夏 編 7月

●目次

第1章 文扱い月今では携帯かEメール
 ・(1)文月 ・(2)クズのトッカン ・(3)ヒルガオ
 ・(4)オヒシバ ・(5)メヒシバ ・(6)マコモ

第2章 黄褐色の花 黄色い実になるツチアケビ
 ・(1)ツチアケビ ・(2)シシウド ・(3)シダ
 ・(4)クワ ・(5)フシグロセンノウ

第3章 あの高さなんとか捕れぬかギンヤンマ
 ・(1)トンボ捕り ・(2)テントウムシ ・(3)ナス
 ・(4)力ラスウリ ・(5)ハエトリグモ
 ・(6)影くっついた

第4章 真っ青な空 3000メートルのお花畑
 ・(1)お花畑 ・(2)ライチョウ ・(3)ケルン
 ・(4)コマクサ

第5章 太陽、木の根自然が教える西東
 ・(1)方位 ・(2)コケモモ ・(3)ご来光
 ・(4)カモシカ ・(5)クロユリ ・(6)山の神

第6章 やける地面 葉陰で大きい カボチャの花
 ・(1)カボチャ ・(2)フウセンムシ ・(3)ハンミヨウ
 ・(4)キリギリス ・フジザクラ(果実)

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第1章 文扱い月今では携帯かEメール

夏編(7月)・第1章「文扱い月いまでは携帯かEメール」

(1)文月

  7月の異名・文月(ふみつき・ふづき)は本来は旧暦の7月のこ
とですが、いまの暦でも使っています。文月は、文扱い月の略した
ものといわれ「七月には、文書を通わせて、消息を知らせるので文
月というとの説もある」と昔の本に出ています。

 いまなら、手紙もパソコンやケイタイのメールでしょう。しかし
もともと、睦月、如月、弥生など1月から12月までの異名は、「稲
禾成熟の次第を追って名づけたもの」という説もあります。

 7月のふみつき(文月)は、イネの穂がふくらむころなので、穂
の「含み月」(「大言海」大槻文彦著・1932年〜37年刊の国語辞書)
または「穂含月(ほふくみつき)」(「語意考」賀茂真淵)といって
いたものが転化して「ふみつき」になったものだそうです。

 農業技術が進歩したいまでも日本では、事情が少し違うかも分か
りませんが、稲作は基幹産業、昔から月の異名にまで取り入れられ
ていたのですね。

 文月の語源についてそのほか、「たなばた」に牽牛、織女に詩歌
を献じたり、またこの月は、文書を通わせて消息を知らせあうの
で、「文扱い月」、書物を夜気にさらすため「文ひろげ月」といっ
ていたものがなまったとの「下学集」や「古今要覧集」(平田篤胤)
の説もあります。

 また珍しいところでは、この月はみんなが親の墓まいりに行く
から「親月(ふづき)」だという説もあります。そういえば、7月
の異称に親月(しんづき)というのがあります。

 ついでながら英語のジュライは、7月はエジプトの太陽暦をもと
にユリウス暦をつくらせたジュリアス・シーザーの生まれた月なの
で、その名をとってつけられたのだそうです。

 ローマ暦での7番目の月の意味セプトは、セブンの語源で、いま
のセプテンバーで9月。

 しかし、7月のジュライと、8月のローマ初代皇帝オクタビアヌ
スの異名・アウグスツスからとったオーガストが間に入ってしまっ
たので、結局、セプテンバーは9月にずれてしまったということで
す。
(031-1)

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夏編(7月)・第1章「文扱い月いまでは携帯かEメール」

(2)クズのトッカン

 若い実はエダマメに、熟した豆は煮豆・炒り豆・ひたし豆・豆モ
ヤシ・納豆・豆腐・みそ・しょうゆ・またゆばやお菓子の原料に、
油はてんぷら油、サラダ油と用途の広いダイズです。

 ダイズの祖先は東アジア、日本にも自生するツルマメというもの。
古代から食糧にされていたという。それがいつしか、いまの栽培ダ
イズに改良された。その起源地は中国東北部からシベリヤ、アムー
ル川流域と考えられています。

 この栽培型ダイズが紀元前3世紀から紀元後7世紀にかけて中国
南部から朝鮮半島南部、日本、東南アジアに伝わったというのです。

 畑は、いまエダマメが収穫期。ビールを前に、お父さんが待って
いるかも知れません。畑にすててあるダイスの葉を一枚、シッケイ
します。

 それをゆるく握った手の握りこぶしの中に入れ、上からたたいて
トッカン遊び。ベつにトッカンと音はしませんがなんとなく心地よ
いポンという音がします。あまり葉をたくさんとると、農家のおば
さんににらまれます。
(031-2)

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夏編(7月)・第1章「文扱い月いまでは携帯かEメール」

(3)ヒルガオ

 夏の暑い盛り、野原や道ばたに淡いピンク色の花を咲かせるヒル
ガオ。朝花を咲かせるアサガオに対して昼に咲かせるヒルガオ。夜
咲かせるヨルガオなんてのもあります。

 茎はツルになって伸びて、葉や茎を切ると白い汁が出ます。ヒル
ガオのツルは右巻き(下から見て時計回り)で、垣根やまわりのも
のにからんで1日限りの花をつけます。ヒルガオは花が咲いても実
がならず、根で繁殖します。

 その根は土のなかに白くて細い茎を伸ばしてふえていき、掘ると
この地下茎がすぐ切れてしまい、そこからまたふえます。とくに花
や葉が小さいコヒルガオははびこり、農家からやっかいな雑草にさ
れています。

 両方ともアメフリアサガオ、アメフリバナなどと呼ばれ、花をむ
しると雨が降るから摘んではいけないとされます。強い生命力に似
合わない「かれんな花」をかわそうと思う心のあらわれでしょうか。

