【クスリになる野菜・果物】第6章

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▼8月の野菜・果物

・(1)カイワレナ(カイワレダイコン・ツマミナ)
・(2)茎ニンニク ・(3)ゴマ ・(4)ササゲ
・(5)ジュウロクササゲ ・(6)食用ヘチマ
・(7)シロウリ ・(8)タロイモ ・(9)ツルナ
・(10)葉トウガラシ ・(11)ピーマン ・(12)ヒユナ
・(13)フダンソウ ・(14)ブルーベリー ・(15)米ナス
・(16)マスクメロン ・(17)ミニトマト
・(18)ライマメ(ライマ・ビーン)

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▼(1)カイワレナ(カイワレダイコン・ツマミナ)(8月)

 芽が出たばかりのまだ双葉の状態のときに食べる野菜の総称がカ
イワレナです。ダイコン、カブ、シソ、タデ、ネギ、ソバ、エゴマ、
ゴマ、エンドウ、カラシナ、またアルファルファなどまで利用、種
類が増えています。

 カイワレナは本来は、カイワレダイコンで、大阪を中心にした地
域で昔から栽培されてきたもの。高さ6〜10センチぐらいの細い
白い、茎の上に緑の双葉が開いてついている状態で売られています。
その形がアサリなどの二枚貝が割れたようだというので貝割れ菜の
文字をあてています。

 昭和50年代(1975)中期、一般野菜がほぼ飽和状態の供給
になり、それ以外の栄養価の高い、珍しい、調理が簡単なものを求
める消費者のニーズに合った野菜として、またおりから水耕による
栽培の方法が開発されたのとあいまって急に生産が伸び、いまでは
企業が工場生産、1年中出回っています。

 同じ人為的に発芽させた若芽でも、暗い場所での葉緑素を形成さ
せないものは、もやしと呼んでカイワレナとは区別しています。

 水耕では、種子をまいてから5日で収穫できるといわれ、この種
の野菜はいわゆる”芽もの”と呼ばれています。俳句では秋の季語。

【効能】ビタミンEが含まれており、消化促進・通便に効あり。
・アブラナ科ダイコン属の野菜


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▼(2)茎ニンニク(8月)

 ニンニクは、葉が出たあと、とうがたってその先につぼみをつ
けます。ふつうニンニク栽培では、球根に栄養をまわすため花茎
をつみとります。クキニンニクは、このつぼみが開く前の若い茎
を食用にします。

 ニンニクの芽などともいい、茎は、つぼみを落として、30〜40
センチ位の長さに切りそろえて出荷します。とうがたつ前の青葉
と茎の白い部分を食べるのがニンニクで、葉質のやわらかい専用
の品種があります。

 ニンニク、ハニンニクに含まれる含硫化合物であるアリインが
同じようにあり、強壮、健胃、カゼなどによいという。ニンニク
のような強烈なにおいがなく、香り、味、歯ざわりもよく炒めも
のや和えものに好まれます。

・ユリ科ネギ属の多年草


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▼(3)ゴマ(8月)

 胡麻と書いてゴマ。胡とは中国でいう西域民族のことで、西域
(胡)から伝えられた種実がアサ(麻)に似ている植物だという
意味。

 ゴマの原産地はアフリカといわれ、中国には紀元前1世紀ごろ
伝わったという。日本には仏教伝来(538)とともに導入され
たともいわれ、奈良時代には、ウゴマと呼びゴマをしぼってゴマ
油もつくられ料理に利用。

 701年の「大宝律令」には諸国物産の中にゴマの名も記載さ
れ、灯油用に成人男子一人あたり7勺(0.126リットル)の
ゴマ油の貢献が義務づけられています。

 戦国時代には兵糧食品として、他の食品とともにゴマを持ち歩
いたという。安土、桃山時代に南蛮菓子が渡来、その中のコンペ
イトウはゴマやケシの種子を芯に砂糖をかけてつくったものでし
た。これが日本人の手で作られるようになったのは江戸時代。そ
のころにはゴマの葉も食用にされたという。



 ゴマ油の開発、普及は特に禅宗の僧侶の力が大で、ゴマ豆腐、
ゴマ和えなどは日本人の発明だという。現在全国で栽培されては
いるがごく少量。昭和43年から需要量即輸入量になり、東南ア
ジア、アフリカ、中国などから大量に輸入しています。

