてから、殻の中におなかを入れます。

 たまには、一つの殻を二匹が奪い合うこともあって、弱い方は外
へはさみ出され、スゴスゴ別の殻を探しに行くのも見られます。

 ソメンヤドカリのように、殻の上にイソギンチャクを背負うもの
もあります。これは、イソギンチャクにとっては移動に、ヤドカリ
にとっては、外敵からの防御にそれぞれ役立っているのです。
(085)

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夏編(8月)・第5章「テトラポット 夏の終わりの涼しぶき」

(4)フナムシ(086)

 

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第6章 プカリプカリ 布袋様も 水に浮く?

夏編(8月)・第6章「プカリプカリ 布袋様も 水に浮く?」

(1)ホテイアオイ

 ジリジリと暑い昼下がり、大きく育った雑草は、草いきれがもの
すごく、池にはホテイアオイが咲いています。

 紫色の花、六つの花被片の上に向いた一つは大きくなっていて、
真ん中に黄色い点があってきれいです。葉柄がふくれ、布袋様のお
なかのようなミズアオイなので、ホテイアオイというわけです。

 ふくれた葉柄の中には、空気が入っていて、浮き袋の役目をして
います。ですから、いくら水の中に押し込んでもすぐ浮いてきます。

 原産はブラジル。観賞用に栽培していたものが野生化していつの
間にか、こんなに増えてしまいました。

 水の汚れをきれいにするというので、汚くなった沼などに群生さ
せて実験しているとか。。もし失敗だとしても、ホテイアオイのせ
いではありませんヨ。
(087)

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夏編(8月)・第6章「プカリプカリ 布袋様も 水に浮く?」

(2)サンショウウオ

 山の谷川や沢にサンショウウオがすんでいます。漢字で山椒魚と
書くそうです。ウオという名前がついていますが、魚ではなく、イ
モリやカエルの仲間です。食べ物はミミズや水中の小動物。

 サンショウウオの名前の由来は、この種類には、サンショウの気
があるからとも、サンショウの木に登って、その皮を食うという俗
説からきているという。

 そのほか、サンショウウオの膚が、サンショウの木の皮に似てい
るからという説もあります。

 ある年の夏、北八ヶ岳の双子池へ行った時のこと。山小屋は地元
の中学生の集団で超満員。食堂のすみに寝ましたが、誰が鼻血を出
した、やれ喘息がどうのと大騒ぎ。とうとう一睡もできず、次の日、
眠い目をこすりながら池の中にジッとしているサンショウウオを見
ていたのを思い出します。
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夏編(8月)・第6章「プカリプカリ 布袋様も 水に浮く?」

(3)ヒグラシ

 早朝や夕方、おなじみのカナカナカナ……の鳴き声が木立にの中
に響きます。透き通った羽、赤褐色または栗色、緑色や黒色の斑紋、
雄の腹部は大きく、中が空洞で、共鳴室になっているそうです。

 雌は、この共鳴室がなく、小さく、先端がとがっています。曇り
の薄す暗い日にも、夕方と間違えるのか、突然、鳴き出すことがあ
ります。

 ヒグラシは、れっきとした日本特産だそうで、本州、四国、九州
におり、北海道は南端部だけだそうです。

 毎日、机にばかり向かっていると、どうしても運動不足になりが
ち。そこで、近くの神社の階段でトリーニング。周りの木々からは、
セミの合唱。

 ニイニイゼミから始まって、アブラゼミ、ミンミンゼミから、ツ
クツクボウシ、ヒグラシが鳴き始めると、夏もそろそろ終わるんだ
なと感じます。
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夏編(8月)・第6章「プカリプカリ 布袋様も 水に浮く?」

(4)ヤマカガシ(090)

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夏編(8月)・第6章「プカリプカリ 布袋様も 水に浮く?」

(5)クモのけんか

 背中に黄色い太い横縞のあるコガネグモの雌を、二匹同じ巣には
わせます。すると、モーレツなけんかが始まります。

 私の子どもの頃、このクモをジョロウグモと呼んでいましたが、
図鑑で調べてみると、ジョロウグモは、別の種類でした。

 このクモのけんかを名物として、お祭りにしている地方もありま
す。
(091-1)

