【クスリになる野菜・果物】第5章

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▼7月の野菜・果物
・(1)アンズ ・(2)エダマメ ・(3)オクラ ・(4)カボチャ
・(5)カラント(カーランツ・フサスグリ・アカスグリ)
・(6)カンピョウ(ユウガオ) ・(7)ゴボウ ・(8)ゴーヤ(ニガウリ)
・(9)スイカ ・(10)ズイキ ・(11)スイゼンジナ ・(12)ズッキーニ
・(13)スモモ ・(14)ソバ ・(15)男爵イモ ・(16)ツルムラサキ
・(17)トウモロコシ ・(18)トマト ・(19)ナス ・(20)ナタマメ
・(21)フジマメ ・(22)ミョウガ ・(23)ミント ・(24)メロン
・(25)モモ ・(26)ヤグラネギ ・(27)ライム

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(1)アンズ(夏7月)

 甘酸っぱさと独特の芳香があり、生食、シロップ漬け、ジャム
などにするアンズ。東北では梅干しと同じように利用するという。

 アンズは、古くから食用とされ、旧約聖書に出てくる禁断の実
は、じつはリンゴではなく、熟して黄色になったアンズだという
説もあるくらい。

 原産地は中国東北部、紀元前3000〜前2000年ごろから栽培して
いたという。ここから西へは、中央アジアをへて西アジアに伝わ
り、改良されいろいろな系統に分化、ヨーロッパへ伝わります。



 日本へは、古ーい時代に中国から伝来。唐桃(からもも)とい
われ、平安時代の書『本草和名』(918)や『和名抄』などに記載
があります。はじめは、種子を薬用にするために植え、果肉を食
用にするようになったのは、江戸後期の文政年間だといわれてい
ます。                          
 アンズの品種は多く、普通アンズといっているのは、ホンアン
ズという種類を改良したもの。いま日本で栽培されている品種は
ジャムにされる山梨県勝沼産甲州大実(おおみ)、長野県屋代産の
鏡台丸(きょうだいまる)濃橙色で甘く、干しアンズや加工用に。
同地産の平和丸は甘酸っぱく干しアンズなどに。新潟大実も加工
用。

・バラ科サクラ属ウメ亜属の落葉高木 

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(2)エダマメ(夏7月)

 夏のビールに欠かせないエダマメ。これはエダマメに含まれる
たんばく質やビタミンA、C、カルシウムなどがアルコールの酸化
を促して、その分、肝臓や腎臓に負担をかけないですむからだと
いう。

 ただ、どちらも体を冷やす作用があり、食べすぎると下痢をす
ることがあるので注意。また、チーズとの食べ合わせはよくない
という。エダマメのフィチンがチーズのカルシウムの吸収を妨げ
てしまうためといいます。

 栽培技術が発達する前は、エダマメの旬は9月から10月でした。
ちょうどそのころの行事が十三夜のお月見。この名月を豆名月と
いうのは、十三夜に古くからエダマメを供える習慣があったから
です。

 いまではエダマメの栽培方法が発達し、4月ごろから12月ご
ろまであり、冷凍ものは一年中出まわっています。エダマメには、
感温性が大きく、感光性が小さい夏ダイズの茎の短い早生品がよ
いとされています。
・マメ科ダイズ属の1年草

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(3)オクラ(夏7月)

 今回はフヨウ、ムクゲ、ハイビスカスなどと同属のオクラのお
話です。フヨウの仲間だからして、トーゼンきれいな花が咲きま
す。直径5〜7センチの黄色い5弁花の花は観賞用としてもりっ
ぱな目立つ花です。

 オクラの花期は夏から秋。花時はいうと、早朝時で午前中には
しぼんでしまう早起き派。本籍(原産地)はアビシニア(いまのエ
ジプト、スーダンの東部、エチオピアの高原地方)。つまりアフリ
カの北東部なのであります。

 オクラの名の由来は、西アフリカの黄金海岸(ゴールド・コー
スト)に住む黒人が「オー・クラ!」といったとかいわないとか
でついたOKURAがそのまま使われているのだそうです。

 2000年前すでにエジプトで栽培されたとも12、3世紀に
なってからだともいわれるが少なくとも1世紀にインドに渡って
いたのは確かなのだそうです。

 18世紀の中ごろアメリカに進入、バージニアやジョージア、
テキサス、アラバマなど南部の州を制覇、いまでは当地の重要な
作物なのであります。 

 そのアメリカから日本に渡来するのは明治の初め。1873年
(明治6)の開拓使蔵版西洋蔬菜栽培法という本に出てくるのが
最初の記録だそうです。それには「黄蜀葵」の字が当てられ、そ
の左右にオクラ、ネリとめずらしいフリガナのつけ方をされてい
ます。

【効能】カルシウム、タンパク質が豊富な健康野菜。暑さに強く、
比較的栄養価の高いオクラの「ヌルヌル」には、強壮効果があり
夏ばてによく、また成人病予防に効果あり。
・アオイ科トロロアオイ属の多年草

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(4)カボチャ(夏7月)

 「土手カボチャ」「陰のカボチャではい回るばかり」……など
あまりカンバシイ言葉の並ばないカボチャですが、どーしてどー
してなかなかの伝統ある作物なのであります。

 メキシコはオカンポ洞くつという所、紀元前7000年〜55
00年の地層からカボチャのタネと皮が出土したというのです。
そしてどこをどう調べたのか、栽培していたものとわかっていま
す。

 トーゼン原産地はそのあたり。中央アメリカからペルーなどの
山岳地帯。それからヨーロッパに渡り、日本に入ってきたのは戦
国時代の1541年。ポルトガル船が豊後(いまの大分県)に漂
着。すぐに「なんだ?なんだ?」と人だかり。そのうちのひとり、
かの異人さんから何だか知らないがタネを貰い、まいてみたら…
…アーラ、でっかい実がブランブラン。これが日本のカボチャ第
1号であります。

