『新・山の神々いらすと紀行』
画と文・とよだ 時

第5章 北アルプスの山々

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■09:室堂立山ミクリガ池伝説

【概略】
立山・室堂にあるミクリガ池の伝説です。越前からきた小山法師は、
ミクリガ池を見て「なんだ。聞いていたよりずいぶんと小さいじゃ
ないか」と小馬鹿にしたうえ、池に飛び込んで、抜き手を切って三
めぐり(三繰り・みくり)をして見せました。すると突然、池の主
があらわれ、法師を水の中に引き込み、そのまま浮かんでこなかっ
たという。そこで「ミクリガ池」の名がつきました。
・富山県立山町

■09:室堂立山ミクリガ池伝説


【本文】

北アルプス立山室堂に「ミクリヶ池」という池があります。その名
は8月に行われる地獄供養という行事の際、読経しながら池のまわ
りを巡るのに由来しているという。

そのほかにもう一つ面白い地名伝説があります。この池には、昔か
ら大蛇がすむといわれてきました。江戸時代初期、越前(いまの福
井県北部)から来た小山という法師が、室堂の行者、延命坊の案内
で地獄谷を見物したという。

そして、ミクリヶ池にさしかかり「八寒地獄」の恐ろしさの説明を
うけてました。それを聞いた小山法師は、カラカラとうち笑い「聞
くと見るとは大違い、何ともつまらぬ池よ。まるで種漬け池だ」小
馬鹿にしました。そして「これならひとつ、泳ぎまわって見せよう」
と、裸になって池に飛び込みました。

そして得意げに抜き手を切って一周して見せました。池の中を一巡
り、二巡り、三巡りしたときのことです。突然、大波が立ったかと
思う間に、池のそこから大蛇があらわれ、法師の体を水中に引きず
り込んでしまいました。

延命坊は哀れに思い「八寒地獄の主よ、小山法師の振る舞いは業死
も仕方ない罰なれど、人の世の別れにいま一度法師の顔を見せ給え」
と叫びました。

すると、湖面ふたたび波立って小山法師の姿がポッカリと浮いてき
たという。そして、寂しい姿に心なしか顔にかすかな笑みをふくめ、
ふたたび湖水深く沈んでいきました。

以来この池を「三繰りヶ池」と呼ぶようになったといわれています。
ミクリヶ池がどんな静かな日でも水面が波立っているのはここに棲
む主のためだそうです。いまでは見る角度によって立山の影がハー
ト形に写り、人気の的になっています。




▼ミクリガ池【データ】
【所在地】
・富山県中新川郡立山町町。富山地方鉄道立山線立山駅の東14キロ。
富山地方鉄道立山駅からケーブル、美女平駅からバス、終点立山室
堂平から5分でミクリガ池。地形図上には池名にみ記載。室堂平よ
り北方向直線約430mにミクリガ池がある。
【位置】
・ミクリガ池:北緯36度34分49.79秒、東経137度35分50.3秒
【地図】
・2万5千分の1地形図「立山(高山)」or「剱岳(高山)」(2図葉
名と重なる)



▼【参考】
・「山DAS」石井光三(白山書房)1997年(平成9)
・「山と高原地図4・剱立山」石坂久忠(昭文社)
・『日本歴史地名大系16・富山県の地名』(平凡社)1994年(平成
6)
・「白山・立山と北陸修験道」高瀬重雄:(『山岳宗教史研究叢書10
・白山・立山と北陸修験道』高瀬重雄編(名著出版)1977年(昭和52)
所収)

 

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