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夏編(8月)・第6章「プカリプカリ 布袋様も 水に浮く?」

(6)腹切りクモ

 ブロックの塀や木の幹の根元に糸の袋のようなものが地面にのび
ています。ジグモの巣です。

 その周りを掘り下げ、巣の底をつつきます。あわてたクモが、袋
の中を上に登ってくる所を捕まえます。このクモ(雄)の体を二つ
に折りまげるようにし、頭を腹部に近づけます。

 するとナント!牙を自分の腹部に突き刺し、切腹します。そこで、
腹切りグモとか、サムライグモなどの名があります。
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夏編(8月)・第6章「プカリプカリ 布袋様も 水に浮く?」

(7)オモダカ

 夏の太陽の下、むせ返るような草いきれの水辺や田んぼ・沼など
で、細く3つに分かれた変わった葉っぱを見つけます。そばに直立
した花茎にパラパラと白い小さな花が咲いています。オモダカの葉
と花です。

 矢じりのような葉は葉脈が目立つため、なお細く見えます。オモ
ダカとは矢じり形の葉の下側が、左右に広く裂けたさまが面高(お
もだか)な人の顔に似ているからだそうです。

 さらに根元から生える葉柄が長いため、なお細身の人の顔に似て
います。葉柄は長さ30〜70p、3つに分かれた葉の先端は鋭くとが
っています。

 夏から秋、葉の間から20〜80pの長い花茎を出して総状花序(フ
ジのように柄のある花が軸から離れて互い違いについて房になる
形)をつくり、1節に3個ずつ輪生、3枚の白い薄い花弁の花を次
々に咲かせます。

 3枚の花弁は円形白色で爪があり、径約8ミリ。花は単性花で花
序の上の方には雄花があり、黄色い雄しべがついています。雌花は
その下部につき、花弁の中に心皮がたくさん集まって緑色の球形に
なっています。オモダカの花は朝開き、夕方しぼむ1日花です。

 オモダカの葉の形は印象的なため、昔から家紋や衣服の文様にも
なり、花とともに美しいため生け花にも使いますが、水田の雑草と
して農家に嫌われる存在。除草剤で次々に駆除され、最近は少なく
はなりましたが、それでもしぶとく生きつづけています。

 秋になると、株元から走出枝(ストロン)が伸びその先に塊茎が
つくられます。この塊茎を大きくなるよう改良されたのが、正月料
理になくてはならないあのクワイなのだそうです。
沢瀉(おもだか)をうなぎが濁す沢辺かな 嵐蘭
・(オモダカ科オモダカ属の多年草)

★【データ】
 古くから家紋や衣服の文様にもなっているオモダカは、沼などの
水辺や水田に多い。水田雑草として除草剤を使われ、少なくなって
はいるが、いまもしぶとく生きつづけています。

・【名前】矢じり形をし、下側が左右に広く裂けた葉身の形が面高
な人の顔に似ることに由来(『世界の植物』)。

・【花】六月から十月、葉の間から高さ20〜80pの花茎を出し、総
状または複総状円錐花序をつくり、その上にぺらぺらな3枚の白い
花弁を持つ花を次々に咲かせます。朝開き、夕方しぼむ一日花を咲
かせます(『日本大百科全書』)。

 オモダカ属の花は原則として単性花で、一節に三個ずつ輪生して
咲きます。花序の上部につく雄花は雄しべがたくさん集まってつき、
下部につく雌花は、心皮がたくさん集まって緑色の球形になってい
ます(『世界の植物』)。3枚の花弁は、円形白色で爪があり、径約
8o。

・【形状】葉は根元から叢生し、葉柄は30〜70p、秋になると、株
元から走出枝(ストロン)が伸びその先に塊茎がつくられます。こ
の塊茎を大きくなるよう改良されたのが、正月料理になくてはなら
ないあのクワイです(『世界の植物』)。
(092)

 

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8月終わり