 薬草として,膀胱炎に利尿剤、打ち身の治療、強精剤、女性の不
感症に効果があると、薬草の本に出ています。

 若葉をおひたし、和え物、炒めものにして食べられます。また草
を乾燥させて薬草にもなります。花を5本の指で包むように軽く握
り下から叩いて花ロケット遊びができます。

 また、茎と葉はゆでて、混ぜごはんにする人もいるそうです。お
茶の代用にもなるとか。昔の本「東医宝鑑」には「根ならびに毛節
は蒸して食うに堪えたり。味甘美……」とあります。
(032)

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夏編(7月)・第1章「文扱い月いまでは携帯かEメール」

(4)オヒシバ・メヒシバ

 ジリジリと真夏の太陽の光が突き刺す畑や荒れ地、また公園や舗
装した道路の割れめにまでオヒシバがたくましく茂っています。チ
カラシバとも呼ばれるほど強い株で、引っ張ってもなかなか抜けず、
お父さんやお母さんからも嫌われています。

 オヒシバは、漢字で雄日芝と書き、よく似ているが弱々しく見え
るメヒシバ(雌日芝)に対して大きいので雄の字をあてたものだそ
うです。ヒシバ(日芝)とは夏のジリジリした日差しにもかかわら
ず、よく茂るためにつけられた名前だといいます。

 もともとは北アメリカから西アジア、インドあたりの原産といわ
れますが、現在は世界中の熱帯から温帯まで広がっているといいま
す。草の丈は30〜80センチ。夏、葉の間から花茎を出し、緑色の手
のひらのような花序をつけます。

 この草を改良して栽培品にしたのがシコクビエという作物。以前
は山間部で家畜のエサとして栽培していたそうです。名前は主産地
の四国の地名をとったものだとか。またインド北部や中国の内陸部
では、いまでも主食用に栽培されているそうです。

 この草を使って草花遊びをします。先ず穂先をさかさに丸めほそ
い草の葉で軽くしばります。しばったところをちょいと上に持ち上
げるとパラソルができあがります。

 また穂を1本ずつ皮をつけたまま、ゆっくりとむいていき、全部
たれたら頭にさしてかんざしにします。昔の子どもはこんなことを
して自然に親しんで遊びました。
・イネ科オヒシバ属の1年草
(033)

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夏編(7月)・第1章「文扱い月いまでは携帯かEメール」

(5)マコモ

 沼や川、池などの水辺に、マコモが群生しています。マコモは、
大きいものでは、3mにもなるものがあるという。

 葉は編んでお菓子を包んだり、七夕様に飾る七夕馬、お盆の時、
祭壇に敷くござや、お墓に供えるおぜん、盆馬などを作ります。

 まず茎を適当な長さに切り折り曲げて馬の頭を作ります。次に首
を茎でつなぎ、たてがみを順番につなぎ、前足になる所を結びます。

胴体のうしろの方をしばって後ろ足とシッポに分けます。最後に胴
体をふくらむように短い茎を中に詰めてできあがりです。

 また、マコモの幼い茎は、タケノコを小さくしたようなもの。こ
れにクロボ菌が寄生すると、大きく太り、葉も伸びず、やわらかい
タケノコのようでおいしく食べられるそうです。

 これを菰角(こもづの)といい、中国料理の材料にされるほか、
かん詰めにも加工されています。中国や台湾では、菰角は栽培され
ているとききます。人間、なんでも食べるものです。

 アメリカの五大湖周辺に生えているマコモ(ワイルドライス)か
ら採れるコメは、高価な食べ物として使われるそうです。
(034)

 

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第2章 黄褐色の花 黄色い実になるツチアケビ

夏編(7月)・第2章「黄褐色の花 黄色い実になるツチアケビ」

(1)ツチアケビ

 秋の山を歩いていると、林の枯れ葉の間から、赤いバナナのよう
なものがたくさんなっているのを見つけます。ツチアケビの果実で、
その形がアケビに似ているのでツチアケビ。色が赤いので山トウガ
ラシというのだそうです。
 しかし、どちらかというとウインナーソーセージの方がピッタリ
の感じです。茎は坊さんや修験者が持っている杖のようなの形なの
で「山の神の錫杖」とも呼ばれています。

 夏、地面の下をはっている根茎から、ところどころに茎を出し、
高さ50センチから1mに伸びます。そして短い柔らかな毛の生えて
いる枝先に黄褐色の花をたくさんつけます。花は半開きで、直径2
センチくらい、がく片は3個で長楕円形。肉質で斜開、花弁は2個
でがく片に似ています。

 ツチアケビは葉緑素をもたない無葉ランの多年生植物とか。つま
りランの仲間なのです。

 ツチアケビも薬草です。強精、淋病、肺結核、糖尿病によいとか
でよくとっている人を見かけます。よく知っているご老人も、この
果実でツチアケビ酒を作るんだと採っていました。そのせいか、い
までもかくしゃくとして山歩きをしています。ただしいまだ味見を
させてもらったことなし。
・ラン科ツチアケビ属の腐生植物
(035)

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夏編(7月)・第2章「黄褐色の花 黄色い実になるツチアケビ」

(2)シシウド

 シシウド。かたくて丈夫なウドなので、イノシシが食べるのにち
ょうどよい、というので、こんな名前がつきました。真っ青な空、
白い雲わく高原。まだ若いシシウドの花が開ききらず、薄い皮をか
ぶっています。もう何日かすると、傘のような白い花を咲かすでし
ょう。

 このシシウドで水鉄砲をつくります。竹で水鉄砲をつくるのと同
じです。中が空洞になっている茎を片方だけ節を残して切り、節の
真ん中に小さい穴をあけて筒をつくります。