「草本六部耕種法」という本によると「カボチャは最初、印度亜
東坡塞国(カンバチャ)に生じるゆえ、世にまた、カンボチャとも
名づく……」となっています。



 江戸時代に入り、やっと各地で栽培、全国に普及していくので
あります。

 その後、戦時中は食べものがなくなり、政府が「なにがなんで
もカボチャをつくれ」と奨励したのはご存知のとおりであります。

【効能】ビタミンA(カロチン)やビタミンCが豊富・成人病予
防食品。百日咳にヘタか種子を黒焼きにして、黒砂糖を混ぜダイ
ズの大きさくらいの丸薬にして1回に2〜5個を服用。丹毒には
タネをすりつぶして貼ります。痰やのどの痛みには、カボチャの
種を1回15粒くらい煎じて飲んだり焼いて食べます。不眠症・
回虫・サナダムシ・乳の出が悪い時にタネを30粒〜50粒、炒
って割って中身を食べたり、煎じて服用。
・ウリ科カボチャ属の1年草

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(5)カラント(カーランツ・フサスグリ)(夏7月)

 カラントはユキノシタ科スグリ属の中で、トゲがあり花を少し
しかつけないグーズベリー(スグリ)に対して、トゲがなくて花
も房状にたくさんつけるものをカラントまたはカランツ、日本語
でフサスグリなどと呼んでいます。木は寒さに強い。

 春、葉のつけ根に花をつけ、果実は直径1センチくらいで丸く、
房状についています。夏に赤、白、黒などの色に熟し、酸味があ
るが独特の風味があるスグリもの。ジャム、ゼリー、果汁、菓子、
スグリ酒などに利用します。

 日本へは明治初年北海道開拓使によって導入、夏でも涼しい北
海道や東北で栽培されています。暖かい地方では半日陰地で栽培。
挿し木、取り木などでふやします。

 果実の色で、アカフサスグリ(レッドカラント)とクロフサス
グリ(ブラックカラント)の品種に大別されます。生食もできま
す。

 アカフサスグリの花は緑色か淡紫色で、赤い果実がブドウの房
のようで美しく、鉢植えや庭木など観賞用に栽培されます。ヨー
ロッパの中・北部、アジア東北部原産。収量は1本の木で6から
7キロ、植えつけ後2から3年で実が結ぶそうです。品種にロン
ドンマーケット、ラクストン、ローズオブホランディアなどがあ
りま
す。



 クロフサスグリは枝などに特有の臭気があり、花は赤みをおび
るか白色で、つき方がまばらです。果実は黒紫色でトマトに似た
異臭がし、食べるとまた酸っぱすぎて生食にはむきません。強い
この異臭も加工されると独特な香気になるそうです。ヨーロッパ
原産。品種にボスクープジャイアントなどがあります。貯蔵性が
ないという。

 なお、よくタネのない小粒のブドウの干したものもカラントと
いっていますが、別のものです。

・ユキノシタ科スグリ属の落葉灌木

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(6)カンピョウ(ユウガオ)(夏7月)

 カンピョウは、ウリ科のユウガオが原料です。ユウガオは果実
が大きく、円筒形をした長ユウガオと球形をした丸ユウガオがあ
ります。その丸ユウガオの白い果肉をひものように薄く削り、天
日で乾燥させたもの。含め煮、和え物、汁の実、巻き寿司などの
具、いなりずしやこぶ巻の帯などに利用されます。

 カンピョウは大腸、小腸の機能を促進し、イライラ感を抑える
作用があるという。漢字で干瓢、乾瓢のほか甘瓢とも書かれます。
これはこのウリの変種であるヒョウタン(苦瓢)が苦いのに対し、
ユウガオは甘いからだそうです。

 ユウガオの原産地はアフリカ、アジアの熱帯だという。古い時
代に中国から渡来、あの『古事記』に出てくる「天吉葛(あまの
よさずら)」はたぶんユウガオのことだろうとされています。完
熟した果実はタネを取り出し乾燥させ、火鉢、水入れ、花器、お
盆、また鬼の面や置物にも利用しています。

・ウリ科ヒョウタン属のつる性1年草(熱帯アフリカ原産)


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(7)ゴボウ(夏7月)

 煮しめ、揚げもの、汁の実、きんぴら、ドジョウ汁とくれば、
なんといってもゴボウなしというわけにはいきません。

 原産地は不明なれど、ヨーロッパ、シベリア、中国東北の北方
あたりではないかとされ、中国で最初に、薬草として栽培、わず
かにヤサイとして利用した由。

 それが日本へ渡来。年代は不詳ながら、千数百年前だろうとい
われています。薬草としてらしい。平安時代になり「食ってみた
らどうだんべぇ」。案外いけることから、ここからゴボウ食史が
はじまったのでありました。

 平安時代の本・本草和名(918年・延喜式18)には「悪実、
一名牛蒡、和名岐多岐須(きたきす)、一名宇末布々岐(うまふぶ
き)……」とあります。

 悪実の悪は強いと言う事、決して悪い意味ではありません。ゴ
ボウくん怒らないでネ。また宇末布々岐とは、ふぶき(フキのこ
と)の葉に似ているというのでついた名前。

 ……ハナシはがらりとかわります。ころは天慶の3年(940)、
平将門を討たんがため、千葉県成田山新勝寺へ祈願に出かけた藤
原秀郷、上総の国・大浦村でゴボウで酒宴を張ったのでございま
す。戦いはみごとに大勝利。帰りにまた大浦ゴボウで祝宴、美酒
に酔ったのでありました。