【効能】リノール酸など不飽和脂肪酸に富んでいるそうで脂肪の
酸化を防ぐビタミンEなどの成分を多く含んでおり、動脈硬化の
予防によい。漢方では強壮剤としており、補血作用もあるという。
常用すると髪の毛が増え、白髪を予防するという。若はげ・若白
髪には黒ゴマと何首烏を粉末にして毎食後服用。

・ゴマ科ゴマ属の1年草

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▼(4)ササゲ(8月)

 ♪豆で赤いは金時ササゲ、豆で長いは十六ササゲ……という里
謡が千葉県にあります。そこでまず「金時ササゲ」からまいりま
しょう。これはあずきササゲ、実とりササゲなどとも呼ばれる「ハ
タササゲ」のこと。"学問的”にはシリンドリカとかに分類され、
原産地は南アジアだそうな。

 豆の色は、白黄色、褐色、赤紫色、黒色、白地にへそのまわり
だけ赤い斑や黒い斑のあるものだの、色とりどり、模様とりどり
です。

 黒斑のものを「奴(やっこ)ササゲ」、赤斑を「赤奴ササゲ」と
いって「白あん用」に使用されます。種子はその他、アズキのよ
うに種が割れないので強飯(こわめし)にまぜて利用されます。

 茎は立性または叢(そう)性で、まれにつる性のものもあって、
奴ササゲはわい性です。さやは短く、はじめ上向きにつきますが、
熟すにつれて横に傾いてきます。

 次は長い〜「十六ササゲ」。茎の長さが2、3mにもなるつる性。
さやに豆が16も入るというのでその名があり、さやが3尺もの
長さになるので「三尺ササゲ」とも呼ばれています。

 これは、学名をセスクイペダリスといい、同じく南アジア原産。
さやは肉づきがよく、やわらかいので、若いさやは野菜として食
べられます。



 さて、ササゲはマメ科ササゲ属。そのササゲ属の中で食用にな
るのは、アフリカ原産の「ウィグナ・シネンシス」と、その亜種
シリンドリカ(ハタササゲ)と、セスクイペダリス(十六ササゲ)
の1種2亜種なのだそうです。そのうちの1種シネンシスは日本
では栽培していないという。

 栽培はしていないが、そのシネンシスについてひとくさり。さ
やは、品種によって長短があって、豆は丸いものから腎臓形まで
あり、色も褐色、緑色、赤紫色、黒色、白地のへそのまわりだけ
が赤黒の斑点のものがあるのはハタササゲに似ています。古代ロ
ーマ人の記録にあるインゲンマメはこの豆のことだといわれてい
ます。

 同じマメ科に、フジマメ属とインゲンマメ属があります。この
ササゲ属はこの二つの属の橋わたしというからおもしろい。

 つまり、ササゲ属の花の舟弁のわん曲の程度によってインゲン
マメ属と区別し、10本ある雄しべのうち、1本が離れているか
どうかでフジマメ属と区別するというのです。やはり種は連なっ
ているのですねェ。

【効能】腎臓や胃腸の働きをよくし、体力をつけ、頻尿を治す効
果があるという。

・マメ科ササゲ属の一年生つる状草本

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▼(5)ジュウロクササゲ(8月)

 さやが長く、豆が16も入るようだというので「十六ササゲ」、ま
たさやの長さが1メートルもあるので「三尺ササゲ」の名もあり
ます。ササゲやヤッコササゲなどと同じササゲ属で、原産はアフ
リカといわれています。

 肉質でやわらかい若ざやは、歯切れがよく、野菜として煮もの、
汁の実、油炒めなどに利用します。熟した豆はあまり食用にしな
いという。さやの中で実と実の間が広く、熟してくるとこの間が
くびれてくる。これはほこのササゲの仲間にない性質だという。

 夏から秋に葉の付け根に数個の花をつけ、貴白色から淡紫色の
花を咲かせます。豆は丸いものからやや角張ったものまであり、
色も赤、白、黒、褐色戸さまざまです。

・マメ科ササゲ属の1年草


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▼(6)食用ヘチマ(8月)