 次ぎに差し込む軸棒をつくります。筒の内径にあわせた細いシシ
ウドの茎を見つけ、節の先を少し残して切り、その部分を小石でよ
くたたき毛のように筋状にします。それを筒に差し込み水につけ、
軸棒を引いて水を吸い込ませ勢いよく押し出して、水鉄砲遊びをし
ます。

 シシウドは、セリ科の多年草。花を咲かす茎が出るまで4、5年
もかかり、いちど花を咲かせてしまうと、その一生が終わるのだそ
うです。

 そんなことを聞くと、この茎で水鉄砲を作るなどとは,トンデモ
ナイこと。大きくなるシシウドですが、せいぜいかわいがりましょ
う。

 シシウドの根は薬草として利用されます。リュウマチに頭痛,中
風,また、坐骨神経痛に効力あるとか。若芽はおひたしに……あッ,
ごめん、ごめん。
セリ科シシウド属の多年草
(036)

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夏編(7月)・第2章「黄褐色の花 黄色い実になるツチアケビ」

(3)シダ 

 人間がまだ、地球上に現れていなかった大昔、木のように大きく
なり、いばっていた、シダ類。それが亡びて、いまのような小さな
ものになったという。

 タネで増える普通の植物と違い、シダ類は葉の裏面に胞子をつく
り、それを風で飛ばして仲間を増やしていきます。

 ー般に、シダ類というと、山菜のワラビ、ゼンマイから薬用のオ
シダ、装飾用のウラジロ、細工物用のシダから床柱など、装飾用建
築材利用されるヘゴ、マルハチなども含むという。

 シダの葉柄を使って飛行機を作ります。2対の羽片を2段残し、
前方の小羽片をもぎ取り、うしろだけ葉を残します。前の羽片を前
翼、うしろの羽片を後翼とします。そして4本の羽片の末端をちぎ
ってできあがり。いかにも大空を飛びそうな飛行機ができました。

 飛行機はゼンマイが大きくなったものでつくるとかっこいい。前
の葉をとると、大きなうしろの葉がズラッと並んでほれぼれするほ
ど。空にむかって力いっぱい飛ばします。ただし衝突防止装置がな
いのが欠点。

 また、丈夫な葉柄(茎)を葉のついた羽片をもぎ取ってしなわさ
せ、草の葉で両端をしばって弓をつくります。作ったら、矢をつが
えてジェット機を撃ち落としてやろう。

 もともとシダとはウラジロのことをいっていたという。ウラジロ
は葉の裏が白いためついた名前。羽片が垂れ下がる(しだる)ので
シダの名前ができたという。

 またウラジロは「歯垂(しだ)る」とか「齢足(しだ)る」など
と長生きの縁起物として正月の注連飾りにも使われています。維管
束植物のうち、種子をつくらないものの総称
(037)

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夏編(7月)・第2章「黄褐色の花 黄色い実になるツチアケビ」

(4)クワ

 山里の裏山で、口のまわりを紫色に染めたハイカーに出会います。
クワの実をほおばりながら山から降りてきたのでしょう。どのあた
りにあるのか今から楽しみです。

 クワの葉は、ご存知、養蚕農家がカイコに与えるために栽培する
もの。今では、人手も加えられなくなり半野生化したクワも多くあ
ります。果実は葉のもとの方に隠れるようになっています。

 さっそく、口にほおばります。黒っぽいほど熟していて、甘くお
いしい。半野生化したものは、農薬の心配もなく安心です。

 クワは中国北部から朝鮮半島にかけての原産とか。古い時代に日
本の渡来したらしく『古事記』や『日本書紀』にも出ています。

 クワとはカイコが食う葉、つまり「食葉(くわ)」だという説と、
カイコの葉(香葉)だという意味の「コハ」だという説があります
が、いずれにしても昔からクワはクワ。子どもはその実をねらい、
大人はそれを食べてつくるカイコの繭をねらいます。

 クワはクワ科クワ属の総称で、日本にはヤマグワ、カラグワ、ロ
ソウなど種類があり、これらがそれぞれ入り混じってたくさんの品
種を作り出し、栽培品種は百とも二百ともいい、その他を入れると
一千種は下らないというから、もうながなんだかワケがわからなく
なります。

 クワは、また、山菜でもあり、薬草(木)でもあります。若葉を
ゆでてゴマ和え、辛子和え、揚げ物などに利用します。葉を乾燥し
てつくるクワ茶は補血強壮、動脈硬化によく、根の皮からとった桑
白皮(そうはくひ)は漢方で消炎性利尿・緩下剤になるそうです。

 また、肺にうっ血のあるようなときの咳止めによいと、モノの本
に出ています。
・クワ科クワ属の落葉高木
(038、039)

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夏編(7月)・第2章「黄褐色の花 黄色い実になるツチアケビ」

(5)フシグロセンノウ

 山地の林の下などに赤い花を咲かせるフシグロセンノウはよく目
立ちます。

 草の高さは40〜90センチくらいで、茎の節が太く、黒っぽいの
でフシグロセンノウです。センノウは同じナデシコ科の別の花。京
都の仙翁寺(せんのうじ)で見つかった花だそうです。

 フシグロセンノウは、フシともオウサカソウとも呼ばれます。フ
シとは節のことで、黒くて太い節からきたもの。またオウサカソウ
は、広州(滋賀県)と城州(京都府)の境の逢坂に多くあるため逢
坂草と名づけられました。

 本州から四国、九州にわたり、広く分布しており、日本列島の特
産種。山地の木の下、どちらかというと日陰地の草の間によく生え
ています。葉は茎から2枚ずつ向きあってついており、先端がとが
った卵形またはだ円形。