 それ以来、大浦ゴボウは勝ちゴボウと称し(地元ではなまって
カツゴボウ)同村では新勝寺に毎年300本のゴボウを奉納する
ならわしになったのだそうであります。

 江戸時代になると全国に普及。記録も本朝食鑑、農業全書、大
和本草、菜譜と栽培法だ薬効だとにぎやかです。

 品種も滝の川、砂川ゴボウ、堀川ゴボウ、常盤ゴボウなどなど
など次々に作出、発達していくのであります。

【効能】糖尿病・便秘。脳卒中予防・常食で中気やガンの予防。
肉類の食あたりに、生ゴボウか干したゴボウを煎じて飲用。痰の
つかえに、生ゴボウの根の汁を飲む。毒虫さされには、根または
葉の汁をつける。

 のどの腫れや痛み、また化膿創(かのうそう)の口がなかなか開
かない時は、ゴボウの種子を飲むとよいといいます。腎臓病には、
ゴボウの種子を煎じて飲む(種子には解熱・解毒・利尿作用があり
ます)

・キク科ゴボウ属の越年草

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(8)ゴーヤ(ニガウリ)(7月)

 ニガウリは、未熟果(開花後15〜20日)を野菜として食用に
する熱帯アジア原産の1年生つる草。苦味があるためその名があり、
また果実のこぶが果物のレイシ(ライチー)に似てるのでツルレイ
シとも呼ばれます。

 苦味はモモルデシンという成分だとか。ビタミンCが多く、苦味
が食欲を増すというので昔から夏ばての予防に食べられてきまし
た。

 果実からたねを取り、油炒め、煮物、漬け物にします。沖縄では
ゴーヤといい、精のつく食べ物として重宝がられているといい、沖
縄や南九州では古くから未熟果を食用にしてきました。

 明の時代に南方から中国に伝わり、日本には江戸時代初期の慶長
年間(1596〜1615年)にはすでに渡来していたらしく貝原
益軒の『和爾雅』(1688)や『大和本草』(1709)にその名
が出てきます。

 果実は両端がとがったような楕円形。茎からぶら下がるようにな
り、大きさは品種により15センチから50センチ、果実の色も黄
白色や緑色などいろいろです。

 ニガウリは茎の長さ2〜5メートルにもなり、巻きひげでほかの
ものにからみつく。葉は巻きひげと対生し、手のひら形に裂け、そ
の先はとがっています。

 夏、同じ株に小さな黄色い雄花、雌花をつけます。果実は全面が
イボイボのこぶでおおわれ、未熟果は淡緑色や濃緑色だが熟すと黄
赤色になり、不規則に裂けてめくれ、紅色の果肉に包まれた種子が
現れます。

 この果肉は甘く食べられます。果皮は苦い。果皮が裂けて、中か
ら紅色の果肉があらわれるさまがおもしろく、観賞用にも栽培され
ます。



 露地ものは夏に多く出回るが、いまはハウス栽培で周年出回って
います。家庭菜園でも5月にたねをまき、支柱または棚に這わせる
と、8月ごろから収穫できる。

【効能】果実は眼病、発熱、下痢などの漢方薬に利用されます。
・ウリ科ツルレイシ属の一年生つる草

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(9)スイカ(7月)

 スイカは漢字で西瓜。水瓜と書かれるほど水分が多いウリ。こ
の水っぽいスイカが、熱帯はアフリカのカラハリ砂漠の原産とく
るから恐れ入ります。

 探検家リビングストンという人は現地で原生種を発見、エジプ
トにはいまも野生種が自生しているといいます。それほどの根性
の持ち主。日本の夏の乾きなど「かるーいかるーい」なのであり
ましょう。

 ドーンと昔の紀元前2000年ころ、古代エジプト人がスイカ
を栽培していたという。壁画に残っているから確かなはなし。紀
元前1000年にギリシャ、ローマには起源の初めに伝ぱ。種子
を利用するために栽培したのだそうです。

 12世紀、中近東からシルクロードを通って中国西域に。西か
らきたというので西瓜の名がつきました。

 日本に入ってきたのは15、6世紀。天正、慶長、寛永と何回
も渡ってきたがパッとしなかった。慶安年間(1648〜52)
になり江戸へ。当時のスイカは黒皮種。皮がを黒く割ってみると
まっ赤とくるから「由井正雪の亡霊だ」などと気味わるがって食
べなかった。



 そのころの本によれば「スイカは身分の低い者の食べもので、
料亭でスイカを盆の上にのせ、ハエ取りのかわり……てな具合で
普及せず。

 本当に普及しはじめるのは明治時代になってから。アメリカか
ら優良品種を導入。奈良、和歌山県で栽培してからでした。

【効能】利尿作用・血性の下痢・洒毒解消。皮にビタミンBが多
く含有、顔を拭くと美容効果・口内炎にはスイカの汁を口に含む。
腎炎や心臓病のむくみには、皮を煎じて飲用。体を冷やす性質が
あるとされ、食べ過ぎると下したりはいたりすることがあり、胃
腸の弱い人はご注意。

・ウリ科スイカ属.の1年生つる植物

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(10)ズイキ(7月)

 漢字で芋茎と書くように、サトイモの葉柄のこと。夢窓国師の
「いもの葉に置く白露のたまらぬはこれや随喜の涙なるらん」の
うたからついた名だという。

 サトイモの中でもえぐ味の弱い赤茎種(エビイモ、赤芽、ヤツ
ガシラ、トウノイモ)は、軟白したり赤茎そのまま食用にします。

 サトイモの近縁種のハスイモの葉柄は、えぐみもなくやわらか
いのでズイキ専用種として栽培されています。葉柄は白っぽい緑
色で上質とされています。

 葉柄を乾かした干しズイキは、「いもがら」と呼ばれ、貯蔵がき
くため、加籐清正が熊本城を建てたとき、籠城にそなえ畳の床を
干しズイキで作ったという。酢の物、和え物、煮物などに利用し
ます。
・サトイモ科サトイモ属の多年草の葉柄