 ふつうのヘチマも未熟果は、軟らかく食用にできますが、食用品
種のヘチマもあります。食用ヘチマは、果実が40センチと短く、
繊維があまり発達しない品種で、香りと淡い甘味があり、煮物・汁
の実・てんぷら・油炒めなどに利用されます。

 これは鹿児島や沖縄で庭先などに植えられて利用されていたヘチ
マ。鹿児島ではイトウリと呼び、輪切りにして炒め、みそ・裂け・
みりん・さとうで調味した「じらじら料理」は郷土食になっていま
す。また沖縄ではナーベーラーといい、酢みそかけにしてチム(豚
の肝臓)やマーミ(豚の腎臓)を茹でてそえたりします。

 ちなみにヘチマの別種で、果実に10本の稜があるトカドヘチマ
は、台湾ではやはり未熟果を野菜として利用するそうです。

・ウリ科ヘチマ属の1年生つる性草本


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▼(7)シロウリ(8月)

 シロウリはツケウリ、アサウリともい、マクワウリの一変種で、
緑色の果実が完熟すると白くなるのでシロウリと呼ばれます。シ
ロウリは果肉が堅く、芳香や甘味がないのでほとんど漬けものと
して利用されています。

 特に奈良漬け、浅漬け、みそ漬け、いんろう漬けなどに多く使
われます。室町時代の公家・山科言継(やましなときつぐ)の日
記に奈良漬けという文字があり、かなり古くからあったものらし
い。奈良は昔から酒の名産地だったため、酒の粕でつくった漬け
ものを奈良漬けと呼んだのではないかという。

 シロウリは中国またはインド原産と考えられ、日本には中国か
ら6〜7世紀に渡来したといい、江戸時代の博学の書「大和本草」
にも記載があります。

 シロウリの果実は円筒形で長さ20〜40センチで、品種によりも
っと大きいものもある。皮はなめらかで緑色。しま模様のものも
あります。主な品種に桂ウリ、東京大シロウリ、東京早生、堅ウ
リなどがあります。名物漬けものに三重県上野市の養肝漬け、千
葉県成田市の鉄砲漬けなどが有名。中国古代の越地方で古くから
栽培されていたので中国名は越瓜と書き、日本でもこの字を使い
ます。

・ウリ科キュウリ属の1年草


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▼(8)タロイモ(8月)

 日本でいうタロイモは南方系のサトイモ科全部を含めています
が、東南アジアではクワズイモ類や一部のものは含めないという。
タロイモは日本での呼び方、現地や英語ではただの「タロ」。

 たくさんの品種があるが、日本で栽培しているサトイモもタロ
イモの仲間。主にいも(地下茎)を食べますが、葉柄や葉を利用
する品種もあります。

 インドから東南アジアにわたる地域が原産地で、伝ぱは太平洋
地域諸島、中国経由で日本、またヨーロッパからアメリカ大陸に
およびます。オセアニアの熱帯から温帯では主食として広く栽培
されているという。

 日本では主として子いもを利用することが多いが、熱帯では親
いもを食べるという。

・サトイモ科サトイモ属の植物の総称


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▼(9)ツルナ(8月)

 日本の太平洋側にはどこにでも野生しているツルナ。茎は高さ4
0〜60センチ。よく枝分かれしてつる状に地表をはい、野菜として
栽培されるのでツルナの名があります。

 アカザに似た葉は多肉質無毛で、ガンの予防に効果があるとか
ないとかの話もチラホラします。

 日本のほか中国、ニュ−ジ−ランド、南アジア、オ−ストラリ
ア、ポリネシアなどの海岸に生えていて、18世紀、探検家のキャ
プテン・クックがニュ−ジ−ランドでこれを採取、イギリスのキ
ュ−ガ−デンに送り、ニュ−ジ−ランド・スピナッチ(ほうれん
そう)の名がつきました。

 日本での記録は宝永6年(1709)に貝原益軒が著した「大和
本草」が最初だということです。

・ツルナ科ツルナ属の多年草


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▼(10)葉トウガラシ(8月)

 ナス科のトウガラシの辛味種(八房・伏見辛など)を、葉を食
料とする目的で密植したもの。幼果と葉を食用としたり、またそ
のまま油炒めしたり、甘辛く煮て佃煮にします。