 夏、枝分かれした茎の先に、まばらに数個の花をつけます。花は
朱赤色で、径が5〜6センチと大きく、花弁は5個で平らに開き、先
端がわずかにへこんでいます。

花弁の基部には2個の小裂片があって、下方は長い爪となっていま
す。八重咲き品種をザクロガンビ、白花品種をシロガネセンノウと
よんでいます。

 かなり前、小学生の娘、息子をつれ長野県八ヶ岳の中山峠からミ
ドリ池へ下った時のこと。うだるような暑さ、草いきれの中によく
目立つフシグロセンノウの赤い花を見つけたことを思い出します。
・ナデシコ科センノウ属の多年草
(040)

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第3章 あの高さ 何とかとれぬかギンヤンマ

夏編(7月)・第3章「あの高さ 何とかとれぬかギンヤンマ」

(1)トンボ捕り

 ムギワラトンボにシオカラトンボ。いろいろなトンボも出てきま
す。網で捕るのは、もうダサイ。止まっているトンボに人差し指で
クルクル。これはみんな知っている方法。

 次は、竹ぼきで押さえつけます。それからとりもち。モチノキの
皮をとってきて、水に10日以上つけておきます。石の上でやわら
かくなった皮をトンカチでつぶす。つぶした固まりを水の中でほぐ
すと、トリモチがとれます。それを竿の先につけてトンボ捕り。

 青い空に青くひかりながらヤンマがゆうゆうと飛んでいます。竹
竿ぐらいでは、とてもとどきません。なんとか捕まえられないもの
か。子どものころ、真剣に考えたものです。

 石と石を糸で結び、ヤンマが飛んでくる前にほおります。えさと
間違えたヤンマは、糸にまきつき、落ちてくるという寸法です。ど
うだ、パソコンのゲームより面白いぞ!
(041)

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夏編(7月)・第3章「あの高さ 何とかとれぬかギンヤンマ」

(2)テントウムシ

道ばたの草の茎にアブラムシがたくさんついて、汁を吸っていま
す。アリマキともいい、農作物の害虫です。

 それを退治してくれるのが、テントウムシ。昔から人人に親しま
れ、よくマークやカット、イラストにも使われたりします。それは、
呼び名にもあらわれ、フランスでは「神の心をもつ虫」、イギリス
では「マリアの鳥」、イタリアでは「マドンナの娘」などと、かれ
んな愛称がついています。

 テントウムシといっても、その仲間は日本だけでも100種以上。
それぞれに模様が違います。とくにおなじみなのはナナホシテント
ウです。

 アブラムシを食ベるテントウムシを見ていたら、どこからかやっ
てきたアリが、突然攻撃し、追いはらってしまいました。アリはア
ブラムシの「甘い汁」を吸ってばかりいるのではないのですね。
(042)

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夏編(7月)・第3章「あの高さ 何とかとれぬかギンヤンマ」

(3)ナス

 みんなは「親の意見とナスビの花は、千にひとつのむだもない」
という、ことわざを知っていますか。ナスはそれほどよくなる作物
で、ナスの名は「為す」からきているともいわれます。

 お母さんからペケナスをもらい、ちょうちんやお面をつくって遊
びます。ペケナスなのでまがっていたりするけど気にしません。カ
ッターを使ってイラストのような穴をあけて中味をほじくり出しま
す。

 きれいにとれたら、底にくぎをさしてろうそくを立てればちょう
ちんの出来上がり。目や鼻の穴をほればお面になります。

 お父さんやお母さんに手伝ってもらい、ろうそくに火をつければ、
ほら、こんなに不気味になったぞ〜。でも火にあぶられたナスのお
面は中が焼け、しなぶれてしわだらけになってしまいます。

 また、割りばしや小枝をさすと馬になります。あまりまるいナス
だと、ブタになるのでご用心。ナスやキュウリの馬は、お盆にも仏
さまの乗り物だといって盆だなに供えたりします。

 ナスはインド原産。ふつう1年草として畑に栽培されていますが、
熱帯では「かん木」せいの多年草になるそうです。奈良時代か平安
時代に中国から日本に渡って来たとされています。現地ではいまで
もにがい果実のナスが野生しているといいます。

 茎の途中に花の枝を出し、その先に紫色の花を下向きに咲かせま
す。果実は品種によって丸ナスや長ナス、ヘビナス、また色の白い
シロナスなど、いろいろな種類があります。

 薬用として歯痛、うちみ、やけどなどに使われたこともあったそ
うです。
(043)

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夏編(7月)・第3章「あの高さ 何とかとれぬかギンヤンマ」

(4)カラスウリ

 夏の夕方、木にからみついたカラスウリの花が白く暗やみの中に
浮き上がって咲いています。まるでレース飾りのようなきれいな花
です。

 カラスウリは雌雄異株で、雄花は短い総状(柄のある花が軸から
離れて互い違いについて房になる)で、雌花は単性で花序をつくら
ず、夕方から咲き始めます。

 10月ごろ、長楕円形の果実が赤く熟します。果実の中の種子は、
黒褐色で、カマキリの頭のような形をしています。また巻いた手紙
や結び文にも見えるので、一名、タマズサ(玉章)、ムスビジョウ
(結び状)とも呼ばれます。

 さらに見ようによっては大黒さまにも似ています。米俵にのって
打ち出の小槌を持った福の神に似ているとなれば、そうソマツに扱
われず、ムカシは財布の中に入れておく風習があったとか。

 カラスウリはまた薬草でもあります。漢方では根を土瓜根(どか
こん)、種子を土瓜仁(どかにん)といいます。根は通径、利尿、排
膿剤に利用し、種子は去痰(たん)、せきどめ、痛み止め、消炎剤に
用います。

 また赤い果実をとって、中のやわらかい果肉をヒビや赤ぎれ、し
もやけにつけると良いといわれています。 

 まだ熟さず青い果実を昔の子どもたちは、お盆のころとって、中
をくり抜いてからクギをさしてローソク立てにし、盆ちょうちんに
して遊びました。

赤くなった実で作るとお化けちょうちんになりますよ。また果実を
割ってみると、なかにカマキリの頭のような黒褐色の種子が出てき
ます。見ようによっては大黒さまにも似ています。