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(11)スイゼンジナ(7月)

 スイゼンジナは熱帯アジア、モルッカス原産の菜っぱで、丈が
60センチ、根元のほうは木のようにかたくなり、葉がやわらか
く、表面は緑色、裏面と茎は淡紫色。夏に枝先に大形の散房花序
をつけ、黄赤色の花を咲かせます。食用とするところは若芽と葉。

 奄美大島、九州南部、四国南部ではところどころで半野生化し、
それを食用したり、また広く栽培され一年中利用します。熊本市
の水前寺地区で古くから栽培されてきたのでスイゼンジナ。昔は
スイゼンジソウとも呼ばれたという。

 日本には1759(宝暦9)年に中国から伝来。平賀源内の「物
類品隲(しつ)」(宝暦13年)に「見腫消(中国名)、和名スイゼ
ンジソウ、……高サ一二尺、葉桑に似テ光リ……蛮腫己卯歳始メテ
東都ニ種ヲ伝フ」とあり、また安静6年の(1859)の『草木図
説』(飯沼慾斎著)も、「スイゼンジソウ、ハルタマ、三七草一種…
…暖国産にして寒ヲ畏ル、……質柔ニシテ灼キ食フニ最粘滑うんぬ
ん」と記されています。

 葉は柔らかく、煮るとぬめりが出てきて、淡泊な味。軽く炒めて
熱湯をかけ、酢みそや酢じょうゆなどで食べます。ゆでてあえ物に
してもよいそうです。

・キク科キオン属の多年草


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(12)ズッキーニ(7月)

 カボチャは植物学では、ニホンカボチャ、セイヨウカボチャ、
ペポカボチャの三つに分類されるという。

 ズッキーニは、ペボカボチャに属する一品種で、形は円筒形で
キュウリに似ています。緑色と黄色の二種ありますが、緑色のも
のが一般的です。その未熟果を皮ごと輪切りにしてグラタン、炒
めものなどに利用します。キュウリのようですが生では食べられ
ません。

 ペポカボチャは、メキシコ南部の高冷地原産。ここからヨーロ
ッパへ伝わり、ズッキーニなどいろいろな品種が生まれました。




 日本には、第2次世界大戦後に渡来しましたが普及せず。やが
て昭和50年(1975)くらいから輸入品として店頭にならぶ
ようになり、次第に栽培もはじめられました。大きいものは1m
にもなります。

・ウリ科カボチャ属の一種ペポカボチャに属する一変種

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(13)スモモ(7月)

 スモモはすっぱいモモ(酸桃)の意味だとも、果皮に毛がないの
で「素桃」の意味だともいいます。 スモモには中国揚子江流域か
ら日本が原産のニホンスモモ、コーカサスからカスピ海にかけてが
原産のセイヨウスモモ、アメリカ大陸原産のアメリカスモモなどが
あります。

 ニホンには古く『古事記』や『日本書記』などにも記録があるが、
人々にかえりみられず栽培は江戸時代になってから。特に明治にな
ってアメリカ人が母国に持ち帰り改良、いろいろな品種を作出。そ
れを大正時代、日本に逆輸入してから全国的に普及したもの。



 スモモの栽培は、ニホンスモモ、セイヨウスモモ、そしてこれら
を素材に育成したものとの雑種スモモがおもなものです。

・【ソルダム】果実は中型、球形。橙色にあめ色の縦斑。果肉は濃
紅色で多汁でおいしい。
・【ビューテー】日本のものをアメリカで改良。ハート形。果皮果
肉ともに黄色みがかる。
・【ケルシー】甲州大巴旦杏(だいはたんきょう)アメリカに渡り
栽培者の名をつけられ逆輸入。品質優良。
・【寺田李(すもも)】京都原産。多汁、香りよく良品種。
その他サンタローザ、ホワイトプラム、甚産(じんさん)桃、ウィ
ックソン、フォーモサ、メスレー、プラムコット、大石早生などあ
り。
・バラ科サクラ属スモモ亜属の落葉小高木

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(14)ソバ(7月)

 ソバとはソバムギの略だという。ソバは稜のことで、実がそば
だっているところからきた名前だそうです。古くから栽培されて
きた穀物で、救荒作物であり、養蜂の蜜源植物としても利用され
ています。

 原産地について、以前は東アジア北部、アムール川上流沿岸か
らバイカル湖あたりとされてきたが、最近カシミールネパールを
中心のヒマラヤ地方や中国南部雲南からタイの山地に野生ソバを
発見。

 調べてみるとこの野生種には二倍種と四倍種があり、栽培ソバ
の特長の二倍種は雲南地方だけということがわかり、サテは栽培
ソバの起源地は中国・雲南地域であったかということになったわ
けです。このソバは宿根性の多年生ではあるが、栽培ソバにそっ
くりだったといいます。

 栽培ソバには世界に広く栽培されている普通ソバとソ連、中国
ヒマラヤ地域でホソボソと栽培されているダッタンソバがありま
す。ダッタンソバは苦味が強く、ニガソバともいい、飼料にも利
用されているとか。

 ま、それはともかく、普通ソバは中国から朝鮮経由で日本に渡
来したといい、奈良時代の本「続日本紀」(712年)養老6年の
条に、干ばつがおこり曽波牟岐(そばむぎ)や麦を植えることを奨
励したことが出ています。



