新・山の神々いらすと紀行』
画と文・とよだ 時

第4章 甲信越の山々

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▼14:雁ヶ腹摺山は3つある

【概略】
雁が腹を摺るようにして飛ぶというので雁ヶ腹摺山。この雁ヶ腹摺
山のほか、牛ノ奥雁ヶ腹摺山、笹子雁ヶ腹摺山という珍しい山が3
座ある。ここは旧五百円札裏の写真を撮った所というのが売り物。
時の経過をあらわしてか、方向指示盤がボロボロに錆びていた。
・山梨県大月市

▼14:雁ヶ腹摺山は3つある


【本文】
かつて中里介山の小説で有名になった山梨県の大菩薩峠。そこから

から南へのびる小金沢連嶺付近には、雁ヶ腹摺山(がんがはらすり

やま)のほか、牛奥ノ雁ヶ腹摺山、笹子雁ヶ腹摺山という珍しい山

が三つもあります。



秋、雁が北へ帰るときこれら山の近くの鞍部を腹を摺るようにして

越えていくのだという。江戸時代の地誌「甲斐国志」にも記載され

ているといいます。



雁ヶ腹摺山では西側の大峠が、牛奥ノ雁ヶ腹摺山では雁ヶ原摺原が、

また笹子雁ヶ腹摺山では西側にある笹子峠が、雁が通るコースなの

だといいます。



この付近には秩父山地の雁坂峠や、その南東の笠取山近くに雁峠、

この山の南側に雁道・雁丸尾など雁の名のつく地名が続いていま

す。



ある本には、この山系だけで八つも「雁ヶ腹摺山」があるとありま

したが前記以外には確認できませんでした。しかし腹は摺らないに

しても雁が多く越えていくのは間違いないようです。



ある年の11 月、大峠にテントを張りました。小動物がストックの

紐で一晩中遊んでいました。早朝の山頂からは国中(くになか)、

郡内地方の眺め、また富士山が見事に映えています。



大勢の人が訪れるのか小広場はよく踏まれています。ここは葛野川、

真木川などの水源となっています。この山は、旧五百円札裏の写真

を撮った所というのが売り物でした。



いまでもこのお札を持っている人はいるのでしょうか。原画は第2

次世界大戦中の1942年(昭和17)11月に埼玉県の国鉄職員名取久

作が撮影したものという。



ならばいまの時期です。時期は同じでも悲しいかなカメラは「使い

捨てカメラ」だし、それほどの技術を持ち合わせてもいません。旧

五百円札のデザインを形どった方向指示盤はすでにボロボロに錆び

てしまっており、誰もいない中にむなしく傾いています。やはり人

間にしろお札にしろ、「旧」にはなりたくないものです。



▼【データ】
【所在地】
・山梨県大月市。中央線大月駅の北西8キロ。JR中央本線大月駅
からバス桑西下車。歩いて4時間
30分で雁ヶ腹摺山。方向指示盤と
写真測量による標高点(
1874m)がある。地形図上には山名と標高
点の標高のみ記載。付近に何も記載なし。
【位置】
・【標高点】:北緯
354112.27秒、東経138535.35
【地図】
・2万5千分の1地形図「七保
(甲府)



▼【参考文献】
・「エリアマップ・山と高原地図・
23」(塚田正信著)昭文社(昭和56
年版)
・『甲斐の山旅・甲州百山』(実業之日本社)
1989年(昭和64・平
成1)
・『角川日本地名大辞典
19・山梨県』磯貝正義ほか編(角川書店)
1984年(昭和59
・『関東百山』(実業之日本社)
1985年(昭和60
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)
2005年(平成17

 

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