米俵にのって打ち出の小槌を持ったあの福の神に似ている……。エ
ビス様だという所もあります。そんな神さまにあやかろうと、昔は
財布の中に入れておく習慣があったそうです。たしかに財布に入れ
ておくと、なんとなくいいことがあるように思えます。

 カラスウリに対して「スズメウリ」というのもあり、ちょっと小
さい果実が白く熟します。そのほか、黄色に熟す「キカラスウリ」
もあります。
・ウリ科カラスウリ属のつる性植物
(044)

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夏編(7月)・第3章「あの高さ 何とかとれぬかギンヤンマ」

(5)ハエトリグモ

 家の板べいや壁などに、す早くはいまわるハエトリグモがいます。
よく見ると、なかなかひょうきんな顔をしています。

 ハエや昆虫に近づき、ピョンとジャンプして、上手に捕まえます。
そんなところから英語では「ジャンピング・スパイダー」と呼ばれ、
日本でも、トビスケ、ハネグモの方言があります。

 ジャンプする時、必ずお尻から糸を引くので、高いところからで
も、落ちることはなく、跳ぶ時、空中を滑走しているように見える
のです。
 ハエトリグモは、雄7_、雌10_位の大きさながら、さすがは
跳躍の天才、獲物との距離が数a離れていても飛びかかり、また、
とつじょとしてジャンプできます。

 ずんぐりした体形、太く短いあしのせいか「道化グモ」の名もあ
るそうです。
(045)

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夏編(7月)・第3章「あの高さ 何とかとれぬかギンヤンマ」

(6)影くっついた

 太陽がギラギラ輝いています。真っ白な入道雲がどこでも高くあ
がっていきます。空気が一瞬よどみ、軒下の風鈴も動きません。屋
根の影が地面にクッキリ落ちています。アシナガバチが忙しそうに
横ぎります。

 そんななか、自分の頭の影を屋根の影にソーッと近づけてみます。
もう少しというところで、ピョコッと頭の影にくっつきます。

 「りゃ、りゃ、たんこぶができた」自分の頭をさわっても、こぶ
はありません。今度は、ゆっくり影をはなしてみます。すると、こ
ぶは、スーッと引っ込みました。どうしてだろう。

 夜、懐中電灯の下でやってみます。左右の指の高さを少しかえて
近づけます。やはり、影がピョコッとくっつきます。??また寝ら
れなくなっちゃう。
(046)

 

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第4章 真っ青な空 3000メートルのお花畑

夏編(7月)・第4章「真っ青な空 3000メートルのお花畑」

(1)お花畑

 真っ青な空、雲わく稜線、夏山シーズンたけなわです。バスが登
山口につきました。後は、ひたすら山頂をめざします。

 暑い樹林帯も過ぎ、稜線に出ました。涼しい風、目の前にひろが
るお花畑。チングルマ、シナノキンバイ、ミヤマダイコンソウ、イ
ワギキョウ、ハクサンイチゲなどが咲きほこっています。

 お花畑は、雪どけから、短い夏の間に懸命に花を咲かせようとす
る高山植物たちの晴れ姿です。強い風、激しい雪などの厳しい条件
のもと大きくなれない割に、鮮やかな見事な花を咲かせます。

 もう随分前のこと。北アルプス白馬岳の花畑で咲いていたチング
ルマが、朝日岳での斜面ではもう花が終え、毛のような花柱が風に
なびき、小学3年の息子が「オバケ!」と呼んでいました。
(047)

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夏編(7月)・第4章「真っ青な空 3000メートルのお花畑」

(2)ライチョウ

 登山でライチョウに出会うのも楽しみの一つです。漢字で雷鳥と
書き、普段は、ハイマツの中にいて、雷がなるような時や、霧がか
かってきた時などに親子づれで出ています。

 ライチョウは、氷河時代の生き残りといわれ、北・南アルプス、
中央アルプスなどにすんでいます。

 かつては、白山や八ヶ岳にもいたらしく、江戸時代までの古い本
に記録があります。また昭和43年に八ヶ岳でつがいが写真に撮ら
れ、その夏、全域を調査したが、たった十数個の糞があっただけで、
見つからなかったそうです。

 ライチョウは、全然、人を怖がりません。鹿島槍ヶ岳を降りてい
る時のこと、ひなを連れた母鳥が、ゆうゆうと登山道を漫歩。私た
ちは遠慮しいしい、お先にどうぞと、立ち止まり、通り過ぎるのを
お待ちしたのでありました。
(048)

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夏編(7月)・第4章「真っ青な空 3000メートルのお花畑」

(3)ケルン

 山では、石をたくさん積んだ、ケルンがあちらこちらに見られま
す。ケルンには、山頂に登山の記念に積まれた石塚と、指導標の代
わりに積んだものとがあります。

 枝道の分岐点、水場への下降点、沢の入口、滝の高巻き地点や川
の渡渉地点などの目印であり、道標(みちしるべ)です。登山記念
のケルンはともかく、本来は指導標代わりの目印。壊したり、関係
のない所に作ったりしてはいけません。

 ケルンではありませんが、指導標でこんなことがありました。大
糸線・千国駅から山ノ神尾根を天狗原に向かいました。突然、逆方
向の指導標。いくら探しても、ほかに道がありません。

 地図にコンパスを当てても、方向は間違いないし……。ついに日
没。沢すじにビバーク。結局、指導標の間違いとわかり、直すよう
白馬大池の小屋の人に頼みました。
(049)

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夏編(7月)・第4章「真っ青な空 3000メートルのお花畑」