 その後、平安になり「続日本後紀」(しょくにほんこうぎ)承和
六年の条(839年)にも同じように非常の作物としてソバを植
えるようにとの命令が出たことがのっています。

 平安も中期に入るころの、日本最初の漢和辞書「和名類聚抄」(9
34年・承平4)には「久呂無木(くろむぎ)」の文字を使って記
されています。

 日本最初の栽培地は滋賀県の伊吹山山ろくらしく、そこから、
東に伝わり、岐阜、長野、山梨、埼玉、千葉、茨城、群馬、栃木
から東北、大正には北海道が主産地というありさま。

 ちなみにそば切りの始まりは、安土桃山時代の天正年間(15
73〜92)で、うどんの発達にならったのだということです。

【効能】江戸中期初頭の「本朝食鑑」という本には、「気味甘く微
寒にして毒なし、気を下し胃腸のしわい積滞を寛す。水腫、白濁、
泄痢、腹痛、上気を治し、あるいは気盛んにしえ湿熱あるものよ
ろし」と絶賛しています。意外とタンパク質が多く、ビタミンB
1、B2が豊富。便通をよくし、気分を穏やかにし、下痢を治す
という。

・タデ科ソバ属の1年草

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(15)男爵イモ(7月)

 ジャガイモの代表選手。北海道・函館ドッグの社長の川田龍吉
男爵が、1907年(明治40)外遊先のアメリカからとり寄せ
たアイリッシュ・コブラーという品種のジャガイモ。自分の農場
へ移植しました。

 これがいままでのジャガイモに比べ、よく取れてその上うまい。
しかし持ち出し禁止で取ると男爵はものすごく怒る。ところがそ
こはそれ、「男爵にいうな」、「男爵にナイショだぞ」とソーっと盗
み出され広まっていきます。

 アイリッシュ・コブラーとはアイルランドの靴屋という意味だ
とか。球形でやや平たく淡い黄褐色。肉は白色、早生種で収穫量
が多く育てやすいとくるから全国的に栽培され、栽培面積も最も
多い。
・ナス科ジャガイモ属の作物


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(16)ツルムラサキ(7月)

 ツルムラサキとはいいますが、緑茎種と紫茎種(赤茎種)があ
り、緑茎種は江戸時代に紫茎種は明治になって渡来したという。
そのため、紫茎種はシン(新)ツルムラサキと呼ばれることもあ
ります。

 ツルムラサキは、つるが2b以上に伸び、他のものにまきつい
て、夏から秋に葉腋に淡い紅色を帯びる白い花をつけます。その
ため、野菜としてだけでなく観賞用(特に紫茎種としても好まれ、
鉢栽培ではアサガオのように行灯仕立てに、またかきねにからま
せたり日よけづくりにもされています。

 ツルムラサキは、落葵(らくき)の名で中国の書『博物志』(3
世紀)に初めて記述され、6世紀には実から染料を作っていたと
いう。日本では平安時代の『本草和名』に落葵、和名加良阿布比
(からあふひ)との記載があるが、これがツルムラサキのことか
まだわかっていないという。

 ツルムラサキの名が出るのは江戸時代のショッパナの『多識篇』
(1612)。豆留牟良佐岐(つるむらさき)の字で出ています。その
後の『菜譜(さいふ)』には食用のほか、実で紙を染める記述が出
てきます。

【効能】ビタミンAになるカロチン、ビタミンCともにホウレン
ソウより多く含む健康野菜。浸し物に、油炒め、ゴマ和え、汁物
に利用。
・ツルムラサキ科ツルムラサキ属のつる植物


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(17)トウモロコシ(7月)

 トウモロコシは漢字で玉蜀黍、唐諸越。トウモロコシキビの略
だといいます。

 原産はメキシコまたは南アメリカ北部との説に分かれています。
ひとつはメキシコから南へボリビアあたりまで広く分布していた
野生祖先種(紀元後1000年ころまであったという)が、栽培
型に成立していったとする説です。

 もうひとつは、メキシコ原産のトウモロコシによく似た、トウ
モロコシ属ではない別属の一種のテオシントであるとか、もう一
属のガマグラスも、トウモロコシ発生に関与したとかいわれてい
ます。

 トウモロコシの野生祖先種は、紀元前5000年ころにはすで
にメキシコに分布していて、栽培型が成立したのは前3000年
ころ。前2000年ころにはもう、いまのようなりっぱな種の形
になっていたといいます。

 これが北アメリカへ伝わったのはかなり古く、ニューメキシコ
州では紀元前2300年の遺跡から出土しているほど。そして川
沿いに、ロッキー山脈の東ろく沿いにコロラド州へ、太平原を通
りミズリー川、オハイオ川流域に伝ぱ。そして19世紀にはコー
ンベルトといわれる大生産地ができあがります。

 ヨーロッパへは、例によってコロンブスの大陸発見(1492年)
にともない、スペインによってもたらされたのが最初。その後の
30年でフランス、イタリア、トルコから北アフリカまで広がりま
す。



 日本には1579年(天正7年・安土桃山時代)にポルトガル
船ににより長崎に伝えられました。その後、1600年代にオラ
ンダ人が、フリントコーンを伝来させたなどの話もあり、江戸時
代には各地で栽培されてはいたようです。

 しかし、ロングフェローやバンタムのような良い品種は明治に
なり、アメリカから輸入、北海道で盛んに栽培されたことはご存
知のとおりです。

 トウモロコシには、飼料用、デンプンなど工業用の馬歯種(デ
ントコーン)、食糧、飼料、工業原料用の硬粒種(フリントコーン)。
それに食用でおなじみの甘味種(スイートコーン)、間食用ポッ
プコーンの爆裂種、その他軟粒種(ソフトコーン)などがありま
す。

