『新・山の神々いらすと紀行』
画と文・とよだ 時

第9章 近畿の山々

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■07:奈良吉野・奥千本の西行庵

【略文】
俗世間を離れて吉野に庵を結び歌をたくさん残した西行。奥千本の
西行庵は屋根に雑草が生え、いかにも当時のたたずまいを彷彿とさ
せる。西行といえば妻子を捨てて出家したお人。かわいい娘を出家
の邪魔になると足蹴にしたという伝説まである。昔の人はスッゴイ
ものだ。
・奈良県吉野町

■07:奈良吉野・奥千本の西行庵


【本文】

あまりにも有名な吉野のサクラ。これはかつて役ノ行者小角(おづ

ぬ)が、厳しい修行の末、感得した蔵王権現をサクラの木に刻んだ

ため、サクラがご神木となり、いつしか金峰山寺(きんぷさんじ)

へお参りにくる人たちがサクラの苗を持ってきて植えて行く習慣が

できたものといいます。



そのサクラに惹かれ、昔から文人墨客がたくさん訪れています。西

行法師もそのひとり。「吉野山こずゑの花を見し日より心は身にも

そはずなりにき」。俗世間を離れて庵を結び3年間、歌をたくさん

残しています。



その西行庵が奥千本にあります。庵の屋根には雑草が生え、いかに

も当時のたたずまいを彷彿とさせます。近くの「苔清水」はいまで

も人の生活に十分な水量を保っています。



この清水についてはこんな歌が残っています。「とくとくと落つる

岩間の苔清水汲みほすまでもなきすみかかな」(読み人知らず・か

つては西行の歌と思われていたそうです)。



西行庵は平地の開かれた気持ちのいい場所にあります。前に整備さ

れた東屋も建っています。西行といえば妻子を捨てて出家したお人。

かわいい娘を出家の邪魔になると足蹴にしたという伝説までありま

す。昔の人はスッゴイものです。



▼西行庵【データ】
【所在地】
・奈良県吉野郡吉野町吉野山。ロープウエー吉野山駅からバス25
分、終点の奥千本口からさらに徒歩25分で西行庵。広場と休憩所、
付近に水場がある。地形図に西行庵の地名のみ記載。標高なし。西
行庵より北方向500mに金峰神社がある。
【位置】
・西行庵:北緯34度20分18.29秒、東経135度52分49.56秒
【地図】
・2万5千分の1地形図「新子(和歌山)」or吉野山(和歌山)(2
図葉名と重なる)



▼【参考文献】
・『山家集』(さんかしゅう)西行:日本古典文学大系『山家集・金
槐和歌集』風巻景次郎ほか・校注(岩波書店)1961年(昭和36)
・『日本大百科全書9』(小学館)1986年(昭和61)

 

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