(4)コマクサ

風当たりの強い砂れき地にポツン、ポツンと生えていて他の草とは
いっしょに生えません。まさにシモジモの民とは同居しない女王様
なのです。

 花はピンクで下向きに咲き、細長い形は「駒草」の名前の由来ど
おりの馬ヅラです。高山植物ながら高い山ならどこにでもというわ
けではなく、南アルプス、中央アルプスにはないという。

 北アルプスでも槍ケ岳や穂高連峰にはなく、生える山でも個体数
が少ないのでそれだけに見つけた登山者の間に歓声があがります。

 その昔、難病の娘のため木曽の御岳神社に願をかけた母親が神の
お告げどおり、コマクサの花の汁を娘に飲ませたところ、不思議と
たちまち病気がなおってしまいました。この母親の名が「お駒」と
いい、薬草としてのコマクサが有名になった……信州にある伝説で
す。

 たしかにコマクサにはジセントリンやプロトビンなどのアルカロ
イドが含まれていて、かつて木曽御岳では霊草「おこまぐさ」と呼
び、コマクサを乾燥させ、御岳神社の霊薬「お百草」として参詣客
に授けていたそうです。

 実際に健胃効果、鎮痛効果があるといい、乱獲のせいか、いまは
絶域寸前。「お百草」も現在では代用品「キハダ」にとってかわっ
ているそうです。

 コマクサは7〜8月が花期。花茎は5センチから大きくてもせい
ぜい15センチ。花の長さが2センチというかわいさです。

 ピンクで細長く花弁は4個で外側の2個は先がふくらみ、本当に
馬の鼻面のようです。やがて外側の花弁の先はそり返りますが、内
側の2個は先がくっついたまま。

 葉はパセリのように細かく裂け、全体に粉がふいたように白っぽ
く、すべて地面から生える根生葉。北海道、本州の中部、北部の高
山に分布しています。

 白い花を咲かせる「シロバナコマクサ」というのもあります。
・ケシ科コマクサ属の多年草
(050)

 

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第5章 太陽、木の根 自然が教える西東

夏編(7月)・第5章「太陽、木の根 自然が教える西東」

(1)方位

 野山を歩いていて、方向がわからなくなることがあります。磁石
を持ってきていません。

 そこで、時計の針と太陽の位置ではかります。まず、短針と十二
時の方向を太陽に向けます。太陽がちょうどそれらを二等する位置
にした時、十二時の方向が南になります。したがって、六時の方向
が北、三時が西、九時が東というわけです。

 また、太陽の南中時に、木の枝から重りをつけたひもをぶら下げ
ます。これだけで、ひもの影は南北を指しています。スゴイね。

 木の枝ぶりでもわかります。枝がよく伸び、成長が早いほうが南
側。切り株を見つけます。年輪の広い方向が、だいたい南側だとい
います。岩にコケの生えている方が北だといわれていますが生育環
境で異なります。
(051)

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夏編(7月)・第5章「太陽、木の根 自然が教える西東」

(2)コケモモ

 ハイマツの下や湿原に、コケモモが群落し、花をつけています。
これも高山植物の代表とされるもの。背たけ5センチから15セン
チの小さな木に、白色で、少し、淡紅色をおびた花がつり鐘のよう
に咲いています。

 コケモモの葉は、アルプチン、ウルソン、タンニンなどの成分を
含んでいるので、乾燥して、利尿剤として淋病、腎臓病の薬に使わ
れたこともあったといいます。

 9月から10月、赤く熟した果実は食べられます。酸っぱいです
が、多汁で甘く、風味があります。この果実を小さいモモに見立て、
コケモモの名前をつけました。

 これを摘んで、塩漬けに、また砂糖漬け、シロップやジャム、お
菓子の原料にします。また、発酵させて、果実酒をつくったりしま
す。

 またコケモモの葉には、アルブチン、ウルソン、タンニンなるも
のが含まれているそうで、7〜10月ごろ採集して薬用にするとい
う。

 まず、摘んだ葉の有効成分の分解を防ぐため、熱を加えて酵素を
殺し、乾燥したものから流動エキスを作り、また、煎剤として尿道
の消毒、利尿、収れん剤としてウワウルシ葉(ツツジ科の常緑小低
木ウワウルシの葉)の代用にするのだそうです。クロマメ、ウスニ
キなどはみなコケモモの仲間だそうです。
ツツジ科スノキ属の常緑小低木
(052)

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夏編(7月)・第5章「太陽、木の根 自然が教える西東」

(3)ご来光

 ご来光を見るため、登山者たちはまだ暗いうちから、ヘッドラ
ンプをつけて、頂上に向かいます。

 たなびく雲海を、真っ赤に染め、ある一瞬、ポンと太陽が顔を出
し、光が一面に走ります。山の日の出はなんとも神秘的です。あち
らこちらから歓声が起こり、太陽を拝みます。

 昔は、ご来光を、ご来迎(らいこう)と書きました。ご来迎はご
光(こう)ともいい、本来はブロッケン現象のこと。山の上で太陽
を背に、自分の影が反対側の霧などに映る時、頭の周りに光の輪が
できます。これを、極楽浄土からの阿弥陀仏のお迎えと考え、あり
がたがられました。

 ヨーロッパでは逆に、この現象を"ブロッケンの妖怪”と呼び、
不吉な前兆としていやがられました。

 今では、ご来光といえば、単に日の出を拝むことに使われていま
す。
(053)

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夏編(7月)・第5章「太陽、木の根 自然が教える西東」

(4)カモシカ

 カモシカは、シカという字がついてもウシ科の仲間。ここにいる
のはニホンカモシカといい、雄雌ともに鋭い角があります。

 ニホンカモシカは岩場の多い所に縄張りをつくっていて、なかな
か簡単に見られません。おとなしくて、敵に追われると相手が近づ
けないような、けわしい岩場に逃げ込みます。