【効能】比較的多量のグルタミンを含んだタンパク質は健脳効果。
ひげや葉や茎を煎じて利尿・腎炎・心臓病などのむくみ・利胆・
止血・降圧効果。コーン油は不飽和脂肪酸が多く、コレステロー
ルを下げ、高血圧・動脈硬化・狭心症などの予防と治療に効果。
・イネ科トウモロコシ属の1年草(花言葉:裕福)

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(18)トマト(7月)

 唐ガキ、サンゴナス、アカナス、六月ガキ、フジナス、ツルナ
スビ……これ何のことか分かります?ぜーんぶトマトの異名であ
ります。

 このトマト、本籍とくると、南アメリカはアンデス山脈のペル
ーあたりだとか、メキシコだ、やれガラパゴスだとなかなかマト
マラない。ともあれ、ペルー、ボリビアなどのインディアンが昔
から栽培していたのは確からしい。

 それがスペインがメキシコに押し入った時(1521年)か、
ペルーを侵略した時(1535)か、まあ、そのあたりでヨーロッ
パに持ち込んだという。

 しかし、用途はもっぱら観賞用。しだいに北ヨーロッパにも広
まっていったが「毒だ、毒だ」と相手にされず。

 日本に入ってきたのは17世紀。アカナスなどと呼ばれ、はち
植えなどの観賞用。貝原益軒の「大和本草」(1709年)に出て
くるのが最も古い。

 野菜として見直され、食用になったのは明治に入り、開拓使が
再輸入してからという。それも消費が増えはじめたのは昭和に入
ってから。しかもグーンと伸びてくるのは昭和も30年代になっ
てからなのであります。



 ちなみにトマトの属名は「オオカミの桃」、種名は「食用になる」
という意味。熱帯では多年草。

【効能】生のトマトはアルカリ性食品として肉や魚のつけ合わせ
として好適。血を浄化し脂肪の消化を助けるといい、肥満・糖尿
病・高血圧の人に効果的。
・ナス科トマト属の1年生作物

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(19)ナス(7月)

 「親の意見とナスビの花は、千にひとつのムダもない」という
ことわざがあります。よく成る(為す)というのでナスの名がつ
いたほど。

 しかし自分が親になったいま、子どもにする意見のナント心も
とないことか。まるでまるっきりのムダ意見なのであります。そ
ういえばナスの花も3分の2は結実しないというからなんとなく
親近感。

 インド原産で熱帯では多年草になってします。6世紀前半、す
でに中国の農業技術書「斉民要術」にくわしく出ているという。
日本では、東大寺正倉院文書に天平勝宝2年(750)「藍国茄子
進上したり」とあるのが本邦初の記録。

 平安時代になり「本草和名」「延喜式」に出ており、加工漬物と
しても利用していくとか。「倭名類聚抄」には「奈須比」という字
をあてています。

 江戸初期には三保地方で促成ナス栽培が、寛政年間には特産地
が出現、江戸後半になると「野菜のうち最も需要多きもの……」
と名をナスのであります。



 ムカシから身近なナスはまたことわざも豊富。いわく、秋ナス
は嫁に食わすな、いわく、ナスと男は黒いほどよい、ヒネナス種
多し(貧乏人の子だくさん)、色で迷わす浅づけナスビなどなど…
…。

【効能】栄養価は低いが薬用として効あり。歯の痛みや口内炎に、
ナスのへたを黒焼きにしてつける。ナスの黒焼きは胃ガンにもよ
いという。イボには、生のヘタをこすりつけていると落ちること
があるという。

打ち身・ねんざ・軽いやけどには、冷蔵庫に冷やしたナスで冷湿
布。扁桃腺炎には、ナスとコンブを黒焼きにし、お湯を注いで飲
用。焼きナスにおろしショウガをつけたり、漬け物に刻みショウ
ガを添えるのは冷えを予防する昔の人の知恵。
・ナス科ナス属の1年草(熱帯では灌木性多年草)

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(20)ナタマメ(7月)

 さやが大きく鉈のようなのでその名があります。別名、太刀豆と
もいい、英名もソードビーンといい、剣豆の意味だという。若いさ
やをつみとり、薄くきざんで、福神漬けの材料に使用します。また、
みそ漬けや粕漬けなどの材料にも利用します。

 原産は熱帯アジア。日本へ入ってきたのは江戸時代の初期とされ、
記録では江戸時代はじめの『多識篇』という本が最初。1695年
の『本朝食鑑』や1712年ころの『和漢三才図会』にもの名が記
載されています。

 夏、紅紫色または白色のやや大型のチョウの形をした花が咲きま
す。さやは長さ30センチ、幅5センチくらいになり、なかに10
個くらいの豆(種子)が入っています。熟した豆は、紅色または白
色で、扁平で碁石くらいの大きさになります。
 ・マメ科ナタマメ属の1年生つる草


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(21)フジマメ(7月)

 若いさやをゆでてゴマ和え、油炒め、またてんぷらやそうめん
の具などにも利用されるフジマメ。収量が多いのでセンゴクマメ
(千石豆)、アジマメ、テンジクマメ(天竺豆)などの異名あり。
若くさやがでこぼこして、光沢がないものがよいという。

 原産は熱帯アジアともいわれ、日本には1654(承応3)年、
明の隠元和尚が中国から伝えたとの説があり、インゲンマメと呼
ばれることもあります。しかし、平安時代の918(延喜18)
年の『ほんぞうわみょう本草和名』に草冠に褊と書いてアジマメ
とあります。