 栄養価はビタミンではカロチン(ビタミンA効力)がたいへん
多く、ビタミンB2・Cも豊富です。無機質ではカルシウム・鉄・
カリウムが多くそれにタンパク質もかなり含まれています。

 辛味はトウガラシと同様カプサイシンという一種のアルカロイ
ドですが、果実のトウガラシのようには辛くはないので食べやす
い。カプサイシンは薬効をもつので漢方で神経痛、肺炎、健胃剤
として用いられます。

 「八房」は、果実が牛の角のようで、花序ごとに直立し、8か
ら10本房になってついています。果実の未熟なうちは、野菜と
しても食べます。

 「伏見」は辛味の強いものと辛味の少ないものがあり、細長いが
大粒種。日光は、果実が細く未熟果を漬け物とし、伏見辛ととも
に葉トウガラシとして利用します。

 また伏見甘長は辛くない品種で、小形のシシトウガラシより長
く、温室で促成栽培され、未熟果を野菜として炒め煮や佃煮、炒
め物などの用います。

・ナス科トウガラシ属の1年草


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▼(11)ピーマン(8月)

 トウガラシにはタカノツメ、ヤツブサ、ナガミトウガラシなど
の辛味型と、シシトウガラシやピーマンのような辛味の少ない甘
味型があります。

 ピーマンとはフランス語のピマンのなまったもの。もともと欧
米系の大果甘味型トウガラシだけに使われた名前でした。が、日
本人も洋食を好むようになるにつれ需要も増大。在来種のうちか
ら果肉の品質、早生など優れた品種を選び出して欧米大果種の交
配種をつくり出し、これもピーマンと呼びました。だからいまで
はこの中果種、大果種両方ともピーマンなのであります。

 ナス科のトウガラシ(カプシクム)属の1年草。温帯では1年
草ながら、熱帯では多年草になり、木のようにゴッツクなるとい
う。カプシクムとは「袋」のことで果実の形からきているそうな。
なるほど、フクロかぁ。

 そもそもトウガラシはブラジルのアマゾン河流域が原産地とい
われ、メキシコやペルーでは古くから食べられていたらしい。現
にメキシコティワカン谷からは、紀元前6000年の地層からト
ウガラシの一種が出土したというから気が遠くなるような話です。



 世界に広まるきっかけはになたのは、おなじみのコロンブス。新
大陸を発見して1493年スペインに持ち帰ったのがはじまり。

 日本には1542年ポルトガル人が伝えたのだとか。1592
年、秀吉が朝鮮に出兵した時、トウガラシの種子を持ってきたの
が最初だと。あーだこーだといろいろな説がありますが、ま、い
ずれにしても16世紀の本には記述があります。

 いまのピーマンのもとは、1868年(明治元)アメリカから輸
入したスペイン種。その後、日本人好みの品種がつくられ、第二
次大戦後、急速に普及。幼果は煮物。いため物、てんぷらなど用
途は多い。

【効能】カロチン(ビタミンA効力)やビタミンCが豊富。B1
・B2も含有、ビタミン補給に最適。繊維質もあり便秘症に。成
人病予防にも有効。

・ナス科トウガラシ属の1年草。熱帯では多年草

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▼(12)ヒユナ(8月)

 インド原産のヒユナは、中国では紀元前から栽培されていたと
いう古い野菜のひとつ。別名バイアム、ジャワホウレンソともい
う中国野菜で、ヒユナとは農林水産省の統一名称です。

 高さは1メ−トル以上になり、葉の色が緑色のもの、葉のふち
が緑で葉脈あたりが紫紅色の斑が入っているもの、そして全体が
紅色のものがあります。

 草丈が20センチくらいの時、若い芽や葉を次々に収穫し、ホウ
レンソウと同じようにおひたし、油いため、ゴマあえ、汁の実な
どに利用します。茎は漬物に用います。カロチン(ビタミンA効
力)と鉄が多く、熱帯アジア、アフリカ、熱帯アメリカなどでも
栽培されています。ハゲイトウの仲間。

・ヒユ科ヒユ属の中国野菜


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▼(13)フダンソウ(8月)