 山中で鋭く傷ついた立木を見つけることがあります。これはカモ
シカの角研ぎの跡で、カモシカは縄張りを表わすため、角を木にこ
すりつけたり、自分の食べたあとの技などに、眼下腺から出る透明
な液体をこすりつけてマーキングします。

 こホンカモシカは、アオシシ、クラシシ、ニクなどと呼ばれ、以
前は山地には普通にいたものといいます。

 しかし、毛皮とカツオ漁業用の擬餌針(ぎじばり)に角が適して
いるというので乱獲され、数が激減しました。

 それでも1955年(昭和30)、特別天然記念物に指定保護されて
からは、次第に増えはじめているということです。
(054-1)

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夏編(7月)・第5章「太陽、木の根 自然が教える西東」

(4-2)シカ

 私たちが山でよく見るシカは、ニホンジカのうちのホンシュウジ
カというのだそうです。秋の繁殖期に「ミューミューミュー」と雌
を呼ぶ、あの声の主です。

 雄の枝分かれした角は、なんとも立派です。何年か前、地元の山
岳会の人たちと、尊仏山荘へジュースや缶ビールを運ぶボッカのお
手伝いをしたことがありました。

 その帰り、旧道をたどってみようと、みんなで鍋割峠から北側へ
の道を下りました。だれも通らない道はすぐに崩壊しています。

 しかたなく小尾根を下り、やぶをこいでやっと尊仏の土平(どだ
いら)が間近なえん堤の所にきた時、鹿の角をみつけました。それ
をいまでも大事に飾ってあります。
(054-2)

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夏編(7月)・第5章「太陽、木の根 自然が教える西東」

(5)クロユリ

 今は昔の戦国の世。富山の殿さま佐々成政は豊臣秀吉の正室北政
所に、立山に咲くクロユリを献上しました。これは珍しい花だと北
政所は大事に花びんに活け、茶会などしてご満悦です。

 この北政所とはり合っていた淀君は、それをねたみ、白山からク
ロユリをどっさり取りよせ、廊下の竹筒にこともなげに活けたので
した。

 怒ったのは北政所。「オノレ、佐々成政。廊下に活けるようない
やしい花を幻の花と偽り、よくもわらわに恥をかかせたな。サッサ
と切腹せよ」。

 そこで成政の脳裏には3年前の腰元早百合の言葉がよぎります。
厳冬の立山越えをして家康に会い、富山城にもどってきた佐々成政
を待っていたのは、ちょう愛していた腰元早百合と、家来の間の不
義密通のうわさ。

 逆上した成政は2人を殺させます。ぬれぎぬを着せられた早百合
は死にぎわに呪(のろ)うのでした。「立山に黒いユリが咲いたら佐
々家は滅びるであろう」。

 成政は北政所の怒りを買い切腹。早百合の言った通り、クロユリ
の花が原因で佐々家は滅亡してしまったということです。

 この伝説に出てくるようにクロユリも高山植物。花は黒味のある
濃い紫色の褐色で、一時はやった「黒百合は恋の花ァ……」の歌と
はほど遠いもの。

 形はユリに似ていますが小さく下向きに咲き、あまり目立ちませ
ん。匂いもユリのように快くなく悪臭があります。

形は広いつり鐘形で直系2、3センチ。花弁は6個、7〜8月が花
期。

 クロユリは茎の高さ20センチ。葉は刃針に似た披針刑。数個ず
つ輪の形に茎につく輪生です。本州中部以北の高山帯草原に分布。

 北海道の海岸のものは染色体が三倍体の36とかで花が大きく花
つきもよく、昔から鱗茎をゆでて混ぜご飯にしたり、乾かして不時
の食料にしたとか。
・ユリ科バイモ属の多年草
(055)

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夏編(7月)・第5章「太陽、木の根 自然が教える西東」

(6)山ノ神

 山に登る時や下る時など、登山道のわきに「山の神のほこら「」
を見かけます。地図にも格好の目標として記入されています。

 たいていは、コケむした石碑や壊れた木のほこら。それでもしめ
なわやごへいを供えてあるものもあります。

 山の神とは、文字通り山を司る神。「ヤマノカミ」というのは、
この神様からきています。普段、山の上にいて、春、里に下りてき
て、田の神に変身、農作物の実りを手伝い、秋、また山の神になり、
山上に帰る……農村で考えられている山の神です。

 山村で考えられる山の神は変身をせず、獣や樹木を支配する神。
ヤキモチやきの醜い女神で、オコゼという魚が好きだとか、十二サ
マだとか大山祇命(おおやまずみのみこと)、木花咲耶媛命(この
はなさくやひめのみこと)だともいわれています。
(056)

 

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第6章 やける地面 葉陰で大きい カボチャの花

夏編(7月)・第6章「やける地面 葉陰で大きい カボチャの花」

(1)カボチャ

 カボチャの鮮やかな黄色い花もよく目につきます。ハチが体中、
花粉だらけになってもぐり込んでいます。カボチャは中央アメリカ
原産とされる1年草。夏、葉腋から径10センチくらいの5裂合弁
花を咲かせます。

 花は雌花と雄花があって、雄花には長い花柄がありがく筒は筒状、
雌花の柄は太く短く花の下に丸い子房があり、がく裂片はせまい。
同じ株に雄花と雌花がつく雌雄同株。ふつうは昆虫に花粉を運んで
もらう虫媒花ですが、雄花の数が少ないので人工媒助を行います。

 カボチャの葉柄をつなげてカボチャの噴水を作ります。まず、葉
をもぎ取り、葉柄だけを残し、太い方に別の葉柄の細い方を差し込
み、順に長いホースを作ります。

 初めと終わりは曲がった葉柄を使います。そして高い所のバケツ
からぶら下げます。最初は、葉柄に口をつけて、水を吸いだしてや
るのがコツ。ホーラ、水は勢いよく吹き出します。

