『新・山の神々いらすと紀行』
画と文・とよだ 時

第2章 東北の山々

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■03:早池峰薬師岳の薬師堂

【略文】
にぎやかな早池峰山と対峙する薬師岳。中腹の遠野市に至る横通り
には薬師堂があって薬師如来の石像がまつられている。遠野市小出
集落の佐々木祐蔵と上組丁の川村市郎兵衛の2人が奉納したもの。
いまでも附馬牛町の人たちの篤い信仰を受けている。
・岩手県遠野市と大迫町との境

■02-03:早池峰薬師岳の薬師堂


【本文】

ハヤチネウスユキソウなど高山植物の宝庫として有名な岩手県早池峰山

(標高1913.6m)は、シーズンになると花を目的に訪れる登山でにぎわ

います。



しかし、その南、小田越えを隔てて対峙する薬師岳(標高1644.9m)は

ほとんど人影もない不遇の山。



薬師岳は遠野市が早池峰山に食い込んでいる境界内にある山で、遠野

市側では薬師岳を前薬師と呼んでいます。



この薬師岳には柳田国男の『遠野物語』に出てくるように天狗の伝説も登

場します。



この山は、その名の通り薬師信仰に由来しています。山頂の南麓を、小

田越えから又一の滝を経て遠野市附馬牛町に至る山道「横通り」がありま

す。



その途中に薬師堂があって、なかに薬師如来の石の座像がまつられて

います。



これは、遠野市の小出集落の佐々木祐蔵という人と、上組丁の川村市郎

兵衛の2人が奉納したものといい、いまでも附馬牛(つきもうし)町の人た

ちの篤い信仰を受けているといいます。



ところで遠野市側では薬師岳を「前薬師」と呼んでいたそうです。というこ

とは早池峰山が本当の薬師岳に当たるのでしょうか。



それはともかく、このことから早池峰山と薬師岳をセットにして


「薬師岳」と呼び、お山かけ(お参り)をしたらしいという。



かつて薬師岳には石像の権現が祀られていたといいます。また、ここ薬

師岳と早池峰山頂と結ぶ線上にも、神遣権現社(かみわかれごんげんし

ゃ)、宿の新山神社、その他の旧跡がならんでいたと伝えますがいまは見

あたりません。



いま薬師堂を通る「横通り」は、人にあまり会わず静かな山歩きが楽しめ

ます




▼【データ】
【所在地】
・岩手県遠野市と大迫町との境。JR釜石線遠野駅からバス大出、さらに
歩いて5時間で薬師堂。薬師堂のみで、そのほかは何もなし。地形図に
薬師堂の文字と建物記号のみ記載。付近に何も記載なし。
【位置】
・薬師堂:北緯39度31分34.21秒、東経141度30分59.62秒
【地図】
・2万5千分の1地形図「高桧山(盛岡)」

▼【参考】
・『角川日本地名大辞典3・岩手県』高橋富雄ほか編(角川書店)1985年
(昭和60)
・『郷土資料事典・岩手県』ふるさとの文化遺産(人文社)

 

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