 熱帯では多年生ですが温帯では1年生としてつくられ、高温を
必要とする作物のため関東以西で多く栽培。白い花のものはさや
が灰白色、赤紫のものは淡紫色をしています。
・マメ科フジマメ属の1年草


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(22)ミョウガ(7月)

 突然ですが、お釈迦様の弟子に般特(はんどく)という物忘れ
の名人がおりました。何しろ自分の名前も忘れてしまう達人です。
あわれに思ったお釈迦さまは、彼の名前を札に書いて首にかけて
やりましたが、それもかけることさえ忘れるしまつ。

 この名人の死後、その墓から名も知らぬ草が生えてきた。そこ
で名札を荷った般特ということで、草かんむりをつけ「茗荷(みょ
うが)」とその草に名づけたといいます。

 そんなことから、ミョウガを食べると物忘れするというように
なり、「茗荷宿」という落語にまでとりあげられます。

 宿に泊まった客から、大金入りの胴巻きをあずかった主人夫婦。
しきりにミョウガ料理を食べさせます。しかし客は胴巻きは忘れ
ず、宿銭の方を忘れて出発するというストーリーです。

 はなし変わって、中国の陳寿が3世紀の日本のことを書いた、
ご存知「魏志倭人伝」。日本にはショウガ、ミョウガがあるがま
だ食べ方を知らないと出てきます。しかし、ショウガやミョウガ
は、中国から伝来したしたもの。味つけするのを知っているから
こそ、古代から栽培しているので、この記述はまちがいだろうと、
図鑑にありました。



 ミョウガは古くは「メガ」といい、芽香(めが)の意味。またシ
ョウガを男、ミョウガを女にみたて、女(メ)オガと呼んだのだと
いう説もあります。

 平安時代の辞書「和名抄」には、ショウガ、ミョウガは同じよ
うな形で兄香(セガ、妹香(めが)といっていたものが、セガはセウ
ガ、メガはメウガとそれぞれに転化。ショウガ、ミョウガと呼ば
れるようになったのだと書かれています。

【効能】ミョウガを食べると発汗・呼吸・血液の循環をよくする作
用があるといわれます。それはミョウガに含まれるアルファー・ピ
ネンなどの精油が大脳皮質を刺激することによって眠気を覚まさせ
たり、延髄を活発に働かせるからだといいます。腰痛・肩こり・リ
ウマチ・神経痛にはそのまま食べても患部につけても効き目がある
という。また入浴剤(荒く刻んで陰干しする)として使用すると体
全体の血管が広がり、痛みをやわらげたり、こり・疲れをとり楽に
なるという。

・ショウガ科ショウガ属の多年草

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(23)ミント(7月)

 ミント、ハッカ。その種類は多く、ヨーロッパ種のものは古代
エジプトですでに栽培。古代ギリシャ、ローマでも利用されたと
いう。

 ニホンハッカは製油約1%を含み主成分のメントールを70か
ら90%を含み、スーッとする清涼感があります。日本と東アジ
アが原産地で北海道、岡山県広島県などが主産地。古くから薬草
として使われ、茎葉を刈り取りハッカ脳やハッカ油をつくります。
7〜8月、淡紫色の花を咲かせます。

 ペパーミント(セイヨウハッカ) ヨーロッパ原産。茎の高さ
30〜90センチになり、新約聖書の中にも香辛料として出てき
ます。いろいろ改良を加えられ、茎が紫色の品種と、緑色の品種
があります。魚、肉ソースにカクテル、ゼリーなどの菓子、リキ
ュール酒やガムなどの香料に利用。8〜9月に紫や白の花が咲き
ます。刺激的な香味を持つ。



 スペアミント(ミドリハッカ) 地中海地方原産。葉の香気成
分が他と違い、液体のカルボーンというもの。カクテルや菓子の
香味ヅケニ、ガムにも入れる。夏から秋、淡紫色の花をつけます。
やや甘い香味がする。また薬用としても利用されます。
・シソ科ハッカ属の多年草

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(24)メロン(7月)

 大正の初めのころの雑誌に「おくれてるコックは新しいメロン
を知らず、つぶしてジャムのようにして料理する……」と出てい
ます。こんなコックがいたくらい、メロンは一部の上流階級の食
べものだったようです。

 メロンの原産地は諸説あり。インドだ、アフリカだ、近東だと
いうにぎやかさ。アミメロン、ジャコウメロン、マスクメロンと
も呼ばれ、いかにも「コーキュウーヒン」という感じです。

 メロンは古代エジプトの壁画にもあり、栽培している様子が描
かれています。それがヨーロッパにひろがったのはルネサンス以
後。15世紀には多くの品種ができ、1570年になるとイギリ
スで温室栽培がはじまります。

 日本での栽培は明治27年ごろ、福羽イチゴの福羽逸人が種子
をとりよせ試作。のち第一次大戦の景気で各地に広がっていきま
した。最近はこの温室栽培メロンとは別に、昔からのマクワウリ
メロンの交配種がゾロゾロ登場し、大衆向けホームメロンが開発
されています。
・ウリ科キュウリ属のつる性1年草


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(25)モモ(7月)

 モモの種小名はペルシカというそうです。これはペルシャ(イ
ラン)のことで、紀元前1世紀ごろ、ここから主にギリシャやロ
ーマへ持ち込まれたものが、ヨーロッパへ普及した始まりだった
そうです。そんなことから原産地はペルシャだと考えられていま
した。

 ところが20世紀になり、中国黄河流域の高原地帯にモモの原産
地を発見、ここが原産地であることがわかったという。

 中国には、3世紀後半・西晋武帝の時代、建山自然武陵で、モ
モの花が流れている小川の水を飲んだとたん、気力があふれ、3
00歳も長生きしたという伝説やモモを食べて3000年も生きたと
いう西王母の言い伝えもあります。