 また出来そこないの小さなカボチャをお母さんからもらってはん
こをつくりましょう。図のように「へた」のまわりを四角にナイフ
で切り、下側の面を削ってはんこにします。なるべく簡単な図柄を
選びます。失敗しても気にしない、気にしない。

 カボチャといえばセイヨウカボチャ、ニホンカボチャ、ペポカボ
チャがあります。セイヨウカボチャは茎が丸くやわらかい。果柄が
円筒形に肥大しコルク質。明治時代、アメリカから導入された品種
で。品種改良により日本全国に普及し、ふつうカボチャといえばこ
れをいっています。

 ニホンカボチャは茎が硬く角張っていて果柄が硬く浅い溝があり
ます。そのほかペポカボチャは果柄が鋭く角張って溝があり、葉に
トゲがあります。
(057)

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夏編(7月)・第6章「やける地面 葉陰で大きい カボチャの花」

(2)フウセンムシ

 最近は農家でも夏に窓を開けっ放しの家は少なくなりましたが、
かつては夜でも風を入れるために窓を開けておいたものでした。そ
んな時、小さな昆虫が蛍光灯の光に向かって飛んできます。

 水に落ちてもすぐにチ、チ、チ、と小さな音を出しながら泳ぎは
じめ、なにか物につかまります。フウセンムシといい、これがこの
虫の習性なのだそうです。

 このくせを利用して遊びます。コップに水を入れて、紙を細かく
ちぎって水底に沈めておきます。つぎにフウセンムシを捕まえてな
かに入れます。虫は一生懸命沈んでいき底の紙につかまりますがす
ぐ浮いてしまいます。

 水面まで浮くと紙を離して、また水底に沈んでいきます。これを
くり返します。この虫の習性とはいえ、ちょっと気の毒なくらいで
す。こんな遊びをした大人も多いと思います。

 フウセンムシは、本名コミズムシというミズムシ科の水生昆虫。
日本全国の池やたんぼ、沼などの静かな水のなかにすみ、水底を活
発に泳ぎまわり、水中の小さな動物の血を吸います。そして時々に
泥の上に止まってジッとしたりします。体長は6ミリくらい。細長
い体で黄褐色をしています。

 コミズムシは、体に生えている毛と毛の間に空気をためて、水の
中ではそれを吸っているのだそうです。この空気のため、浮力がつ
き、浮いてきてしまうのです。ミズスマシやゲンゴロウも同じよう
に呼吸をしているのだそうです。

 ちなみにチ、チ、チ……という音は泳いでいる時出る摩擦音だそ
うです。

ミズムシ科の仲間は世界中に多く、なかは塩水に住むものもいる
という。前あしが短く、中・後足が非常に長く、泳ぐのに都合よく
できています。成虫で越冬。ヨーロッパのミズムシは夏眠をする種
類もいるそうです。
(058)

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夏編(7月)・第6章「やける地面 葉陰で大きい カボチャの花」

(3)ハンミョウ

 田舎の道を歩いていくと、人の進もうとする先へ先へ飛んでいく、
小さな昆虫がいます。

 ハンミョウという虫で、身軽にフワッ、フワッと飛び、まるで道
案内をしてくれているようです。ミチオシエとかミチシルベとか呼
ばれるのもうなずけます。

 春から初夏の頃、堅い地面に小さな丸いたて穴がたくさんあいて
います。そこにニラを差し込み、待っていると、葉がかすかに動き
ます。すかさず引き上げると、ニラにかみついた白い虫が出てきま
す。これがハンミョウの幼虫です。

 小さい頃、ニラムシつりなどといって、庭の穴に何本もニラを差
し込み釣りました。釣った虫を別の穴に入れてやると、先客にすぐ
追い出され、懸命に自分の穴を探していました。
(059)

 

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夏編(7月)・第6章「やける地面 葉陰で大きい カボチャの花」

(4)キリギリス

 暑い日中、草むらや野原で、チョンギース、チョンギースと、や
や間隔をおいて、キリギリスが鳴いています。

 そばへいくと、すぐに鳴きやんでしまい、なかなか見つかりませ
ん。体を低くして、ソーッと寄っていっても、すぐに逃げられてし
まいます。

 そこで、ネギを1本用意します。根元の白い方を切り、細い竹の
棒に差したり、しばったりします。それをキリギリスにそっと近づ
けます。

 すると「?……」キリギリスは、ネギのにおいにつられて乗り移
ります。そこを手元に引き寄せて捕まえる……と本に書いてあった
けど、そんなにうまくいくものかしらネー。

 キリギリスは鳴く虫として昔から親しまれ、万葉集などにも歌わ
れています。鳴いているのは雄。はねをこすり合わせて音を出しま
す。
(060)

 

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夏編(7月)・第6章「やける地面 葉陰で大きい カボチャの花」

(5)フジザクラ

 フジザクラは富士山や箱根の周辺に多くあるため、名づけられた
サクラです。4〜5月、葉と同時か少し早く、直径2センチくらい
の小さな花を1〜3個ちらばって咲かせます。

 花は、白または淡紅色で横に向いて咲いたりします。花弁は広楕
円形で5個。ヤマザクラよりも小さいためマメザクラともよばれて
いるそうです。

 小さな丸い実は、初夏になると赤から黒褐色に熟して、食べると
甘酸っぱくおいしい。ハイキングの途中、登山道わきの実に手を伸
ばし、ちょっと失敬して口にほうばります。果実は生食のほかジャ
ム、ケーキ、砂糖漬けや果実酒などにも利用します。

 フジザクラの木は高さ3〜8mにもなる落葉高木。樹の形も良く、
さし木でもつきやすいため、盆栽や庭木としても植えられます。
・バラ科サクラ属の落葉小高木
(082-4)

 

 

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7月終わり