 1年中栽培でき、根生葉をあとからあとからら出して、それを
次々にかき取っていつでも食べられるのでフダンソウ(不断草)。
イツモヂシャ、トウ(唐〕ヂシャなど名もあります。炒めもの、
ゴマ和え、、浸し物に利用。

 地中海沿岸地方原産で、サトウダイコンや飼料ビートの近縁種
だが根が大きくならず、葉を利用するのでリーフ・ビートの名も
あります。地中海最大の島シチリア島では、紀元前1000年位
からすでに栽培していたというかう古い。

 日本には江戸時代初期に中国から渡来。江戸前期の食物書『本
朝食鑑』にも「近年華国より来る」と出ています。しかし定着せ
ず。明治時代改めて野菜として導入。

 葉は根生葉で、葉柄は広く長く、緑色、白色、淡紅色のものが
あり、卵形。厚みがあってやわらかい。2年目のものは初夏のと
う立ちし、黄緑色の花をつけます。

 品種は、在来の小葉種(早生)、明治以後導入の洋種白茎(晩生
で葉が大きい)などがあり暑さに強く、夏の葉菜の少ない時に利
用。播種後30日位で採り、ホウレンソウの代用にも。

【効能】カルシウム、鉄、カロチン(ビタミンA効力)ビタミンB
2が多く含まれています。

・アカザ科フダンソウ属の1年草または越年草


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▼(14)ブルーベリー(8月)

 甘酸っぱくてパイやジャム、ジュース、缶詰めなどに利用され
るブルーベリー。果実がブルーの色に熟すのでこの名があります。

 原産は北アメリカ。現地の沼や沢などに野生するスノキ属で20
種類の総称でどれも小果樹として利用されているという。

 栽培されるものは、20世紀のはじめ、北アメリカの北東部で
アメリカ先住民が食用にしていたものを改良した品種。日本での
主な栽培は、ハイブッシュ・ブルーベリー、ローブッシュ・ブル
ーベリーラビットアイの三大グループ。1951年(昭和26)
ごろ導入され、1975年(昭和50)ごろからやっと本格的に
栽培されだしました。

 ハイブッシュは、品質もすぐれた代表的品種で、日本では樹高
1〜1.5mにもなり、寒地で適します。ローブッシュは、もっ
とも耐寒性にすぐれ、樹高が20センチ。ラビットアイは、品質
はやや劣るが耐暑性があり暖地向き。樹高1〜2m。



 いずれも落葉高木で、晩春に越冬した枝から出た若枝にドウダ
ンツツジのようなつり鐘状の小さな白い、または淡い紅色の花を
たくさんつけます。果実は夏から秋に熟し、黒から淡青色で黒粉
をかぶります。

【効能】酒をさまし、のどの渇きを止め、痰を取る作用もあると
いう。

・ツツジ科スノキ属の低木

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▼(15)米ナス(8月)

 最近丸みのある大型で、ヘタが緑色をしている西洋種のナスを
よく見ます。加茂ナスに似ており、ブラックビューティ・アメリ
カオオナスなどとも呼ばれ、肉質がち密でやわらかく、油とよく
合うため油を使った料理に適しています。

 アメリカではナスのなかでもこのナスが大半を占めており、重
要な野菜になっています。日本には明治時代に輸入されましたが
収穫があまり多くないうえに、病気に弱く普及しませんでした。
 戦後になってようやく栽培技術が進み、アメリカから種子を再
導入して栽培。高級料理店の焼きナス用として利用されるように
なっていきました。

 このナスは短卵形で豊大、濃紫色で光沢があり、普通1個が4
50グラムから大きいものは750グラムもあるというナスの中
でも大物級の大物です。

・ナス科ナス属の1年草


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▼(16)マスクメロン(8月)

 マスクメロンは香気と強い甘味があり、麝香の香り(マスク)
という意味でその名があります。わが国のマクワウリと同じ種類
だといい、日本へ来たマスクメロンは、フランスやイギリスで温
室メロンとして発達したもの。明治27、8年頃、福羽逸人が種子を
取り寄せ、新宿御苑の温室で試作したのが最初。