 また日本の「古事記」にも、伊邪那岐尊(いざなぎのみこと)
が黄泉比良坂(よみひらさか)で、追ってくる黄泉醜女(よもつ
しこめ)に桃子(もものみ)を投げつけて助かる神話も載ってい
ます。



 このように大昔からモモには、邪気災難を払う呪性があると信
じられ、いつしか3月3日の「桃の節句」に桃酒を飲む習慣まで
生まれました。

 これらのモモは、日本に原生していたものか、古く中国から渡
来したかは不明ながら山口、宮崎県には純野生種があるという。
しかし、平安、鎌倉時代には栽培や利用についての記録はないの
です。

 日本のモモは、元来、花木として改良されてきたもので、江戸
時代にはあまだ果実が小さく、食べてもガリガリで、評判はあま
りよくなかったらしい。

 明治8年、中国から上海水蜜桃や天津水蜜桃などを導入。果実
が大きく多産な外国種は、在来のものとは比べものにならず、明
治の末には、在来種はほとんど姿を消したといいます。中国につ
いでヨーロッパからも14種が導入され、これま品質、風味がダ
ントツで有望視されたが風土に合わず育ちませんでした。

 明治18年病害虫に、袋かけ技術が開発され、また次第に品種
も改良されて栽培も拡大。第2次大戦を経て、昭和43年には収
穫量が最高の30万トン近くにもなったが、青年層の生産者が他
産業に向かい、この年を境に減少に転じたということです。

【効能】寝汗・便秘にモモの実を食べるとよい。またカツオやマ
グロを食べて中毒を起こした時、モモを生で食べるとよく効くと
いう。ただウナギを食べた後でモモを食べると下痢をするという
から注意が必要です。

モモの葉にはタンニン・青酸配糖体や蓚酸マグネシウム・カリウ
ムなどが含まれていて、葉をお風呂に入れるとあせもに効果があ
るという。その他モモの葉は邪気を除く・腰痛を治す・胃の熱を
とる・虫の毒をとく・黄疸を治すなどといわれています。

・バラ科サクラ属モモ亜属の落葉性小高木

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(26)ヤグラネギ(7月)

 ヤグラネギはネギの一変種。ふつうのネギは花茎がのびてねぎ
坊主ができますが、このネギは花のかわりに数個の小形の玉がつ
き、それがのびてその上にまた小球ができます。こうして2〜3
階状になるので「櫓葱(やぐらねぎ)、「三階葱」、「楼葱]の名も
あります。

 花茎の先端の小球を取って植えると独立して繁殖。冬に休眠す
る性質があり、寒冷地で作られたものらしい。中国には古くから
あったといわれ、日本にいつ渡来したかはっきりしないが江戸時
代中期のころからあったという。いま東北、北陸で葉ネギとして
栽培されています。

 江戸時代の宝暦13(1763)年の『物類品隲(ひんしつ)』
(平賀源内)という本に「楼葱、一名竜爪葱 和名万年葱、また三
階葱ともいう…苗、葉、根茎ともに葱に似て、その葉鞘の頭にま
た小葱四、五枝を生ず。……このもの葉の末に根を生じ、また葉
を出すことサボテンの枝を出すがごとし」と紹介しています。 
タマネギにも「やぐら」ができて小球をつくるものがあって、西
洋ではこれから芽を出させ、やぐら苗のトップ・オニオンをつ<
ります。日本のヤグラネギも、西洋のトップ・オニオンも苗をつ
くる面倒がありません。
・ネギ科ネギ属のネギの変種


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(27)ライム(7月)

 デリケートな酸味、柔軟多汁な肉質。紅茶、野菜、果物のサラ
ダ、フライ、焼き肉、焼き魚などに加えられ、またライムオイル、
クエン酸の原料にもなっています。

 果実はレモンのように両端がとがっていて皮が薄く、熟すと皮
の色が淡いレモン色になります。この皮が黄色に熟す前、緑色が
やや黄ばめはじめたころに収穫します。

 常緑樹で、枝が細く小さな鋭いトゲがあります。葉は小さく楕
円形で濃緑色をしています。花は白い五弁花で総状花序に咲き、
1年中次から次へつけるため、1本の木に花と果実が同居すると
いう。

 原産はインド東北部からマレーシアといわれ、日本には20世
紀の前半に台湾から入ったが、寒さに弱いため国内で栽培するの
は不向きとされてきました。しかしその後、暖かい地方や、ハウ
ス栽培などでつくられるようになりました。



 ライムの品種は多く、酸味の強い酸果ライム(サワーライム)
と酸味の弱い甘果ライム(スイートライム)に大きく分けられ、
普通ライムといえば酸果ライムをいっているとか。さらに酸果ラ
イムは、小果種と大果種に分けられます。

 小果種の代表種はメキシカンライムで、果実はレモンより小さ
く、50グラム程度。大果種の代表はタヒチライム。果実は10
0グラムと大きい。ふつう種子はなく、ライムのなかでは耐寒性
があり、日本で栽培されているのはこの品種。ライムはビタミン
Cが多く、レモンより少し少ない程度。有機酸が主成分で糖分は
少ないという。

 果実の皮がなめらかで傷がなく、へたが堅くみずみずしいもの
を選びます。長持ちさせるには、軽く水にしめらせた新聞紙やペ
ーパータオルに包み、冷蔵庫に保存するとよいという。

 ちなみにレモンのジュースから作った飲み物レモネードは、本
来の名はライムからのライムネードだったとういう。

・ミカン科ミカン属の小高木

第5章【春の野菜・果物】(7月)終わり

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【8月へ】