 その後、園芸試験場で栽培に成功。貴族や金持の間で、温室で
趣味栽培がはやりだします。とくに大隈重信は、名士たちを自分
の邸宅に招待して、温室で栽培したメロンをご馳走。「我が輩が今
日なお元気旺盛なのは毎日メロンを食べているからであるんであ
〜る」と自慢。これが老公の百二十五歳長生説とともにたちまち
世間に広がり、メロンの名を一躍有名にしました。ちなみに東京
近郊でメロンの本格栽培がはじまったのは大正六、七年頃から。

【効能】メロンは暑さをしのぎ、のどの渇きを潤し、また露地も
のは温室ものよりもビタミンA,Cが豊富です。カリウムを含み、
利尿作用もあるという。

・ウリ科キュウリ属の1年草


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▼(17)ミニトマト(8月)

 年々品種改良されていく野菜。トマトの原産地の南米アンデス
山脈のペルー、エクアドル、ボリビアの地域には野生があるとい
う。1492年コロンブスが新大陸発見、トマトがヨーロッパに
渡ったが、これらはいまわれわれにおなじみのトマトと違って、
もっと小さかったという。

 新大陸発見以前から、すでにアンデスの原住民はトマトを栽培
していたが、それには今日、ミニトマトといわれてつくられてい
るさまざまな形のトマトもあったという。

 ミニトマトには真っ赤な色のプチトマト、サクランボ大のチェ
リートマト、ひと房に15,6個の実が鈴なりになるピコトマト、
洋梨形で赤いレッドペアトマト、それに同系で黄色いイエローペ
アトマト、レモンを小さくしたようなレモントマト、また甘味を
増したフルーツトマト(デザートトマト)などがあります。

 これらは日本にも明治の初年導入され、明治19(1886)
年に大日本農会三田育種場発行の『舶来穀菜要覧』の「あかなす
蕃茄、トマト」の項のなかに「レッドペアシェープド」などの小
形トマトの品種が記載されているのが所見。         
 かつては観賞用など趣味で栽培されているに過ぎなかったが、



 このなかのチェリートマトに近い「ピンピネリフォリューム種」
はビタミンCが100グラム中68ミリグラムと、ほかのトマト
より2倍以上も多く、ビタミントマトへの育成が注目されていま
す。

 最近は各種ミニトマトの品種改良も進み、交配に7パーセント
近い糖度の品種が用いられて、同じ収穫時期の普通のものに比べ、
1.4倍もの糖度の高いトマトも現れており、さらに改良が行わ
れています。

【効能】トマトの色素はおもにカロチン(黄色)とリコピン(赤
色)だそうで、ミニトマトの橙黄色の鮮やかな品種にはカロテン
(ビタミンA効力)がとくに多いという。

・ナス科トマト属の1年生作物

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▼(18)ライマメ(ライマ・ビーン)(8月)

 ライマメ(ライマビーン、リママメ、アオイマメ)は、豆類の
なかでも最も美味しい豆といわれ、完熟した豆は穀物として、若
いさやはサヤインゲンと同様に、むき実はソラマメ、エダマメの
ように野菜として利用します。

 さやは偏平で三日月形、長さ7〜13センチでフジマメに似て
います。豆の色は白、黒、赤、まだら模様などと品種によってさ
まざまです。もともとはつる性だったが、19世紀末突然変異で立
性(つるなし)のものができ、いまは共に栽培されています。

 原産は熱帯アメリカ。南米のペルーの遺跡(紀元前3200年
ころ)から発掘されるほど古くから栽培されていたらしい。新大
陸発見後、奴隷船でアフリカへ渡ったあとヨーロッパへ伝播。は
じめペルーのリマ港から外国へ伝えられたのでリマビーンズ、ラ
イマビーンズと呼ばれているという。

 日本には江戸時代末期、東南アジアから伝来。飯沼慾斎の『草
木図説』にはアフヒマメ(アオイマメ)の名で出てきます。その
後、明治初年の開拓使によって北海道に導入しました。熱帯では
多年生だが、日本では春に種をまき、夏に未熟さや、秋に豆を収
穫したあと、霜で枯れてしまい1年生になるという。

・マメ科インゲン属の多年草または1年草。栽培上は1年草


 第6章(8月)終わり

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